日産自動車、岡山理科大学・日本大学・帯広畜産大学・T.M.WORKS・奄美市・環境省と連携し、ロードキル防止を目指す「NISSAN ANIMALERT PROJECT」のこれまでの実証実験の経過を、12月21日に早稲田大学国際会議場で開催された第30回「野生生物と社会」学会大会で報告した。
このプロジェクトは電気自動車の車両接近通報装置の仕組みをヒントに、野生動物が認識しやすい周波数を発する高周波音デバイスを搭載し、鹿児島県奄美大島と徳之島に生息する絶滅危惧B類のアマミノクロウサギの保護を目的としている。
岡山理科大学の辻維周特任教授らが実験車両として使用した軽EV『サクラ』と高周波ロードキル忌避デバイス「RK12(鹿ソニック)」を用いた走行実験を報告。2024年12月から2025年12月5日にかけ、市道の森林地域内で73回の試行を行い、30秒以内の行動変化を分析した結果、高周波音の供与がある条件でアマミノクロウサギの「移動」行動が増える傾向が見られた。
実験は手探りの段階で機械トラブルもあり十分な統計的な有意性は確認できていないが、今後サンプル数を増やしより詳細に効果検証を進めていく。
プロジェクトでは、奄美市役所や環境省、複数の大学、T.M.WORKSと連携し、地域の許認可調整やデータ解析、機器提供など各分野の専門知識を活用している。奄美大島ではロードキルが増加傾向にあり、マングース根絶によりアマミノクロウサギの個体数回復も進む中で対策の必要性が高まった。
参加者からは、継続研究によるロードキル減少への期待、人と野生動物の共生に向けた技術活用の重要性が指摘された。地元自治体も最新技術の活用に期待を示し、環境省も本取り組みの成果を注目している。
2025年は奄美空港などでプロジェクトの展示も行い、地域内外へのロードキル問題の認識向上に努めている。




