【ドゥカティ パニガーレV2 試乗】かつてないほどフレンドリー! おすすめは豪華装備の「V2S」…小川勤

ドゥカティ パニガーレV2S
ドゥカティ パニガーレV2S全 25 枚

2025年2月、スペインのセビリアサーキットで見せてくれた新型『パニガーレV2』の振る舞いは完璧だった。890ccの質量はなく、軽さとフレキシブルなシャシー&高性能サスペンション、そして新しいVツインエンジンの組み合わせが、かつてのドゥカティでは感じたことがないほどコーナーを自由に走らせてくれたのだ。

【画像】ドゥカティ パニガーレV2S 新型

筆者(小川勤)は、こんなドゥカティの登場を持っていたのかもしれない、と思った。僕は、昔からスーパースポーツやサーキット走行が大好きだった。しかし、最近のトップエンドのスーパースポーツはスペック的にはもちろん、50歳を超え体力的にも手に負えなくなりつつあることを実感していた。そんなタイミングで新型パニガーレV2の完璧な振る舞いを見て、歓喜したのだ。

そして、実際に「僕のような気持ちのライダーは多いのではないか?」と思ったし、多くのコーナリング好きとこの気持ちを共有したいと思った。ただスペインでの試乗は、終始スリックタイヤで、サスペンションもそれに合わせた専用セッティングが施されていた。ノーマルの新型パニガーレV2は、日本での試乗までお預けだったというわけである。

ドゥカティ パニガーレV2Sドゥカティ パニガーレV2S

そんな新型パニガーレV2がいよいよ日本に導入。すでに多くのライダーがドゥカティの新しいパッケージを実感している。今回は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイでの国内初試乗となった。

新型パニガーレV2の魅力はなんといっても軽さにある。V2と名付けられた新設計エンジンは、前モデルのパニガーレVエンジンより9kgも軽量。そしてそのエンジンを搭載することで一新した車体は17kgも軽量化されているのだ。

現在、世界的にニーズが高いのは、排気量1000cc以下の100ps前後のソフトスポーツバイクだ。新型パニガーレV2は、890ccの120ps。現代のニーズやカスタマーの声を聞いて生まれた1台だ。

◆ライダーの操作を感じとるレスポンスの良さが魅力

ミッションやクラッチなど各パーツを軽量&コンパクト化し、前モデル比−9kgを実現したV2エンジンミッションやクラッチなど各パーツを軽量&コンパクト化し、前モデル比−9kgを実現したV2エンジン

良いバイクには良いエンジンが必須だ。そしてどのカテゴリーのバイクも軽いに越したことはない。ニーズとはいえ、軽いバイクを作りたいという目的を達成するためにV2と名付けられたエンジンを作ってしまうドゥカティはやっぱり凄い。今後、このV2エンジンがドゥカティのバイク作りを変えていくのは間違いなく、890cc前後の様々なカテゴリーで、軽量なバイクを生み出していくことだろう。

袖ヶ浦フォレストレースウェイを走り出すと、パニガーレV2は一瞬でバイクとライダーの一体感をもたらしてくれた。車体はそれほど小さくないものの、軽さがもたらす運動性、扱いやすい特性のエンジンがもたらす馴染みやすさは特筆だ。

ノーマルタイヤはピレリ製ディアブロロッソ4。それほどハイグリップの部類ではないものの、インフォメーションが豊富で、安心感が高い。

標準タイヤはピレリ製ディアブロロッソ4。サーキット派はハイグリップタイヤへ換装した方がいいだろう。標準タイヤはピレリ製ディアブロロッソ4。サーキット派はハイグリップタイヤへ換装した方がいいだろう。

モードは「レース」「スポーツ」「ロード」「ウエット」から「スポーツ」を選択。中回転域からのスロットル開け始めの反応がよく、後輪のグリップを作りやすい。120psのパワーも程よい。ハンドリングはどこまでも軽快で、狙ったラインを通りやすい。

途中、「ロード」と「ウエット」モードもテスト。ロードはかなり穏やかな特性で、バイクに慣れるのに丁度いい。「ウエット」はトラクションコントロールなどの制御の介入が大きく、雨天時は大きくサポートしてくれるはずだ。ドゥカティやセパハンのポジジョンに慣れていいない方は、モードを変更してバイクを優しい特性にするのがいいだろう。

慣れてくると、いつもの袖ヶ浦のコースをコンパクトかつ思い通りに走れている印象が強まってくる。これはライダーの上半身の角度やちょっとした荷重バランスの操作に、パニガーレV2がきちんと反応してくれるからで、車体のどこからも硬さや頑固さを感じない。バランスの良さが生み出すフレンドリーさは、キャリアやスキルを問わずスポーツライディングを楽しませてくれる重要なファクターである。

◆かつてないほどフレンドリーなパニガーレ

ドゥカティ パニガーレV2Sドゥカティ パニガーレV2S

2本目はモードを「レース」にしてペースアップ。エンジンのレスポンスが上がり、各電子制御の介入も少なめになる。アベレージを上げても難しさや乗りにくさを感じさせず、ライダーがコントロールしている実感が高い。だから楽しい。

スーパースポーツシリーズはバイクの運動性の高さにライダーがついていけずに乗りこなせなく感じることが多いが、パニガーレV2はとてもフレンドリーな部類。キャリアの浅いライダーがチャレンジしても、これまでのドゥカティより心を開いてくれる確率が高いだろう。そして、ベテランライダーはもっと積極的にスポーツライディングを楽しみたい気持ちになるだろう。

ただし、サーキットをそこそこのアベレージで楽しみたいいなら、タイヤをピレリのディアブロロッソ4コルサやディアブロスーパーコルサシリーズに変更した方が良い。スペインでスリックタイヤで試乗した際、トラクションコントロールは1度も介入しなかったが、ノーマルのディアブロロッソ4だと頻繁にトラクションコントロールが介入するからだ。

ドゥカティ パニガーレV2Sドゥカティ パニガーレV2S

◆サーキットでも一般道でも楽しめる『V2S』

一方で、サーキット以外も楽しめそうなのが『パニガーレV2S』の魅力だ。ハンドルは前パニガーレV2Sよりもアップライトだから、ツーリングを満喫するのもありだろう。今回、各モードで低中回転域を繋ぎながら走ってみたが、V2エンジンはとても滑らか。これはツーリング先のワインディングでとても心強いはずだ。オプションのクルーズコントロールやターンバイターンナビゲーション、さらにツーリングバッグなどを使えば、より長距離が快適なキャラクターに仕立てることも可能だ。

サーキット、そして一般道の両方で感じられるパニガーレV2Sの魅力は、軽量な車体に合わせた豪華な足まわりにもある。前後サスペンションはオーリンズ製、フロントブレーキキャリパーはブレンボ製M50を装備。良い足まわりは、バイクの正確な挙動を知るため、スポーツライディングを満喫するため、さらに長距離を乗り心地よく走り続けるための重要なファクターになる。

パニガーレV2Sの車両価格は240万8000円、スタンダードのパニガーレV2は211万9000円と価格差はあるが、性能は価格差以上にあると思っていいだろう。スキルやキャリア、走るシチュエーションを問わず、僕は断然、豪華装備のパニガーレV2Sをお勧めする。

小川勤氏とドゥカティ ムルティストラーダV2S(左)とパニガーレV2S(右)小川勤氏とドゥカティ ムルティストラーダV2S(左)とパニガーレV2S(右)

小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

《小川勤》

モーターサイクルジャーナリスト 小川勤

モーターサイクルジャーナリスト。1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

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