デンソーは、電動大型トラックにおいてバッテリーの温度管理を担い、車両の走行性能向上やバッテリー寿命の延長などの実用性向上に貢献する国内初の「バッテリー温調モジュール」を開発したと発表した。
本製品は、2025年10月24日に発売された国内初の燃料電池大型トラック量産モデル、日野「プロフィア Z FCV」に搭載されている。
物流業界は日本の経済と暮らしを支える重要な社会基盤である一方で、エネルギー消費量が大きい産業の一つであり、カーボンニュートラルの達成には長距離輸送を担う大型トラックの脱炭素化が不可欠だ。その手段として、電気で駆動する電動トラックが注目されており、その普及は国策として加速している。
電動大型トラックは、走行時にバッテリーを高出力で使用するため、従来よりも高いバッテリー冷却能力が求められる。また、バッテリー温度を精密に制御することで、バッテリー寿命を延ばすとともに、過酷な運行条件下でも高出力で安定稼働させ、走行性能を維持することが重要だ。
デンソーは、この課題に対応するため、これまでのカーエアコン開発で培った高効率・高性能・小型化技術を生かし、サイズあたりの冷却性能で業界トップレベルを誇る、バッテリーの温度制御システムを新たに開発した。
今回開発した「バッテリー温調モジュール」は、バッテリーに冷温水を供給し、バッテリー内部の温度制御を行う製品である。本製品は、バッテリーの温度制御に必要な複数の機能をモジュール化し、車両の空調システムとは独立して動作することで、バッテリーに特化した最適な温度制御を実現した。
空調システムと切り離した温度制御機能のモジュール化では、ヒートポンプサイクル、ラジエーター、ヒーター、ポンプなどバッテリーの温度制御に必要な機能を、空調システムと切り離してモジュール化。これにより、車室内空調に影響を与えることなく、バッテリーに最適な温度制御(夏は冷却、冬は加温)を実現した。
走行環境やシーンに合わせた省エネルギーな冷却制御では、外気温度や冷却水の温度に応じて、ヒートポンプサイクルとラジエーターの使用を切り替える2つの冷却モードを搭載し、走行環境やシーンに応じた最適な温度制御を実現。さらに、ヒートポンプサイクルを使用する場面では、デンソー独自の高効率設計により、市場に流通する同等の冷却能力を持つバッテリー温調モジュールと比較して、20%以上高いCOP(エネルギー効率を示す成績係数)を達成した。
コンパクト設計で性能とサイズを両立では、ヒートポンプサイクル開発で培った高い放熱性能を持つ熱交換器などを活用することで、コンパクト設計を実現し、サイズあたりの冷却性能で業界トップレベルを達成。車両の実用性を支える高性能技術を省スペースで提供している。
デンソーは、今後も熱マネジメントのコア技術を生かした製品開発を進め、環境にやさしい車両の普及を後押しするとともに、モビリティの進化と持続可能な社会づくりに貢献していく。




