【メルセデスAMG CLA 45S シューティングブレーク 新型試乗】421psを隠した、まさに「能ある鷹」…中村孝仁

メルセデスAMG CLA 45S 4MATIC+シューティングブレーク
メルセデスAMG CLA 45S 4MATIC+シューティングブレーク全 31 枚

昔も今も、高性能車というのは存在する。でも今と昔が決定的に違うのは、昔のクルマはそれなりに、ドライバーへの我慢を要求したことである。

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今更年寄りぶる気はないけれど、その昔の高性能車というのは、何かにつけて我慢を強いられることが多かった。例えばエンジンは高圧縮比で、口径の大きなキャブレターを装着していて(キャブレターである!)、アクセルの踏み方ひとつで、クルマは機嫌がよくなったり悪くなったり。乗り心地に至っては何をどうしても、決して快適というには程遠いものが普通。クラッチは重く、何を操作するにしても神経を使わされたものである。翻って今、それは全く過去の話であって、超が付く高性能車でも、普通に走っていれば、まったくそれが超高性能車だと気づかせることはない。

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昔の2000ccクラスのクルマを想像してほしい。昔というワードの概念が幅広すぎて想像しにくいかもしれないが、仮に20年前としよう。2000年代初期の2リットルクラスといえば、200psあったらとんでもないクルマだった。参考までに2000年当時の高性能車といえば、例えばBMW 『M3』が2リットルではないけれど343ps。探した限りで2リットルエンジン車の最高峰は、ホンダ『S2000』の241psが最高値であった。当時はまだエンジンキャパシティーで性能を稼ぐ時代だったから、高性能車はどうしても排気量とエンジン気筒数が多くなる。

今はターボにものを言わせて、小排気量でもパフォーマンスが出せる。でも今回試乗したメルセデスAMG『CLA 45S』は少々例外といってよいだろう。4気筒2リットルエンジンが絞り出すパワーは、実に421ps。2000年当時、3.6リットルV8エンジンを搭載したフェラーリ『360モデナ』だって、400psである。だから如何にこのCLA 45Sのパワーが凄まじいか、わかってもらえると思う。

◆まさに421psを隠した「能ある鷹」

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話を冒頭に戻して、このとてつもないパワーを持つようなクルマは、概して乗り手に神経と体力と気苦労を使わせる。ところが、試乗車をお借りして夕闇迫る街中に乗り出しても、多少野太い排気音がそれらしさを感じさせるものの、神経も使わなければ、気苦労も全くない。まあ、なんとも普通である。乗り心地だって、少しは締まっているサスペンションを持っていはいるが、乗り心地が悪いとは決して言えない。だから、快適性も全く損なわれていないのである。

ドライブモードの切り替えがあって、スポーツやスポーツ+といった、いかにも神経を使いそうなモードでも、多少走りに変化はあっても、アクセル開度が街中仕様の場合はまず快適の範疇から逸脱しないのである。まぁ、スポーツ+をチョイスすると、いきなりギアを1速落として、排気音が一段高くなるが、それとて上り坂での遅いトラックを追い越すとき程度のものでしかない。つまり普通に走れば普通のクルマであって、まさに421psを隠した「能ある鷹」なのである。

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ステアリングスポーク左右につく小さな丸いスイッチで、走行モードが切り替えられる。右のスイッチではエクゾーストのサウンドが切り替えられるようで、借り出した時はそれが、爆音状態(全然そうではないけれど)だったのを、切り替えてみると少し大人しくなる。足の切り替えもできるけれど、それでもガチガチのイメージになることは全くなかった。

もう少し驚いたのはステアフィール。このパワーならば少しはシャープなハンドリングかと期待したものの、こちらも全くそんなことはなく、いたって普通。むしろ少々ダルに感じるほど、おっとりとしたステアフィールなのである。だから、どんな時でも例の421psを起こさない限り、このクルマは少し野太い排気音を持った普通のワゴンなのである。

◆「1段下がったフロア」の理由

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ワゴンだから使い勝手も非常に優れる。テールゲートを開くと、そこから1段下がったフロアは奥行きがあってとても広い。まあ、この1段下がったところは普通だったら少し文句をつけたくなる点かもしれないが、そうではないことは、421psを目覚めさせた時に分かった。

今回はこのクルマを1泊2日のツーリングの供として使った。だから、ラゲッジスペースには1泊分の小型スーツケースが一つ。そして途中で買い物をした品物などを余裕で飲み込んだ状態で走っていた。実は421psを目覚めさせたのはそんな時である。枯葉マークの前方車両がどうにも遅く、ちょうど良い直線スペースでこの前方車両を追い越すべく、アクセルを踏み込んだ。次の瞬間ほとんど「なにが起きた?」と思うほどの加速とともに、後方に積んでいた荷物がすべて車両後方に叩きつけられるように移動した。それはまさに瞬間であった。

本来ならそれはテールゲートにしこたま叩きつけられたはずだが、1段掘り下げてあるため、それらはボディに当たったのだ。そんなわけで、421psを目覚めさせる時は「空荷でどうぞ」であった。その空荷状態でワインディングを走ると、先ほどはダルだと感じていたステアフィールは、正確無比に変わる。それにまるでアクティブサスペンションでも付いているかの如く、ほぼロールもなしにコーナーを駆け巡る。それが楽しくて、ついついスピードも上昇してしまうのだが、まさにその気になって走らせてみると、凄まじいクルマであることを身をもって確認できる。

◆まさにジキルとハイド的2面性

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1泊2日、全行程500kmほどの旅であった。行く時満タンのタンクは、燃料計で1/4を下回っていいたものの、航続可能距離は120kmを指していた。大失敗したのは、ちょうど帰宅してガソリンを入れる当日に、燃料代がいきなり20円以上跳ね上がった時で、ハイオク1リットルの価格はなんと197円!タイミングの悪さが極まっていた。

ノーズ先端にメルセデスのスリーポインテッドスターが付かないメルセデスに乗ったのは、これが初めてかもしれない。そしてまさにジキルとハイド的2面性を持つすごいクルマであった。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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