“セルフ・デッドニング”の効果的な施行術を公開![お金をかけずにサウンドアップ]

スピーカーの真裏への「背圧処理」に向いた部材の一例(フェリソニ・DS-15WP)。
スピーカーの真裏への「背圧処理」に向いた部材の一例(フェリソニ・DS-15WP)。全 3 枚

音楽好きなドライバーなら、その音楽をもっと良い音で楽しみたいと思ったことが一度や二度はあるはずだ。しかし、システムアップにはお金がかかると思いきや、低コストでできることもさまざまある。当連載ではその具体策を一つ一つ紹介している。

【画像全3枚】

◆コストを抑えたい場合には、スピーカーの真裏への施行のみでも音に効く!

「デッドニング」とは、ドアの内部の音響的なコンディションを上げるための作業だ。クルマではドアがスピーカーボックスの役割を担うが、ドアはスピーカーとしては設計されていないので、音響的なコンディションがあまり良くない。それを改善するためにデッドニングが施されることとなる。

その施行はプロに任せた方が良いのだが、自分でやっても楽しめる。そしてセオリーを順守すればある程度の効果を上げられる。というわけで前回は全体を通しての作業のコツを解説したが、それに続いて、今回は具体的な施行内容を紹介していく。

さて、コストを抑えたい場合には部分的な施行にとどめても良い。その場合にはまず、「スピーカーの真裏での“背圧処理”」だけやってみよう。なお、「背圧」とは、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーのことを指す。

アウターパネルへの「制振作業」の施工例。アウターパネルへの「制振作業」の施工例。

◆“背圧”は諸悪の根源。このパワーを減衰させると状況が好転!

背圧処理から始めるべき理由は、ズバリこの背圧が諸悪の根源だからだ。これにより、ドア内部の鉄板が共振してビビリ音が発生し、これがドアの前面に回り込むとスピーカーの表側の音を打ち消す「キャンセリング」を引き起こす。

なのでまずはこれを小さくするべく、スピーカーの真裏に「吸音材」を貼ろう。そうすることで、背圧のパワーを減衰できる。

とりあえずはここまでで終了としても良いのだが、段階を経て、以下の作業も行うと効果はさらにアップする。なのでそれらも紹介しておく。

次には、アウターパネル(ドアの外側の鉄板)への「制振作業」を行おう。短冊状に切った「制振材」をビビリそうな場所に貼ることで、ビビリ音の発生を抑制できる。

なお、闇雲に貼るのはNGだ。ビビリやすい場所に狙いを定めて、効果的に作業を進めたい。で、どのような場所がビビリやすいのかというとそれは、「スピーカーの近くの平らな広い面」だ。逆にプレスラインが入っている付近はビビリにくい。それがリブとなり、強度が高くなるからだ。

「サービスホール塞ぎ」をしているところ。「サービスホール塞ぎ」をしているところ。

◆さらにはインナーパネルへの制振とサービスホール塞ぎまでやると吉!

次に、そこからさらにもう一段階踏み込むなら、今度はインナーパネル(内側の鉄板)への制振作業を施そう。これもスピーカー近くの平らな面を中心に、短冊状に切った制振材を貼っていけばOKだ。

なお、インナーパネルに「サービスホール」と呼ばれる大きな穴が開いていたら、制振材でその穴を塞ぐと、背圧の車内への回り込みを抑制できる。ここまでやると必要な部材の量が増えるので相応にコストがかさむが、実行する価値は大だ。

その上で資金に余裕があれば、または部材が余っていたらもう一歩踏み込もう。ドアの内張りパネルの内側にも作業を施すと、効果はさらに高くなる。パネルの広く平らな面に制振材を貼り、共振を止め、インナーパネルと接する部分にクッション材を貼ってガタつき音の発生を防止し、さらに広めの空間に吸音材を貼ると、背圧の回り込みを一層防げる。

今回は以上だ。次回は、コストのかかりにくい「車内静音作業」について解説予定だ。乞うご期待。

《太田祥三》

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