【VW ID.4 新型試乗】BEVで「操る楽しみ」や「所有欲」を満たすことはできるか…中村孝仁

VW ID.4 プロ
VW ID.4 プロ全 39 枚

フォルクスワーゲン『ID.4 プロ』と呼ばれるモデルに初めて乗ったのは、2022年12月のこと。今から3年と4か月ほど前の話だ。

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その時冒頭で何を書いたか。そっくりそのままコピペすると「冒頭から全く個人的な感想を述べる。2030年にはすべてのクルマを電動化します…と謳うメーカー。本当に出来るんですね? MHEVやPHEVばかりなら怒りますよ。」である。この怒りにも似た個人的感想は、やはり図星であった。まあ、そう簡単に電気の時代は来ない、ということである。

◆3年たっても良く出来たBEVだ

その当時の電気自動車(BEV)といえば、やたら滅多と速く、ひと踏みでおよそ従来のICE搭載の超高性能モデル以上の加速感を示したものだ。やがてそんな味付けは間違いだったとばかり、キャラを立てたいモデルは別にして、皆一様に鋭い加速感ではなく、普通にICE風の走りに徹した味付けがなされるようになった。

そうなると今度は、もともとICE好きで、BEVには偏見を持った(偏見というほどではないけれどいわば守旧派)筆者のような場合、静か以外になんか特徴あるの? と突っ込みを入れたくなってしまう。

VW ID.4 プロVW ID.4 プロ

3年数か月ぶりに試乗をしたID.4 プロは、確かにとても良く出来たBEVである、という印象は、当時と全く変わらない。その当時の車両と比較して、バッテリー容量は77kwhから82kwhへ引き上げられ、何よりもモーターのパワーは286psと圧倒的にパワフルになった(当時は204ps)。だから、再びパフォーマンス志向が頭をもたげたのかな? という印象だったのだが、実は全然そうではなかった。もちろん踏み込めば力の差は歴然なのだろうが、如何せん3年もたてば、耄碌した頭にはその記憶を呼び覚ます術はない。だから、3年たっても良く出来たBEVなのである。

その当時、あまり気に留めなかった乗り心地の話であるが、その直前まで乗っていたVW『ゴルフTDI』に比べて、全体的にフラット感の乏しさが気になった。まあ、威勢の良いおてんば娘と行ったところで、よく跳ねる。それ以外の点で乗り心地は概ね良好である。このサイズのBEVとしては、平均的な重量なのかもしれないけれど、さすがに2.1トンを超える重量があるのだから、もう少し快適であってほしいとは思う。

VW ID.4 プロVW ID.4 プロ

◆自動車という乗り物に対する概念は大きく変わった

BEVが、今後の自動車の中心となっていくという既定路線が出来上がった今から10年ほど前から、自動車という乗り物に対する概念が、大きく変わったように感じた。つまりそれは、自動車がエンタテイメント性の高い楽しみをユーザーに提供してくれる乗り物から、単純な移動手段としての乗り物への移行であり、乗り物としての自動車が、乗る人に与える楽しみも、「操縦して楽しむ」から、「くつろぎを楽しむ」へと転換しているように感じるわけである。

SDVという言葉をご存じだろう。Software Defined Vehicleの頭文字で、直訳すると「ソフトウェア定義自動車」となって、長く自分の頭の中では、何を意味するのかさっぱり分からなかった。今自動車会社やIT関係会社では、このSDVの研究開発が盛んにおこなわれている。とあるメーカー(自動車サプライヤー)のエンジニアが、「今から20年前のクルマって、今使うと何かと不便でしょ? でも20年前の車が今のクルマと同じように使える技術がSDVです」と教えてくれて、妙に腑に落ちた。

VW ID.4 プロVW ID.4 プロ

電気自動車すなわちBEVは、そのSDVとの親和性が高いから、将来的な方向性がBEVに行くということはそれなりにわかる。でも、某メーカーの技術者が「運転中にコーヒーが注文できる」というような話をしている。確かにくつろぎを楽しむのであれば、それでよい。でも、それが将来の自動車の方向性だとしたら、個人的には悲しむ方向性なのだ。

◆「自動車を五感で感じたい」という欲求に応えるか

ID.4 プロが、悪いわけでは決してなくて、移動手段としては静かだし快適だし、運動性能も高く、文句ない。でも自動車を五感で感じたい、と思う向きには正直不向きである。あくまでも、アナログ人間の主観的意見である。ただし、BEVと親和性の高い自動車のジャンルもあることがわかった。これについてはそのクルマの紹介で話をするが、なんでもかんでもBEVというのはいかがなものかと、今は思うわけである。

ID.4 プロをドライブしながら感じたことはそんな点であった。だから、移動手段としては文句なく良い。しかし、「操る楽しみ」とか「所有欲を満たす」といった欲求には、正直応えていない気がする…のである。

VW ID.4 プロVW ID.4 プロ

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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