ガンダムの「ビーム・サーベル」は現代科学で実現できるか?宇宙でも重要なプラズマと農業の関係とは

「現代科学でガンダムのビーム・サーベルは実現できるか?」

そんな問いに対して、東北大学でプラズマの研究をしている金子俊郎先生は、講演の中で「プラズマと磁場を使ったMフィールドがあれば実現可能なはず」と述べて、プラズマは宇宙環境では鍵になると語った。

ガンダムの「ビーム・サーベル」は現代科学で実現できるか?宇宙でも重要なプラズマと農業の関係とは
ガンダムの「ビーム・サーベル」は現代科学で実現できるか?宇宙でも重要なプラズマと農業の関係とは全 15 枚

「現代科学でガンダムのビーム・サーベルは実現できるか?」
そんな問いに対し、東北大学でプラズマ研究を行う 金子俊郎先生 は、講演の中で「プラズマと磁場を使った“ Mフィールド ”があれば実現可能なはず」と述べ、宇宙環境におけるプラズマ技術の重要性を語った。

【画像全15枚】

「ビーム・サーベル~プラズマ農業プロジェクト 」が展示した、ビーム・サーベルを持ったガンダム ©創通・サンライズ
「ビーム・サーベル~プラズマ農業プロジェクト 」の展示パネル ©創通・サンライズ
©創通・サンライズ

ガンダムオープンイノベーション成果発表会

バンダイナムコグループ横断の「ガンダムプロジェクト」が推進する ガンダムオープンイノベーション(GOI) は、2025年11月18日~19日、日本科学未来館で成果発表会 『GUNDAM OPEN INNOVATION 2021–2025 ~GOI PROJECT REPORT~』 を開催した。

金子先生は18日の講演「ビーム・サーベルで農業! 未来のプラズマ農場とは?」** に登壇し、ビーム・サーベル実現の可能性と、プラズマ農業の最前線を紹介した。

東北大学 金子俊郎氏。アニメ「ガンダム」の世界観と現代科学との接点、プラズマの可能性について、やさしく楽しく解説した

ミノフスキー粒子と I フィールドの「ビーム・サーベル理論」

「ビーム・サーベル」はガンダムに登場する架空の剣だ。背中から引き抜くとピンク色に発光し、白兵戦に用いられる強力な武器だ(スターウォーズに登場するライトセーバーも同様のものとして想起できる)。

冒頭の問い「現代科学でガンダムのビーム・サーベルは実現できるか?」に対して、金子先生は、作品設定に基づく宇宙世紀のビーム・サーベルは、光ってる部分がミノフスキー粒子(架空)で構成されていること、ミノフスキー粒子は静止質量がほとんど0で正負いずれかの電荷を持つ粒子とされていること、その外側には「Iフィールド」(規則的に整列した立方格子の力場)があり、ミノフスキー粒子を刀のカタチで閉じ込めているとする説があることを解説した。

©創通・サンライズ

その上で、現代の科学で考えると、ビーム・サーベルの光る部分を構成するミノフスキー粒子は「プラズマ」に性質が似ていることを紹介。金子先生は「プラズマ粒子というのは、正の電荷を持つイオンと、負の電荷を持つ電子が集まっている状態」とした。
プラズマは従来、真空中でしか維持できなかったものが、近年の技術革命により空気中で維持でき、金属を切るような強力なものから(プラズマ切断と呼ばれ、工場・造船・自動車修理・金属加工など、世界中で日常的に使われている)、人や植物が触れても熱くない優しいものまで制御が可能になっていることを紹介した。

©創通・サンライズ

しかし、実際のプラズマは形を保てず拡散してしまうため、ビーム・サーベルのような「刀身としてカタチを保持」することはできない。そこで金子先生は、プラズマを「Mフィールド」(マグネティックフィールド:磁場)で閉じ込めることで、「理論上」はビーム・サーベルを実現することは可能だと考えられる、として「磁場によってプラズマ粒子を閉じ込めることは、他のプラズマ研究の分野でも明らかにされています」と根拠も示した。

連邦軍とジオン軍で色が違う理由も考察

更に、初代ガンダムのアニメを注意深く見ていると、連邦軍とジオン軍でビーム・サーベルの色が異なることに気づくと指摘。連邦軍のモビルスーツのビーム・サーベルや、ホワイトベースのビーム砲はピンク色だが、ジオン軍のそれらは黄色がかっている、とした。

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その理由の推察として、もしも素材がプラズマだと仮定すると、プラズマの色は使用しているガスによって変化するため、連邦軍のピンク色はアルゴンガスやネオンガスが使われていて、ジオン軍の黄色はナトリウム(塩)の影響を受けているためで、おそらくジオン軍は少し技術的に劣っていて不純物として塩が混じってしまっているため黄色っぽいのではないか、とユーモラスな仮説を提示し、会場の笑いを誘っていた。

プラズマ農業へ—植物を育てる“プラズマの力”は宇宙に通じる

後半では、農業にこのプラズマを活用する話に展開。身近なプラズマに雷、北極や南極で見られるオーロラ、そして太陽はプラズマの塊、核融合発電にもプラズマは使われていると紹介した。

また、これらは高温のプラズマであり、それに対して低温のプラズマ(触っても熱くない)も存在し、ヒトの身体や植物に当てることによって、良い作用を及ぼすことが解ってきているとした。ちなみに、空気清浄機の中には冷たいプラズマ装置が内蔵され、殺菌効果があることが知られている。

実は日本人は昔からプラズマを農業に使えることを知っていて、「稲妻」という言葉と、雷が多い土地は稲がよく育つという言い伝えは無関係ではないのではないか、農業に従事する人たちは雷、つまりプラズマによって植物がよく育つことを経験から知っていると話した。

更に、「私達のような科学者としては、言い伝えが実際に真実なのかということを検証するべきで、その結果、空気を原料としたプラズマを作ると、植物を成長させる窒素肥料になり、殺菌効果もある、植物にプラズマをあてると病気になりにくくなる免疫効果も認められました」と続けた。

金子先生は「私達はこのプラズマが植物に対して良い影響を及ぼすことを有効活用し、新しいプラズマ農業システムを作れないかと考え、プラズマアグリ(東北大学の登録商標)の研究を進めています」と語った。

宇宙では食糧や肥料を運ぶのに膨大なコストがかかる。宇宙ステーションやスペースコロニーで持続的に暮らすには自給自足は必須。その際、植物の健やかな生育を促し、病気になりにくい農業の実現のために、プラズマが大きな鍵を握っている。

©創通・サンライズ

宇宙農業とプラズマ

金子先生は「宇宙にはダークマターとかダークエネルギーなど、まだ実体が分かっていないものも多い。ただ、宇宙のなかで既に分かっている物質のうち99.999999%は実はプラズマだと言われています。プラズマを理解してプラズマを制御すれば、宇宙を制御できる、宇宙を制したい方はプラズマを勉強しましょう」と話して、会場は再び笑いで包まれた。

「機動戦士ガンダム宇宙世紀 VS 現代科学」という書籍では、ビーム・サーベルとプラズマ、プラズマ農業について、金子先生が32ページにわたり詳しく語っている。興味のある人はその書籍も参照して欲しい。

「機動戦士ガンダム宇宙世紀 VS 現代科学」(伊藤篤史、笠田竜太、金子俊郎、福田努、小池耕彦、坂本貴和子 共著 : マイナビ出版) ©創通・サンライズ

《神崎 洋治》

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