トーヨータイヤが10月2日、独自のタイヤ設計基盤技術をさらに進化させ、次代ステージを目指す新技術体系「THiiiNK(シンク)」を確立したことを発表した。
次世代のタイヤづくりに不可欠と考える領域を基軸に据え、これらの革新と融合によって進化させていくための体系化を行ったもので、コア技術のさらなる洗練を図り、今後、同技術を搭載した魅力ある商品をより多くの顧客に届けていくとしている。
EVの普及拡大や自動運転技術、SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェアをアップデートすることでモビリティとしての機能を最新化できる自動車)戦略の進展など、次世代モビリティに関わる技術革新が加速度的に進むなか、タイヤに求められる性能も高度化しており、静粛性、低転がり抵抗、耐摩耗性のさらなる向上に加え、センサ統合やリアルタイムデータ連携といった新たな機能要求にも対応した製品を高精度かつ迅速に開発することが求められている。
これまで同社が長年にわたり培ってきた各種技術のうち、「材料技術」「シミュレーション技術」「デザイン技術」の3分野は、同社の考える次代のタイヤづくりにおいて基軸となるコア技術である。これらを統合的に体系として整理したのが新技術体系「THiiiNK」であり、同社は、今後開発するすべての製品に「THiiiNK(シンク)」の技術体系を適用していく方針だ。

◆【Nano Balance Technology】~次世代のライフスタイルに応える「材料技術」
同社はゴム材料の開発において、ナノスケールでの材料設計を可能にする独自の基盤技術「Nano Balance Technology」を活用している。この技術は、「分析」「解析」「素材設計」「加工」の4領域を横断的に統合し、ゴム材料をナノ(分子)レベルで「観察」「予測」「機能創造」「精密制御」することで、理想的な材料設計を可能にするものだ。
乗用車用低燃費タイヤの開発においては、「転がり抵抗の低減(低燃費性能)」と「制動性の向上(ウェットグリップ性能)」という背反する性能を高次元で両立。環境性能と安全性能を兼ね備えた、より付加価値の高い商品群を市場に提供している。
◆【T-MODE】~お客様が求める高い性能を実現する「シミュレーション技術」
同社は1987年、国内タイヤメーカーとして初めてスーパーコンピューターを導入し、以来、継続的に最新機種への更新を重ねてきた。これは、シミュレーション技術をタイヤ開発における設計支援の中核として位置づけ、独自に積極活用してきたものだ。
2000年にはドライビングシミュレーションとタイヤシミュレーションを融合した設計技術「T-mode」を発表。さらに2019年には、CAEによる従来の設計基盤技術にAI技術を統合し、設計精度とスピードを飛躍的に向上させた新「T-MODE」へと進化させた。これにより、次世代モビリティに求められる複雑かつ高度な性能要件に対応可能な開発体制を確立している。
※CAE:Computer Aided Engineeringの略。コンピューター支援工学。製品設計・開発段階でコンピューター上に仮想モデルを作成し、物理現象をシミュレーション、解析する技術
◆【パターン設計技術】~機能性と意匠性の両立をさらに進化させる「デザイン技術」
同社は、性能とアグレッシブなデザインを兼ね備えたタイヤ製品の開発・生産・販売を通じて、北米市場において確固たるプレゼンスを築いてきた。2004年、米国ジョージア州に初の海外生産拠点「TOYO TIRE NORTH AMERICA MANUFACTURING INC.」を設立以来、「TOYO TIRES」「NITTO」の2ブランドを展開し、ライトトラックからトラック・バス用まで幅広いニーズに応えている。
中でも、SUV向け主力ブランド「OPEN COUNTRY」シリーズは北米市場で高い評価を獲得しており、2016年に導入した国内市場でも高い好評を得ている。こうしたデザイン技術は、同社の競争力の源泉であり、ブランド価値向上にも大きく貢献している。
◆新技術体系「THiiiNK(シンク)」の確立
「THiiiNK(シンク)」は、同社が将来にわたる中核的技術として位置づけた3分野の技術を、今後さらに研鑽、高度化し、価値創造を推進していくための道しるべとしていくものだ。各技術を進化させながら横断的に連動させ、「設計プロセスの効率化と最適化」と「商品価値の最大化」を図っている。
現在、大阪大学大学院工学研究科の藤田喜久雄教授、矢地謙太郎准教授、野間口大准教授ならびに早稲田大学大学院情報生産システム研究科の山崎慎太郎教授との共同研究を通じ、機能性と意匠性を兼備するトレッドパターン設計に向けた「データ駆動型最適化技術」の研究を進めている。
同研究の最大の特長は、機能性と意匠性を総合評価した多様なパターン候補を一括で可視化し、設計者が総合的な判断を行える枠組みを構築した点にある。これまで蓄積してきた設計ノウハウをデータとして可視化することで、さらなるデザイン品質の向上と開発スピードの加速を実現していくとしている。