ホンダが11月のEICMA:ミラノモーターサイクルショーで発表した、ホンダ初の電動モーターサイクル『WN7』が白バイとして日本に上陸する。2026年1月の箱根駅伝で、先行車両(いわゆる先導車)を務める予定だ。
12月19日、東京都庁で「国産EV白バイ初公開セレモニー」が開催された。
●国産EV白バイ初公開
東京都は、CO2を排出しない環境先進都市「ゼロエミッション東京」の実現に向け、都内で新車販売される二輪車を2035年までに100%非ガソリン化することをめざしている。EVバイク普及推進に向けた機運醸成のための象徴的な取組として、白バイ仕様の国産EVバイクが、箱根駅伝の東京都内区間、1区と2区を先導する。
マラソンや駅伝などの先導では、すでに海外製スクータータイプのEVバイク(BMWなど)が使用されているが、国産で、跨って乗るモーターサイクルタイプのEV白バイは初登場だ。ホンダが2026年1月の箱根駅伝向けに4台を東京都に貸与、警視庁の協力で運用する。
●ホンダWN7を間近に見るチャンス
セレモニーに登場した小池百合子都知事は「スクータータイプのEVバイクは配送業務で見られるようになった。今回はモーターサイクルタイプを業務で使う」と説明。「白バイなので追いかけられないように」と笑うが、警視庁ないし警察庁での今後の採用、あるいは日本市場での市販計画は未定だ。したがって正式発売まで、2026年の箱根駅伝がWN7を間近で見る数少ないチャンスになる。
セレモニーにゲストとして登壇した俳優のつるの剛士は、バイク好きでも知られる。WN7を見て「マフラーがないのでスリム。近未来的。道路で乗って走ってみたい」と感想を述べた。「ウルトラマン的にもカッコいい」と、ウルトラマン俳優ならではのコメントも。
ホンダ WN7 警視庁白バイ仕様
●左足にペダルがある!
セレモニーには本田技研工業の田中幹二チーフエンジニア(二輪・パワープロダクツ事業本部、二輪・パワープロダクツ電動事業統括部、電動開発部、二輪商品開発課)も参加して、WN7について説明した。田中チーフエンジニアによると、ほぼミラノに出展された仕様のままだという。
警視庁白バイの備品・装備がいくつか加えられているが、面白いのは、左側、シフトチェンジペダル代わりの足置きだ。本来ならEVバイクはシフトチェンジが不要なので、WN7にもついていないが、白バイ隊員に試乗してもらったところ、ライディングポジション保持のために追加されることになったという。
ホンダ WN7 警視庁白バイ仕様●横一文字のシグネチャーライト
WN7のデザインは「機能を研ぎ澄まし、本質を表現すること」をめざし、ライダーが触れるボディ部分はシームレスで滑らかな表面としながら、力強いシルエットとした。横一文字のシグネチャーライトは、今後ホンダの電動二輪車の共通アイデンティティとなる。
車体骨格には、通常車体の前後をつなぐフレームではなく、車体の中心に配置したアルミ製バッテリーケースを骨格の一部とする構造を採用した。車体と前方のステアリングを保持するヘッドパイプと、車体の後方を保持するピボットブラケットは同じく車体中央に配置されたパワーユニットに直接締結されている。
WN7のモーターは、搭載性に優れた軽量コンパクトな水冷・インバーター一体型モーターを専用開発した。最高出力は50kWで排気量600ccのICE車相当、最大トルクは100Nmで1000ccのICE車に匹敵する。定格出力(安定して出力を続けられる最大値)が18kWなので、日本の法規では「軽二輪車(小型二輪)」に分類され、「小型二輪免許」で運転できる。
●航続は140km
駆動バッテリーは、新規開発した9.3kWhの固定式リチウムイオンバッテリーを採用。急速充電を可能にするCCS2規格と一般家庭にある普通充電Type 2規格を採用した。フロントフォークの幅に収まるコンパクトな形状だ。EVスクーターで使用している「Mobile Power Pack e:」は採用していない。
フル充電時の航続は140km(WMTCモード)。箱根駅伝1区が21.3km、10区が23.0kmなので、充分だ。
WN7の生産は、ホンダが二輪車生産のマザー工場として位置付けている熊本製作所だ。2026年からグローバル市場に供給する予定。




