フェラーリ・ジャパンは9月24日、東京都内で新型プラグインハイブリッド・ベルリネッタ、フェラーリ『849テスタロッサ』の日本初披露イベントを開催した。『SF90ストラダーレ』を上回るパフォーマンスを追求し、最新技術を盛り込んだフラッグシップクーペとして登場した。
◆余った塗料が伝説の始まりだった
フェラーリによると「テスタロッサ」=“赤い頭”という名前は、1955年にフェラーリの本拠地イタリア・マラネッロで、ある整備士が余った赤い塗料で特に高性能なエンジンをマーキングしたことに端を発するという。以降、フェラーリの最高峰エンジンを象徴する名として受け継がれてきた。
初代は直列4気筒、その後V12やフラット12エンジンへと受け継がれ、1950年代のレーシングカー「500TR」や、ルマンで勝利を収めた「250テスタロッサ」、さらに1984年の『テスタロッサ』など、時代を代表するモデルの車名にも使用されている。
いっぽう「849」という数字は、8気筒エンジンで1気筒あたり499ccの排気量を示す。フェラーリジャパンのドナート・ロマニエッロ代表取締役社長によると「レーシング・レガシーに根ざした象徴的な意味合いを持たせている」と言う。

マラネッロより日本発表会のために来日したプロダクトマーケティングマネージャーであるマルコ・スペッソット氏は「この車がテスタロッサの名に値すると考える理由は、何よりもまずその驚異的な性能にある。これはフェラーリが『真のドライバー』と呼ぶ人々のために設計した一台だ」と語る。
◆改良型V8はターボラグを消す
849テスタロッサは、全面改良されたツインターボV8エンジンをミッドリアに搭載する。これに合計220psを発生する3基の電気モーターを組み合わせた。パワートレインの最高出力は1050psになり、プラグイン・ハイブリッドならではの高効率と高出力が期待できる。
849テスタロッサの内燃機関V8は、世界的に定評のある3.9L・V8ツインターボのファミリーに属する。このエンジンは2016~19年の4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー賞を受賞し、2018年には過去20年間で最高のエンジンにも選ばれた。849テスタロッサの4.0L・V8はこれの全面改良で、最高出力は従来比50ps増の830psに達する。
通常、ターボチャージャーが大きくなるとエンジンの反応が遅くなり、いわゆるターボラグが生じる。しかし、スペッソット氏によると849テスタロッサの開発では「スーパーカーである『F80』やレーシングカーである『296 GT3』の技術を取り入れ、タービン技術に改良を加え、一切のターボラグが生じないよう徹底的に追求した」と言う。電気モーターとトランスミッションにも改良を加えた。そしてフェラーリV8ターボエンジン特有のレスポンスを実現できたとする。

◆パワーウェイトレシオ:1.50kg/ps
スペッソット氏は「パフォーマンス向上のために大型化したコンポーネント、すなわち大型タービン、大型ラジエーター、大型インタークーラー、大型リグ、大型タイヤ、これら全てを追加すれば、新型車は前モデルより少なくとも20kg重くなってしまう。しかし我々は、あらゆる部品の重量を徹底的に最適化し、前モデルと同等の重量を実現した」とする。その結果、フェラーリ史上最高、かつ同カテゴリー最高となるパワーウェイトレシオ:1.50kg/psを達成した。
849テスタロッサは0-100km/h加速をF1マシン並みの2.3秒未満で達成し、0-200km/h加速は6.3秒とカテゴリー最高峰の性能を誇る。

◆電動航続25km
しかしスペッソット氏は、「最高性能を求める顧客向けの車としては、これだけでは不十分だ」と言う。それが、25kmという電気走行航続だ。これにより顧客は、街中を静かに走行することが可能となった。
空力性能に注力したのは言うまでもない。250km/hで415kgのダウンフォースを達成すると同時に、冷却性能を15%以上向上させることに成功したそうだ。レース由来の新ソリューションやアクティブ・スポイラーによってダウンフォースを向上させている。
スペッソット氏は849テスタロッサの特徴を、
新型パワートレイン:1050ps、同クラス最高性能
制御性能向上:ブレーキ、タイヤ、サスペンション、電子制御システム
デザイン:空力性能とスタイルの進化
新型インテリア:直感的なHMIと人間工学に基づいた設計
と、総括する。

◆リトラクタブルハードトップは14秒で開閉
さらに、“マックス”を求めるユーザー向けの車両として、フェラーリは「アセット・フィオラノ」パッケージを用意した。カーボンファイバーとチタニウムを多用することで車両重量を30kg以上削減するオプションパッケージだ。
また、849テスタロッサ・ベルリネッタ(クーペ)の開発と並行して、リトラクタブルハードトップ(片道14秒で開閉可能)を搭載した849テスタロッサ・スパイダーも開発された。スパイダーにもアセット・フィオラノは設定される。
希望小売価格は849テスタロッサ(ベルリネッタ / クーペ)が消費税込み6465万円から(税抜き5877万0059円から)、849テスタロッサ・スパイダーが消費税込み7027万円(税抜き6387万4615円)から。