【ホンダ プレリュード 新型試乗】プレリュードは伊達じゃない!“ほぼタイプR”な足腰と“適切すぎる”シフトの恩恵とは…西村直人

ホンダ プレリュード 新型
ホンダ プレリュード 新型全 14 枚

◆見た目だけのスペシャリティではない

通算6代目となる新型ホンダ『プレリュード』に試乗した。各所で「プリウスに似ている」というコメントを見かけるが、少なくとも実車からはその印象を抱かなかった。

【画像】ホンダ プレリュード 新型の内外装

それよりも薄型フロントグリルと切れ長のLEDヘッドライト、そして歩行者保護性能を十分に確保した上で可能な限り低くしたボンネットフード、フロントウインドを支えるAピラー直後を頂点とするルーフ形状、塊感を強調するボディ後半の処理などから十分に独創性を感じた。

乗り込めば、このところのホンダデザインで安定の水平基調。シートは骨盤をしっかり支える包み込みタイプだ。これにフルロジック制御のシフト回りや、表示内容を整えた10.2インチTFTメーターなど慣れ親しんだアイテムが迎え入れてくれる。

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ただしそこはプレリュードだ。スペシャリティ感を高めるためハンドルは形状や太さにこだわるなど、見た目だけでなく手に触れるところの質感を『シビック』に対して大幅に高めた。

室内は明るく開放的だ。オンライン販売カラー含めた全5色のボディカラーの内装色はブルーをアクセントにしたホワイト系でまとめられた(白色のみ黒の内装色が選べる)。このブルーの加飾は前後バンパー中央下部にも用いられたほか、標準装備のブレンボ製キャリパーも同じくブルーに彩られている。

惜しいのは運転席からの左後方視界だ。流麗なフォルムのためピラーが太く、上半身を左に大きく捻転しても確保されない視界が残った。ここは先々代9代目『アコード』や『ジェイド』などが採用していた「LaneWatch」の搭載を望みたい。LaneWatchとは、ウインカーを左に操作するか、ウインカーレバー先端にあるLaneWatchボタンを押すと、ナビゲーションの画面が助手席側ドアミラーに搭載したカメラ映像に切り替わり、左側方視界を映し出す運転支援技術だ。

◆「ほぼ現行タイプR」な足腰が生み出す乗り味

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試乗前から動力性能に不安はなかった。なぜなら搭載する直列4気筒2.0リットル×e:HEVはシビックe:HEVでその実力を確認していたからだ。シビックe:HEVで大きく進歩した「ステップシフト」や新たな「パワーメーター」は爽快な走行性能を生み出す原動力であり、それがプレリュードに搭載された新技術「Honda S+ Shift」へとつながっている。

しかも足腰は強靱だ。バネレートやダンパーの減衰特性こそ違えども構造としてはほぼ現行『シビックタイプR』。このタイプRでは鈴鹿サーキット、オートポリス、袖ケ浦フォレストレースウェイなどで周回を重ねてきたが、「デュアルアクシス・ストラットサスペンション」が生み出す確かな駆動力と力強い旋回力の両立はじつに確かなもの。プレリュードではタイプRゆずりの強い足腰を活かし、全域でのしなやかな乗り味を生み出した。

プレリュードのドライブモードは「コンフォート→GT→スポーツ」の3段階。シフトセレクター左側に配置されたスイッチ操作でいつでも選択可能。「GT」モードは従来のホンダでいうところの「ノーマル」モードだが、プレリュードではサスペンションの減衰特性をややハード方向にまとめた。このほか、「インディビジュアル」モードとしてエンジン、ハンドル、サスペンション減衰特性、エンジン音、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、メーターの設定を任意で好みの値に設定できる。

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パワートレーンのスペックはシビックe:HEVと共通だ。141ps/18.6kgf・mのエンジンに、184ps/32.1kgf・mの駆動モーターを組み合わせた。プレリュードのe:HEVはシビックe:HEVと同じく駆動モーターと発電モーターが同軸で配置される方式。ちなみにアコードe:HEVは駆動/発電モーターを平行軸とした別方式で駆動モーターの最大トルク値が20Nm大きい。

「LFC」型を名乗る直列2.0リットル4気筒は2018年頃から開発がスタートした新世代エンジン。将来の電動化を見据え、シリンダーブロックから作り替えられた意欲作で、2022年のシビックe:HEVから実装がはじまった。

直噴化およびアトキンソンサイクル化され燃費数値を向上させるとともに、クランク剛性を大幅に向上させた。これは高回転域での澄んだ音色と、乗員が不快に感じる振動の抑え込みを両立するのが狙いだ。

◆日常域でのしなやかさ

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まずは日常走行からプレリュードを味わう。とても高いサスペンションの取り付け剛性からくる正確なハンドリング性能はタイプRゆずりだが、断然、しなやかだ。そして静粛性能も高くロードノイズやパターンノイズは低く抑えられている。一方、意図的にエンジン透過音はしっかり聴かせる設計ながら、不快な振動は高回転域でも感じない。

e:HEVには、回生ブレーキによる減速度を段階的に区切る機構があり、プレリュードではハンドル脇の減速パドルシフターで7段階分の減速度が選べる。これは2024年導入の現行型アコードが備える6段階分の減速度に、「コースティング」機能として1段分を新たに加えたシステムだ。

欧州のハイブリッド各モデルなどにも搭載されるコースティング機能だが、プレリュードでは、Dレンジでのアクセルオフによる減速度の40%程度にあたる0.02Gと非常に少ない値に設定した(逆に最大減速度はアコードと同じ0.2G)。

コースティング機能が効果を発揮するのは速度変化の少ない郊外路や高速道路で、ここではグライダーが滑空するようなスーッと伸びていく走行感覚が得られる。アクセルを完全に戻した際の空走感を上手く活かすと周囲の交通環境に対してスムースな速度管理ができるので、当然、燃費数値も伸びる。

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◆ホンダらしい独創から生まれた「Honda S+ Shift」

プレリュードでもっとも注目すべき新技術は、前述のHonda S+ Shiftだ。「Sにはさまざまな想いがありますが、人と車がシンクロする、そんな意味も込めています」と語るのは、プレリュードでチーフエンジニアを務めた齋藤吉晴さん。齋藤さんは過去にシビックe:HEVも担当されていて、プレリュードではHonda S+ Shiftを含め全体のとりまとめを行った。

Honda S+ Shiftは、3つのドライブモードそれぞれで機能させることができる。Honda S+ Shiftをオンにすると、コンフォートモードでは駆動トルクをプラスし、GTモードではエンジンレスポンスとエンジン音をプラス、そしてスポーツモードではエンジンレスポンスとエンジン音を最大限プラスする。

筆者の好みは、「GTモードでHonda S+ Shiftオン」を基本として、山道では「スポーツモードでHonda S+ Shiftオン」。元気よく走るにはスポーツモードが向いているのは当たり前だが、誤解を恐れずにいえばHonda S+ Shiftは単に速く走るための機能ではない。ここがじつにホンダらしい独創領域である。

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たくさんの狙いと効果、そして制御が詰まったHonda S+ Shiftだが、ドライブモードセレクター上部の丸いS+ボタンを押下するとe:HEVに8段分の仮想レシオ領域が生まれ、それが8速のギヤ段のような働きをする。

正確にはe:HEVの機構上、直結モード以外は電動モーターがタイヤを駆動するので、仮想レシオでは8段分のエンジン回転領域を正確に使い分けながら、アクセル開度に応じた発電量、すなわち駆動力を制御する。それが減速時ならば回生ブレーキを通じた減速度の制御となり、優れたエネルギーマネージメントと走りの楽しさの両立を狙う。

パドル操作を駆使すればマニュアルトランスミッション的な細かな加減速が楽しめるが、筆者はしゃかりきにシフター操作しながら走るよりも、クーペらしい優雅さ残した“DレンジのままHonda S+ Shiftを楽しむ運転スタイル”をおすすめしたい。なぜなら、Dレンジのままの下り山道でも、まるで迫り来るカーブを認識しているかのように、適切なタイミングで仮想8速ギヤが減速を1段、ときに2段、3段と行っていくからだ。

◆「適切すぎる」変速タイミング

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とはいえ、いくらなんでも介入タイミングがあまりにも適切。言葉はおかしいが「適切過ぎる!」。その確度たるやHonda SENSING用の車載光学式カメラ情報で道路情報を先読みしているのではないかと推察したくらいだ。そこで試乗後、早速、先の齋藤さんに詰め寄った。

「カメラは使用していません。車体からの各種情報のほか、ドライバーが行っているアクセル、ブレーキ、ハンドル操作のみでベストなタイミングを図っています」と満面の笑み。続けて、「適切過ぎるとのお言葉は我々にとって最高の褒め言葉です! じつはアクセルからブレーキペダルに足をのせた瞬間は減速度が早めに立ち上がる制御を組込んでいます」という。

実際に減速度は遅れなく立ち上がるが、スポーツモードではエンジン音をサンプリングした「ASC/アクティブサウンドコントロール」を効果的に使っているため、さらにレスポンスが早い、すなわち適切過ぎるという評価につながっている。しかし、何度体感しても、どんなシーンで走行しても行き過ぎるところは一切ない。この閾(しきい)値設定はお見事だ。

ここまで俊敏なエンジン回転の変動を許容するからには、さぞかし燃費数値に悪影響を与えているのではないか、そんな素朴な疑問がわいてきた。

が、それも杞憂だった。聴けば、理論空燃比で生み出せるトルク値を高めているので燃料比率を高めることなく必要とされるトルク値を生み出せ、また、カーブ走行中も仮想ギヤ段を維持(=エンジン回転を維持)するので、ブレーキからアクセルペダルに踏み替えた瞬間から必要な発電量が確保できている。よってそのエンジン回転をから生まれる発電モーターの仕事量を、そのまま駆動モーターを通じて駆動力としてタイヤに伝えることが可能になるから無駄がないというのだ。

こうしてメカニズムを文字にするとややこしいが、ともかくHonda S+ Shiftとの協調は以心伝心、それでいて燃費数値は大きく悪化しない。ちなみに、減速時、仮想ギヤ段が下段に移行すればエンジン回転数は上昇するが、ホンダの車内測定では燃費数値への悪化分は2%にとどまっているという。

◆プレリュードの真価が明らかになるのは

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このほかプレリュードではHonda SENSING のうちACCの精度を高め、同時に車線中央維持機能である「LKAS」の操舵フィール向上も行った。また、ACC&LKAS稼働中にHonda S+ ShiftをオンにするとACCはカットされるが、LKASはそのまま機能させるなどドライバーとのADAS協調領域も増やしている。

販売体制に対する朗報もある。「好調な受注状況を受け、多くのお客様にご注文いただけるよう増産を含めた対応を行う予定」(プレスリリースまま)というから、一部販売店における受注停止措置はそう長期化しないだろう。もっとも、新車効果は発売開始から3か月間と言われているので、プレリュードの真価が明らかになるのは早くて半年後以降だ。

西村直人|交通コメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

《西村直人@NAC》

西村直人@NAC

クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。

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