スバル「ソルテラ」、日産自動車「アリア」とお届けしてきたAWD(4輪駆動)のBEV(バッテリー式電気自動車)ロードテスト3連発。最後はボルボの小型クロスオーバー『EX30 Twin Motor』である。
このロードテストは前2モデルと様相がかなり異なっていた。走行距離が330kmと短いうえ、テスト当日は寒気団が去ってしまい、酷寒の中を走り回ったわけではない。むしろスノードライブを求めて標高の高いところを駆け回ったくらいだった。
が、厳寒テストとは違う面白味もあった。気温の上昇にともない、融雪水が道路を渓流のような勢いで流れるシーンがあったり、雪上ドライブもシャーベット、緩んだアイスバーン、いったん融けかけてから再び氷結したかき氷のような雪面等々。これも北国の一面かと南国鹿児島出身の筆者にとっては興味の尽きないドライブだった。
ボルボ EX30は全長4.2mクラスと、ソルテラ、アリアより2クラス下のクロスオーバーBEVだ。2024年に投入された当初はRWD(後輪駆動)のみだったが、昨年夏過ぎにAWDが追加された。最低地上高195mmの「クロスカントリー」が注目を集めているが、元々がクロスオーバーなので、今回ロードテストした「ウルトラ ツインモーター」も最低地上高175mmはある。
試乗ルートは東京を出発、関越自動車道で新潟の越後湯沢に達した後、関越道と苗場山を挟んだ反対側にある秘境秋山郷を冬季通行止区間直前まで周遊。さらに北越急行ほくほく線沿線の一般道経由で直江津南部の北陸新幹線上越妙高駅にゴールするというもの。総走行距離は337.4kmと短く、うち高速道路が5割、3割が山岳路、2割が郊外路。
◆総論
ボルボEX30ツインモーター。東京・青山を充電率96%で出発
ではレビューに入っていこう。EX30は小型であるだけでなくクルマのキャラクター自体もソルテラ、アリアとは大きく異なる。プレミアムDセグメントのような速さ、快適性、装備、安全性をBセグメントに凝縮するという盆栽のようなクルマだ。今回ロードテストを行った総合出力315kW(428ps)のツインモーターはそれが最も端的に表れたグレードである。
実際に乗ってみてもその性格付けは明らかで、完全にスポーツAWDという感があった。高速道路の流入路でフル加速を試してみたところ、一瞬内臓が後ろに持っていかれそうなフィール。雪上でも空転ぎりぎりを精妙に狙うのではなく、後輪が勇ましく雪を蹴立て、それによって発生するオーバーステアを前輪が緩和するという、なかなかアグレッシブなクルマだった。
雪国における使い勝手については降雪が弱かったため検証することはできなかったが、昨年同モデルの後輪駆動グレードをロードテストした時のデータにかんがみれば寒冷時の断熱性能は抜群で、少なくとも耐寒性は非常に高い。ボルボの本社や研究開発拠点があるスウェーデンのヨーテボリは冬季の平均気温がおおむね日本の青森県に相当する。また人口密度が低く、大都市と大自然が隣り合わせであるため路面の状況変化もバラエティに富む。そんな環境に拠点を構えるメーカーならではというテイストの独自性を垣間見ることはでき、機会があれば豪雪時の使い勝手も試してみたいと思った次第だった。
◆冬季の航続力と充電
関越赤城高原SAにて350Aの高速充電。開始時の充電率が51%と高かったためか、プレコンディショニングに失敗したからかは定かではないが、超高速の数値は見られなかった今回のロードテストは午前9時半に東京を出発後、午後4時までに新潟の上越妙高駅に到着しなければならないという縛りがあったため、検証できることは限られている。出発時の充電率は96%。関越自動車道練馬インターチェンジから高速に乗って最も速い流れに乗りながら北上し、出発から137.2km走行地点の赤城高原にバッテリー充電率51%で到着、計器上の100%換算航続距離は305kmとなった。
これは同じEX30のシングルモーター版を寒冷環境で走らせた時と比べてもかなり短い。航続が伸びなかった要因として考えられるのは熱損失がパワーコントロールユニット2つぶん発生するデュアルモーターであること、平均車速が高かったこと、バッテリー容量がソルテラ、アリアに比べて少なかったこと、前橋から標高差400mくらいの駆け上がりがあったことなどだが、気温が終始プラスであったことを考えると1割くらい伸びてほしいところだ。
赤城高原では最大電流350A、公称出力150kW充電器で充電を行ってみた。が、ここで失敗をやらかした。EX30は充電スポットを目的地にすると到着前にバッテリーの温度を充電に適するよう調整するプレコンディショニング機能を持つが、充電スポットではなくサービスエリア自体を目的地にしてしまったためそれが働かなかったのだ。
EX30は昨年冬にファームウェアのオンラインアップデートを受け、日本の急速充電規格CHAdeMO仕様のモデルも欧州モデルとほぼ同等の速度での充電が可能になった。昨年末に小容量バッテリー版をテストした時は気温10度というコンディションで受電電力103kWが出ていた。
秋山郷に続く国道405号線。厳寒期に訪れてみたい場所リストに入れねばなるまいAWDモデルのファームウェアアップデート版は最大受け入れ電流が350A。バッテリーの定格電圧396Vから類推して140kWくらいの充電器出力を得られそうだったが、小容量版と同じ気温10度での充電器出力は最大92kW、15分の投入電力量は17kWhどまりだった。充電の機会が一度しかなかったので、充電速度が上がらなかったのがセルの温度が低かったためなのか、開始時の充電率が51%と高かったためなのかはわからずじまい。これについてはあらためてテストしてみたいところである。
充電率76%で赤城高原サービスエリアをスタート。関越トンネルを越えて新潟の湯沢で高速を降り、そこから雪を求めて苗場山の反対側、標高1000mを超える秋山郷へと向かった。平均車速は高速走行区間に比べるとずっと低かったが、日本海側は気温が2~マイナス3度と冷え込んだうえ、秋山郷エリアでは融雪による道路の冠水、シャーベット路、積雪路と走行抵抗が高いコンディションであったことも手伝って、電費は約5km/kWhと伸びなかった。走行距離200.4kmで充電率の変化は76→13%。100%換算値は318.1kmという結果となった。
◆走行性能
新潟の秘境、秋山郷のバージンスノーロードを走ってみた。AWDの制御は予想よりかなりアグレッシブだったベーシックグレードでも0-100km/h加速タイムの公称値が5秒台という俊足を特徴とするEX30。その頂点に立つAWDのツインモーターは同3.6秒と、量産車屈指の速力を持つ。過去にツインモーターと同じ69kWhバッテリーを積むRWDシングルモーターのタイムをGPSロガーで計測したことがあるが、タイムは公称値から0.1秒落ちの5.4秒だった。今回は合法的にテストできる状況になかったが、暴力的な加速GからみてAWDも公称値と同等タイムを簡単に叩き出せるのではないかと推察された。
そんなにパワーがあるのなら雪上、氷上のような低ミュー路では運転しにくいかといえば、さにあらず。電動AWD車ならではのトラクション制御はソルテラ、アリアと同様に雪上でのドライバビリティ向上に大いに寄与する精度の高さだった。傾向としてはディープスノーよりシャーベット路、氷結路を得意とするという印象だった。
総論で述べたようにテイストは生活四駆とは大きく異なり、後輪駆動テイストが明確。シャーベット路や氷結路では後輪が少しホイールスピン気味となり、テールを出すことでアンダーステアを緩和する。AWD化で得たシャシーの余裕を走りのほうに振り向けているという感じである。もちろん大人しく走る場合でもAWDの恩恵は受けられるが、腕に覚えのある人であれば攻撃的な走りも存分に楽しめよう。
スタッドレスタイヤはヨコハマ「アイスガードiG70」◆雪国での実用性
車体への着氷防止、ワイパーの利き、タイヤハウス内の雪の除去のしやすさなど、雪国での実用性については小雪がチラつく程度の天候だったため検証できなかった。新雪路を見つけて少し走ってみたかぎりでは最低地上高175mmの恩恵がそれなりにあり、少々の深さではバンパー前縁や底面を擦ったりすることはなかった。オーバーハングが大変短いため、除雪でできた盛り雪などに神経をすり減らさずにすんだのも、ウィンタードライブには向いていそうに思えたポイントだった。
なお、これは今回とは別のドライブでの検証結果だが、車体の断熱性が大変優秀なのは雪国に向きそうな特質。真冬に兵庫県北部の夜久野高原でマイナス9度の中を走行中、エアコンの風量がほとんど上がっていないにもかかわらず車内が寒くならなかった。その時はそういう巧みな空調を行っているのかと思いきや、車内の熱が外に逃げにくいようになっているということが後でわかった。マイナス4度で全電源OFFの状態で30分の急速充電を行ったところ、充電終了間際になっても車内が冷え切らずほんのり暖気が残っていたのだ。さすが高断熱住宅スウェーデンハウスの国の製品だなと思った次第だった。
車内の熱を逃がさない、外からの熱を車内に入れないという高断熱ぶりはビバーク性能にもプラス。外気温マイナス4度の箱根峠においてソルテラ、アリアと同じく室温20度、内気循環、ヒートシーターONという設定で6時間のビバークテストを行ったところ、充電率の低下幅5%、推定消費電力量はわずか3.2kWhというリザルトだった。さまざまなクルマで同様のテストを行ってきたが、この数値は現在でもブッチギリのトップである。大雪での立ち往生発生など不意の交通障害に巻き込まれても相当時間耐えられるのではないかと思われた。
◆BEV3車種ウィンターロードテストまとめ
北陸新幹線上越妙高駅に到着。走行距離337.4kmだった低温環境で航続力や充電受け入れ性が落ちるというネガティブファクターを持つBEVは北国には不向きとされる。今季にロードテストを行ったソルテラ、アリア、EX30も同じ傾向を示したが、十分な容量のバッテリーやより効率の高い空調が搭載されたことで、冬場の航続力は以前のBEVに比べて格段に伸長。雪国でもBEVのポジティブな部分を享受できる余地が高まったという感があった。
3モデルに共通していたプラス面は電動AWDの高精度なトラクション制御の恩恵で雪上、氷上、シャーベット路と、さまざまなコンディションを安定して乗り越えることができたこと、排出ガスの車内への流入を心配することなく暖房とシートヒーターを使用しつつ快適にビバークできたこと、クルマの起動後すぐに暖房やデフロスターを効かせられたことなど。
もちろん雪国で航続距離が大幅に落ちるという弱点は依然として付いて回る。雪の季節にも日常的に複数県をまたぐような移動をするユーザーには向かない。そういう場合は同じ電動AWDでもエンジンを積むシリーズハイブリッド、もしくはプラグインハイブリッドを選ぶべきだろう。が、BEVのほうも地方部における典型的なドライブパターンである地方都市間、今回の事例で言うと山形県の山形市~鶴岡市の往復のような移動をバッテリーの充電残にハラハラすることなくこなせるようになった。これは大きな進歩と言っていいだろう。
もっとも、雪国はBEVの販売台数が少ないことに起因する充電インフラ不足という問題もある。北陸は近年かなり充実してきたが、北東北の日本海側では大容量バッテリーを短時間でチャージするのに十分な能力を持つ充電器はまだまだ少ない。エリア唯一の高性能充電器にユーザーが殺到するという光景も幾度か目にした。そういう部分も含めてBEVがいろいろな課題を今後どう乗り越えていくのかということにも興味の湧く冬季テストだった。
滑りやすいアイスバーンでのコントロール性は大変良好。積極的にアンダーステアを消す制御だった■EX30の冬季のパフォーマンス採点(5つ星評価)
充電、航続力:★★
雪上走行性能:★★★★
雪国での実用性:NO DATA
ビバーク耐性:★★★★★




