100株から体験できる、新たな“愛のカタチ”…ホンダが株主優待イベントに注力する理由

ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」
ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」全 62 枚

ホンダは企業価値の向上に向け、株主還元の強化に取り組んでいる。良質な商品展開でクルマやバイクのファンを生み出すだけでなく、NISA制度により近年増加し続けている個人投資家に対し業界水準を上回る配当利回りや、ホンダならではの株主優待を提供することで、株式保有の長期化やファン株主の拡大をめざす。12月6日と7日には、栃木県のモータースポーツテーマパーク「モビリティリゾートもてぎ」で株主を対象とした体験会が開催。家族連れも多く参加し、サーキットと自然が調和した同所でのアクティビティを楽しみ、ホンダへの理解を深めた。

【画像】ホンダが株主優待として開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」


ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」

◆増加する個人投資家、「ファン株主」拡大へ意欲

ホンダは言わずと知れた世界的なモビリティ企業だ。二輪、四輪、さらに発電機などのパワープロダクツ事業で、2025年3月期の世界販売実績は2798万台。うち二輪は2057万台で、世界トップの販売台数を誇る。売上は21兆6887億円、営業利益は1兆2134億円にのぼる。特に二輪は、圧倒的な販売台数を強みに、車体の基本などを共有することでラインアップを拡大しつつ「他社を凌駕する低コスト体質を実現」しているという。同期の利益6634億円は、2年前の4887億円(1875億円)と比べても大幅に伸長、営利率は18.3%と高収益化を果たしている。四輪は、二輪に遅れを取っているものの、北米を中心に高まるハイブリッド車の需要が後押しし、世界販売は19年比で3倍となる89.8万台を販売、原価低減などにより収益性は改善している。

2031年に向けてはハイブリッド車の販売台数をさらに2倍超とし、26年目標の100万台から200万台へと成長させる。キャッシュ創出力を回復させ、ROIC(投下資本利益率)を全社目標10%達成をめざすとしている。ここで重要となるのが株主還元の強化だ。ホンダは株主還元を「経営の最重要課題と捉えている」とし、自動車セクターの平均が2.8%であるのに対し、4.57%もの配当利回りを実現。配当を26年3月期には前年同期比2円高の70円とする見込みだ(25年9月末時点の株価は1531円)。ホンダは、「キャッシュフローを意識した経営により、より安定的、継続的な配当で株主様に還元を図っていく」としている。

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安定的で確実な配当が株主にとっての最大のメリットだが、2024年の新NISA導入以降増加している個人投資家に対し、より付加価値の高い株主優待を設けることでファン株主の創出を図り、さらに長期保有を促したい、というのがホンダのねらいだ。そこで力を入れるのが「体験型株主優待」の充実で、古くは1984年から工場見学会などを実施してきた。現在は多岐にわたるホンダ製品やサービスを柱とした体験会を拡充させており、現在では年5~6回もの体験会を開催している。レース観戦やセーフティスクール体験会のほか、ホンダジェット体験会やマリン試乗会など、ホンダならではのイベントが目白押しだ。これが功を奏してか、株主数は2023年3月から2年ちょっとで3倍の60万人を超えたという。

参加した個人株主の満足度も高いと言い、「好感度が上がった」「貴重な体験」「バイク、クルマだけでないホンダの魅力を他の株主にも広めてほしい」などの声が集まっているという。そんな「ホンダらしい体験型株主優待」のひとつとして、12月6日と7日に初めて開催されたのが「モビリティリゾートもてぎ体験会」だ。

◆里山とサーキットの魅力を同時に味わえる

ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」

モビリティリゾートもてぎは、東京ドーム137個分もの敷地に、国際レースもおこなう1周約4.8kmのサーキットのほか、遊園地やホテル、ミュージアムやキャンピング場などさまざまな施設を有する。この広大な敷地の70%は自然を残した野山で、これを生かしたアトラクションやアクティビティを豊富に揃えるのも大きな特徴だ。今回の体験会では2日間で29組85名の株主とその家族が参加し、これらモビリティリゾートもてぎの魅力を、ガイドツアーを通じて味わった。

今回のプログラムは3つ。「ハローウッズ」と名付けられた里山を散策するキャストウォーク、ホンダの名車や創業者・本田宗一郎の功績をたどるコレクションホールツアー、そしてサーキットを自分のクルマで運転することができる「サーキットクルーズ」だ。参加者には小さな子ども連れの家族も多く、里山散策ではどんぐりを拾い集めたり、木に止まっていたカマキリをつかまえたり、大きなカブトムシの幼虫を手に取ったりと、都会ではなかなか味わえない里山ならではのアクティビティを楽しんだ。

ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」

またサーキットクルーズでは、ホームストレートにクルマを並べ、普段歩くことができないサーキット上で思い思いに記念撮影をおこない、大人も子どもも興奮し楽しんでいる様子が見られた。

参加者の多くは自身のクルマを運転して参加していたが、意外にもホンダ車は少ないのが印象的だった。このあたりが、「ホンダファン」と「ホンダの株主」との大きな違いだろう。話を聞くとホンダ意外の自動車ブランドの株はもちろん、その他業種の株も手広く保有しているという方が大半で、「体験会をきっかけに興味を持った」「サーキットを走るのが初めてなので応募してみた」など、今回の株主優待がホンダへの関心を強める一助になっている様子がうかがえた。一方で「以前はホンダのバイクやクルマに乗っていた」という方も多く、今回新型『プレリュード』をレンタルして参加した方は、「今はクルマはないけど、買いたいなと思っている」と話すなど、ホンダブランドへの愛着はやはりそれなりにあるようだった。

ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」

◆100株から体験できる、新たな“愛のカタチ”

経理財務統括部 財務部の伊藤功志部長は、「今後も、ホンダの株主になっていただいた株主様、これから株主になっていただける方、昔からホンダを支えてくださっている株主様にも、ホンダの事業、製品、施設を身近に感じてもらって、ホンダファンになっていただき、長期で株を保有していただけるよう、体験型優待を継続して実施し充実させていきたい」と話す。初開催となったモビリティリゾートもてぎでの体験会にも手応えを感じていると言い、「若い方や、小さいお子さんも参加いただいて、楽しんでいただけたかなと思っている。我々もお子さんの笑顔を見ることで元気をもらえる。原体験として、小さい頃からホンダの製品を知ってもらって、将来的大きくなったときに投資対象としても見てもらえれば」と“小さな投資家”の未来に期待を寄せる。

ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」ホンダが株主優待として12月6・7日に開催した「モビリティリゾートもてぎ体験会」

モビリティリゾートもてぎでの株主優待体験会も今回が完成系ではなく、参加者した株主の声を反映しながらアップデートさせていくという。今後、どのような体験型イベントが提供されるのか、ホンダ株主に注目してほしいのはもちろんだが、これをきっかけにホンダ株に興味を持つ新たな個人投資家が生まれるのかにも注目だ。

ちなみに、今回の体験会の応募倍率は約78倍、ホンダジェット体験会では約400倍もの応募があったという。応募には、ホンダ株を100株以上、3年以上保有していることが条件となる。1株が約1500円、100株で約15万円。二輪や四輪を購入するのに比べたら意外と手が届きやすいと思える価格だが、ホンダファンの新たな“愛のカタチ”として、「株を所有する」という選択肢もアリかもしれない。

《宮崎壮人》

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