【ヤマハ アクシスZ 試乗】最軽量か、ゆとりか。「シグナス」と「ジョグ」の間で光る「王道コミューター」の姿…伊丹孝裕

ヤマハ アクシスZ
ヤマハ アクシスZ全 43 枚

ヤマハの125ccスクーター『アクシスZ』に試乗。キャッチコピーに「感動スタンダード」を掲げる通り、扱いやすさが光る王道コミューターに仕上がっていた。

【詳細画像43枚】ヤマハ アクシスZ

125ccの空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載するアクシスZは、2017年に初代モデルが登場した。2022年にはエンジンやブレーキ系にアップデートが施され、その後、新色が追加されるなどして今に至っている。

◆ヤマハ125ccラインナップにおける「ちょうどいい」立ち位置

ヤマハ アクシスZヤマハ アクシスZ

ヤマハは原付二種の排気量帯に、計5機種をラインナップしている。低価格順に並べると『ジョグ125』(26万7300円)、アクシスZ(28万3800円)、『シグナスグリファス』(37万4000円)、『NMAX』(38万9400円)、『トリシティ125』(57万2000円)となり、アクシスZはジョグ125と並んで、ベーシックモデルの役割を担っている。

アクシスZとジョグ125は、フラットフロア(=センタートンネルがなく、足を揃えて乗車するタイプ)の車体に同系のエンジンを搭載するわけだが、一体なにが違うのか。それは主に車体のコンパクトさで、ジョグ125はアクシスZよりも全長が50mm、ホイールベースは70mm短く、車重も5kg軽くなっている。

ただし、車体の小ささは、乗車環境や収納スペースのゆとりと引き換えになっている。実際、シート下容量はジョグ125が約21.3リットルなのに対し、アクシスZは約37.5リットルを確保。スクーターにおいて、機動力を取るか、積載性を重視するかはもちろん人それぞれだが、最も軽量コンパクトなモデル(ジョグ125)と、ワンランク上の車格を備えたモデル(シグナスグリファスやNMAX)の間を繋ぐ、ちょうどいいポジションが、このアクシスZと言える。

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◆気負わず乗れる、軽量ボディとフラットフロア

取っつきやすさにおいて、やはりフラットフロアは楽ちんだ。乗り降りの際に足を妨げるものがなにもなく、わずか100kgの車重と770mmのシート高がそれをアシスト。車体を起こしてまたがる動作に、なにかしらの気構えも必要なければ、引っ掛かりもなく、流れるようにこなすことができる。サイドスタンドはもちろん、センタースタンドを使う時も同様で、コツも力も要さない。ただ足で踏み、あるいはただ前に押し出せば、いとも簡単に車体が立ち、そして降りる。

切れ長のウインカー&ポジションライト、先端が垂れ落ちたフロントカウル、流れるようなテールカバー。こうしたあれこれが、アクシスZの見た目にシャープな印象をもたらしてはいるが、動的にはおっとりとしている。

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◆見た目はシャープ、走りは「おっとり」上質

まず、エンジンが静かだ。セルボタンを押しても、そのスターター音や初爆をほとんど感じることなく、アイドリングし始め、走行中も高い静粛性が保たれたまま。スロットルを急開しても音圧をさして上がらず、8.3ps/7000rpmの最高出力と1.0kgf・m/6500rpmの最

大トルクに見合った穏やかさで淡々と車速を押し上げていく。

減速方向の穏やかも同質のもので、フロントのディスク、リアのドラムが十分な制動力を発揮する。右手のレバー操作ではフロントブレーキだけが機能する一方、左手で操作するとリアとフロントに最適な制動力が配分される「ユニファイドブレーキシステム」を採用しており、その効力はレバーを握った力の分だけリニアに立ち上がるため、速度も姿勢もコントロールしやすい。

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ハンドリングはどうか。ホイールは前後10インチと小径に属するものながら、フロントには100/90-10(ジョグ125は90/90-10)とややボリュームのあるタイヤを選択。これが効いているのか、旋回時の挙動は10インチにありがちな「クルリ」でも「パタリ」でもなく、「スーッ」と落ち着きをともなって曲がっていく。乗り心地や路面のギャップに対する反応も小径らしからぬもので、12インチか、それ以上のようないなし感が好印象だ。

◆大容量収納のメリットと、装備面へのリクエスト

このように、エンジンにも足まわりにも、街中を移動する手段として、なんら不満はないが、もちろんなにからなにまで完璧でもない。

既述の通り、アクシスZの魅力のひとつが大容量のシート下スペースだ。特に前後長は60cmをゆうに超え、今回の試乗中も撮影に必要な三脚やレフ板といった機材を余裕で飲み込んでくれた一方、一般的に多用されるであろうヘルメットの収納は、形状やサイズをかなり選ぶ。

ヤマハ アクシスZヤマハ アクシスZ

ホームページには、ヘルメットが前後に2個収まっている様子が紹介されているが、筆者所有のジェットタイプだと1個でもシートを閉じることができず、ヘルメットホルダーを使用することになる。

利便性の面では他にも、メーターに時計表示があればな、ということと、USBソケットが標準装備だったらな(4950円のアクセサリー設定)という2点をリクエストとして挙げておきたい。近距離移動が主たる用途のコミューターの場合、これらは優先順位が低いのかもしれないが、他社モデルを見渡した時の競争力という意味で、決して無視できない装備でもある。

もっとも、車両全体のパッケージとしては、及第点を大きく超え、日々の通勤や通学を快適にサポートしてくれるはず。突出した性能があるわけではないが、出発地と目的地を確実に、そしてストレスなく結んでくれる頼れるギアとして仕上がっている。

ヤマハ アクシスZヤマハ アクシスZ

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング ★★★★
扱いやすさ ★★★★★
快適性 ★★★★★
オススメ度 ★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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