三浦昂が貫いた“挑戦者としてのダカールラリー”、その先に見据える最高峰クラス制覇への道

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ダカールラリー2026
ダカールラリー2026全 62 枚

V13ではなく新時代の王者へ、新生ストッククラス初年度に挑んだ“ゼロからのダカール”

「12連覇の先にあったのは、“連覇を捨てる決断”だった」

2026年のダカールラリーで、トヨタ車体のラリーチーム「TEAM LAND CRUISER TOYOTA AUTO BODY(TLC)」は、トヨタ『ランドクルーザー300 GR SPORT』をベースとした新型ラリー車を2台投入。サウジアラビアで1月3日から17日まで開催された今大会で、市販車部門の流れをくむ新生「ストッククラス」初年度の戦いに挑んだ。TLCにとっては、前年までの市販車部門で積み上げてきた12連覇の実績を背負いながら、新レギュレーション下で“初代王者”を狙う新たな挑戦でもあった。

ダカールラリー2026ダカールラリー2026

参戦体制は、#501:三浦昂/ジャン・ミッシェル・ポラト組、#503:ロナルド・バソ/ジュリアン・メナール組の2台。TLCは1995年からダカールの市販車カテゴリーに挑み続けてきたが、2026年はレギュレーション刷新に対応するため、ランドクルーザー300 GR SPORTベースの新型車両を開発。2025年シーズンを通じて実戦投入を見据えた開発を進め、2026年大会に臨んだ。大会全体は15日間で、SS(競技区間)総距離4,840km、総走行距離7,994km。さらにメカニカルサポートが制限されるマラソンステージも設定され、例年以上に総合力が問われるダカールとなった。

OPEN COUNTRY M/T-ROPEN COUNTRY M/T-R

また、足元を支えたのはTOYO TIRES「OPEN COUNTRY M/T-R」。トーヨータイヤは2021年からTLCのダカール参戦をサポートしており、TLCとともにオフロードレースで培った知見を市販・競技向けタイヤ開発へフィードバックしてきた。OPEN COUNTRY M/T-Rは、オフロードレースでの使用を想定して開発された、「OPEN COUNTRY シリーズ最高の悪路走破性を誇るタイヤ」と位置づけるモデルで、三浦選手自身も縦方向のトラクションや耐摩耗性、限界の出方の穏やかさを高く評価している。

現地入りした編集部は、まずダカールラリー開幕直前の三浦選手へと意気込みを聞いた。

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■ダカールラリー2026参戦に向けて、どのような準備で臨みましたか?

当然、ランクルという切り口でいけば次は13連覇という話になるんですけど、レギュレーションも大きく変わっていますし、ライバルも出てきて、ストッククラスのあり方自体が大きく変わっています。そういう意味では、あまり「連覇」という意識はなくて、とにかくもう一度ゼロからスタートするという感覚でした。

プレッシャーがないと言うと語弊がありますが、「失敗できない」という気持ちではなくて、純粋にチャレンジしようという方向に集中できたので、スタート前の緊張感はむしろ心地よかったですね。緊張はするんだけど、それがストレスではないというか。そういう感覚が強かったです。

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■今回ライバルとしてディフェンダーが参戦、レギュレーションもマシンも大幅に変わっています。どんな変化を感じていますか?

ディフェンダーはスピードがあるとは聞いていましたが、実際どれくらいなのかは分からなかったんです。現場に来て「こういうところでは速いな」という部分は見えてきました。荒れたワジのような石が多い場所や、ギャップが連続するようなところでは、こちらの車が明らかに追いついていきます。基本的にダカールはタフなコースが多いので、勝機はあるなと思いました。

僕らの車もわずか1年で開発したので、十分なテストができたとは言えません。ベストは尽くしましたが、ダカールの中で初めて起きることもあると思います。そういうことも想定しておかないと、何かあったときに崩れてしまいますからね。

OPEN COUNTRY M/T-ROPEN COUNTRY M/T-R

■ダカールを見据えて開発してきたタイヤ(OPEN COUNTRY M/T-R)とランクルのマッチング

M/T-Rのダカールスペックの強みは縦方向のトラクションが非常に強いところで、車との相性はすごくいいです。グリップ感もありますし、課題だった耐摩耗性もしっかり改善されています。タイヤに対する不安がないことが、ダカールという極限環境で“攻め続ける判断”を支えてくれています。

テストでわかったことは、スピードが出ている状態でギャップに強く当たる入力が、少し大きいのかなという気もしています。そこでショックを少し柔らかく調整しています。それでも、砂を登る場面では空気圧を落とさなくてもちゃんと登れるので、サンドグリップはかなりいいと感じています。

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ラリーではできるだけ早く姿勢を変えて、コーナリングでGを溜めない走り方をします。そういう意味では、アクセルを踏めば、しっかりと前に出る感覚があるので扱いやすいです。アクセルコントロールもしやすいですし、非常に乗りやすいタイヤだと思います。

タイヤは当然減っていきますが、あるところで突然裏切るような摩耗ではなくて、限界が緩やかに落ちていく感じです。そういう意味で、裏切られる怖さがない。限界が穏やかに落ちる特性は、長丁場のダカールにおいて戦略そのものを成立させる要素です。

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■2週間以上におよぶ長丁場のラリーレイド、走り抜く秘密は何かありますか?

今日は2リッター強くらい飲んでいます。ボトル1本は空になっていたので、たぶん3リッター弱くらいですね。昨日は少し少なかったみたいで、帰ってきたときに少し脱水気味だと感じました。今日は意識して飲みました。ただ、ガブガブ飲むとトイレに行きたくなるので、こまめに飲むようにしています。

水分は一気に飲むのではなく、常に一口二口ずつこまめに飲むようにしています。食事は特に朝をしっかり食べることですね。昼はほとんど食べられないので。あとは味噌汁ですね。汗をかくと塩分やミネラルが抜けるので、たくさん汗をかいた日は味噌汁で補給します。意識して塩分を取らないと足りなくなることもあるんです。あと筋肉のケアとして、アミノ酸系のサプリなども飲んでコンディションを整えています。

トラブルを越えて2台完走、TLCがダカールで見せた“新世代ランドクルーザー”の底力

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2026年のダカールラリーに、TLCは新生ストッククラスへ2台のランドクルーザー300 GR SPORTベース車両を投入。結果だけを見れば、#503がクラス3位、三浦選手の駆る#501がクラス5位だが、今回の#501は単なる“5位のマシン”ではない。新規則対応車の初陣で序盤こそ優勝争いの一角を担いながら、中盤以降は状況に応じて#503を支える役割も担い、TLCの2台体制を成立させる“戦略の要”として戦い抜いた。

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■新型車の初陣で、まずは勝負できる位置へ

プロローグで#501は総合77位、ストッククラス4位。クラス首位から58秒差で本戦へ入り、続くステージ1でもクラス3位と、まずは“勝てる位置”につけた。新生ストッククラス初年度のTLCにとって、ここで見えたのは完走ペースではなく、新型ランドクルーザーに十分な戦闘力があるという手応えだった。

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転機のひとつはステージ2。ヤンブーを離れ、山岳地帯の400kmSSに入ったこの日、#501がブレーキアシスト関連のトラブルに見舞われる。それでも走行を続け、総合86位・クラス4位でフィニッシュ。累積ではクラス2位につけ、首位との差も11分37秒にとどめた。新規則対応の新型車で挑む長丁場において、ここで脱落しなかったことは大きい。#501はこの時点で、まだ優勝戦線の中にいた。

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■後半戦、順位以上に問われた“役割”

大会が進むにつれ、三浦選手の役割は変わっていく。後半に入ると、TLCは#503の表彰台圏内を守る戦いが鮮明になり、その中で#501は単独の順位を追うだけでなく、必要に応じて#503をカバーする存在になった。

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象徴的だったのがステージ8だ。#503にペナルティやスタックがあった局面でも、三浦車は後方から状況を見ながら走行。ダカールでは、2台体制は単に“保険”ではない。1台が勝ちを狙い、もう1台がその勝負権を残す。特にストッククラスのようにトラブルが順位へ直結しやすいカテゴリーでは、もう1台が生きていること自体が、戦略そのものになる。この局面で三浦選手は、まさにその役割を担っていた。

その価値が最も表れたのが終盤のマラソンステージだった。メカニックのサポートが制限される2日間、#503にはステアリング系の不調やスタックが発生。ここで#501は後方から追いつき、サポートしながら走破した。順位は#503がクラス4位、#501がクラス5位だったが、内容としてはむしろ#501の貢献が際立っていた。三浦選手の率いる#501がいたからこそ、#503は表彰台圏を守れたのだ。

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■“走り切る”ことが、そのままチームへの貢献に

終盤には#501もエンジンのオイル系トラブル、#503もステアリング系トラブルを抱えながら、TLCは2台そろって最終ステージへ到達。最終結果は#503がストッククラス3位、#501が5位となった。

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数字だけを見れば表彰台を獲得したのが#503だが、三浦選手の駆る#501の存在は欠かせない。序盤は勝負できる位置につけ、トラブルを抱えても戦線に残り、後半はチームのために動く。勝ちに行くために走り、勝ちをつなぐためにも走った。どんな状況でも最後まで走り抜く──その献身的な姿勢こそが、三浦選手のダカールでの戦いを象徴していた。

次の目標はダカールラリー最高峰クラスでの優勝、2026年シーズンのW2RC参戦に注目だ

DKR GR Hilux / T1DKR GR Hilux / T1

W2RCとしても開催されたダカール・ラリーだが、三浦選手は2026年シーズン全戦の参戦が決定している。その戦いは、まだはじまったばかりなのだ。最後に、三浦選手へ「強いドライバーとはどのような存在でしょうか?」と聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

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「毎日、当たり前のことを同じようにできる人ですね。一見地味に聞こえるかもしれませんが、これが一番難しい。スキルだけで言えば調子のいい日も悪い日もありますし、緊張すれば失敗もします。そういう精神的なストレスがかかった状態でも、必ず同じ運転ができる人が強いドライバーだと思います。僕もそれを目指しています」

「自己評価では、まだ50%くらいだと思います。こうすればもっと良くできるんじゃないかというイメージがたくさんあるんです。イメージできるということは、真剣にやれば実現できる可能性があるということだと思うので。そういう意味では、まだまだ伸びしろがあると信じています」

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静かにそして熱く語ってくれた三浦選手の言葉には、世界のトップドライバーが集う最高峰クラスでの優勝という、次なる目標実現に向けて、チャレンジャーでありつづける姿勢が感じられた。目標のハードルは途方もなく高い。しかし、一歩一歩着実に夢の実現へと近づいている。ダカールの頂点を見据えた三浦昂の挑戦は、ここからが本当のスタートだ。第2戦ポルトガルでは、いよいよランドクルーザーから最高峰T1クラスへとマシンをスイッチして、TGRとトーヨータイヤの協働参戦が本格的にスタート。その走りに、日本からエールを送ってほしい。

TOYO TIRES『OPEN COUNTRY』の製品ラインアップはこちら《取材協力:トーヨータイヤ》

《後藤竜甫》

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