多摩川スピードウェイと草創期の挑戦、日本モータースポーツ史の原点を解説

多摩川スピードウェイ跡(川崎市)
多摩川スピードウェイ跡(川崎市)全 5 枚

日本の自動車レース草創期を体系的にまとめた資料性の高い一冊が登場した。未発表写真とともに、戦前からのレースの実像を明らかにする。三樹書房が刊行した書籍『日本の自動車レース史』がそれだ。著者はトヨタ博物館元館長の杉浦孝彦氏。

【画像全5枚】

同書は、日本のモータースポーツ黎明期に焦点を当て、これまで充分に語られてこなかった戦前の自動車レースの実態を、未発表写真や報道資料とともに解説する内容となっている。

日本の自動車レースは、1922年11月12日、東京・洲崎埋立地で開催された「第1回自動車大競走」を契機に本格化したという。以降、各地で競走会が開催され、本田宗一郎や太田祐雄といった後の自動車産業を支える人物たちが活躍する舞台となった。

1936年には、アジア初の常設サーキットである多摩川スピードウェイが開設される。全長1200mのコースながら、常時レース開催が可能な環境が整い、国産小型レーサーが欧米車と競い合う時代へと進んだ。

多摩川スピードウェイ跡(川崎市)多摩川スピードウェイ跡(川崎市)

いっぽう世界に目を向けると、自動車レースは1894年にフランスで始まり、自動車の性能向上と社会的認知の拡大に大きく寄与してきた。1895年にはフランス自動車クラブ(ACF)が設立され、パリ~ボルドー間1200kmのレースなどを通じて技術革新が促進された。

日本でも1902年、上野不忍池で公開レースが行われるなど、欧米とほぼ同時期に自動車文化の萌芽が見られた。ただし当初は富裕層中心の活動にとどまり、車両も輸入車や改造車が主流だったそうだ。

その後、日本自動車競走倶楽部の設立などにより競技環境が整備され、国産車開発の基盤形成に寄与した。戦後は1950年に小型自動車競走法が成立し、オオタやトヨタ、日産などの車両が競い合うことで産業復興を後押しした。さらに1963年には、鈴鹿サーキットで第1回日本グランプリが開催され、日本のモータースポーツは新たな段階へと進む……。

同書は2017年に初版が刊行された内容を踏襲しつつ、多摩川スピードウェイ開設90周年を記念したカバーデザインに刷新した新装版だ。自動車レースが技術開発と社会普及の両面で果たしてきた役割を、日本と世界の歴史を対比しながら解説する一冊となっている。


日本の自動車レース史
多摩川スピードウェイを中心として 大正4年(1915年)- 昭和25年(1950年)
著者:杉浦孝彦(トヨタ博物館元館長)
発行:三樹書房
体裁:B5判・上製・152頁
定価:4950円(本体価格4500円+消費税)

目次
1 日本での自動車競走のはじまり 黎明期
2 日本自動車競走大会(その1)萌芽期
3 日本自動車競走大会(その2)本格始動
4 多摩川スピードウェイ
5 戦後のレース
6 発掘された写真
7 多摩川スピードウェイの想い出(寄稿)
8 今に生き残ったレーサーたち
9 年表 日本の自動車レース史・戦前編
10 レース・リザルト(戦績表)
11 多摩川スピードウェイの跡地
12 日本自動車競走倶楽部会則・競技規則他

『日本の自動車レース史』『日本の自動車レース史』

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《高木啓》

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