【ボルボ EX30 新型試乗】これが新世代ボルボの走り、“ほんのり強め”のスポーティさ…島崎七生人

ボルボ EX30 Cross Country(クロスカントリー)
ボルボ EX30 Cross Country(クロスカントリー)全 23 枚

BEV専用のプラットフォームを初採用したボルボとして登場した『EX30』。もっともコンパクトなボルボかつSUVモデルの人気車でもあるが、この8月、今までの1モデルから一気に5モデルへとラインアップを拡充、ますます選びやすいクルマへと用意が整えられた。

【画像】ボルボ EX30 クロスカントリーとツインモーターのEX30

◆479万円から買えるようになったエントリーボルボ

とりわけ注目したいのが、479万円の価格が実現されたエントリーモデルの設定。「EX30 Plus Single Motor」のグレード名のエントリーモデルで、後輪駆動のシングルモーターとリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載、一充電走行距離は390kmという、まさにエントリーしやすい戦略的モデルがコチラ。

200kW/343Nmというモーターのスペックそのものは従来の「EX30 Ultra Single Motor Extended Range」(579万円)および新設定の「EX30 Plus Single Motor Extended Range」(539万円)と変わらないが、この2モデルはEX30中で最長の560kmの一充電走行距離をもつ。

今回、実車に触れることができたのが、ハイパフォーマンスを誇るAWDモデル……つまりツインモーター搭載車の「EX30 Ultra Twin Motor Performance」。モーターは前:115kW/200Nm、後:200kW/343Nmのスペックをもち、これまでのボルボ車で最速の0-100km/h加速性能3.6秒という俊足も誇る。一充電走行距離は535kmだ。

一方、同等のパフォーマンスをベースに新登場となったのが「EX30 Cross Countly Ultra Twin Motor Performance」。モデル名のとおりボルボといえば……のクロスカントリー仕立てとしたのがこのモデル。ディテール等は後述するが、最低地上高が+ベース車に対して+20mmの195mm、足回りでは専用19インチアルミホイールに235/50 R19 99Vタイヤが組み合わせられている。こちらの一充電走行距離は500kmとなっている。

◆心地よく気持ちが“ととのう”

試乗はまずEX30 Cross Countly Ultra Twin Motor Performance(以下、クロスカントリー)から。実はこのクルマは発表日直後、青山のショールームでも“見学”していたのだが、やはりクロスカントリーならではの外観のコスメティックに目が止まる。

とくにグリルレスのフロントマスクの樹脂部分には、スウェーデン北部のケブネカイセ山近辺の等高線をモチーフ(緯度・軽度も記されている)にしたという模様があしらわれ、これだけでも何ともクロスカントリーらしさを表現している。もちろんボルボのアイアンマークと斜めのクロームのラインも備わる。

フロントに呼応させたリアゲートのガーニッシュ部分も同様で、さらにはホイールアーチの樹脂モールもクロスカントリーだけのディテールのひとつ。それと黒塗装でややわかりにくいが、標準車に対して1インチサイズを落とした19インチホイールと“肉厚の”55タイヤ(標準車は40タイヤ)も、標準車より20mm高い最低地上高とともに、見るからにクロスカントリーらしさを伝えてくる。なおオプションで18インチのオールテレーンタイヤセットも用意される。

一方でインテリアについては、クロスカントリーは独自の仕立てで、試乗車はシートについては素材がウールブレンド/ノルディコ・コンビネーション、色はパインという仕様(インテリアはチャコール)となっていた。これもいつものボルボらしい清涼感のあるもので、乗ると心地よく気持が整うといえばいいか。

なお前席は座面前端が従来よりも角度が持ち上げられ、着座した時の支えられ感がより向上。後席はコンパクトなクルマ相応のスペース、着座姿勢となっている。

◆スポーティ色をほんのりと強めた新世代ボルボの走り

走らせた印象は、なるほど新世代のボルボはこういうキャラクターなのか……と思わせられる、スポーティ色をほんのりと強めたものだった。

試乗コースには箱根ターンパイク、西湘バイパス(海沿いの自動車専用道路)など、プチ・グランドツーリングが試せるルートが設定されていたが、もちろん動力性能そのものは十二分。試乗車は1880kgの車重ながら、前述のスペックにより、試乗のためにアクセルを大きく踏み込めば、ICEにはないBEVならではの間髪を1mmも入れない加速が確認できる。

登坂路をモノともしないのはいわずもがなで、前後モーターを使うパフォーマンスモードなら、速さと安定感の高さが実感できる。筆者的には、意表をついた加速で周囲を驚かすまでもなく、標準モードで、回生ブレーキの強弱(高/低/OFF)を組み合わせを選び、ワンペダルでクリープも効かせながら走らせるのが身体に馴染んだ。

乗り味は基本的に、昨今の電動SUVらしい、車重を前提に車両の安定感を確保した足回りに感じた。専用設定というものの、場面によりダンパーの減衰の速さ(高さ)による走行中のボディの上下動があるように思えたが、これはせっかくの55タイヤだから、指定空気圧(260~290kPa)を自己責任で調整し、揺れの波長を自分の好みに整えて乗ってみれば、人にとって、より違った印象に変えられるかもしれない……とも思った。

一方で“非クロスカントリー”で同じ動力性能のツインモーターも軽快感が味わえた。今回の試乗車同士では車重は同一、タイヤが40の20インチということもあり、気持よく流すようにワインディングを走らせると、コンパクトさが活きた自然な身のこなしを披露してくれた。いずれもっともベーシックなシングルモーターも試してみたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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