ドゥカティの初代モンスターこと『M900』が発表されたのは1992年。当時ネイキッドといえば国産の4気筒エンジンを搭載したマシンがメインで、その多くは普遍的なスタイルを貫き、欧米ではほとんど認知されていなかった。しかし、モンスターが世界のネイキッドの常識を変える。
モンスターは、当時の市販車レースであるワールドスーパーバイクのホモロゲーションマシンとなった851&888系のフレームに空冷のLツイン*エンジンを搭載。ドゥカティの独自性をストリートへ持ち込んだ異端児だった。(*現在はエンジンを起こして搭載するようになったためVツインと呼ぶ)
ドゥカティ 新型モンスター 試乗
いま思えばストリートファイターカテゴリーの先駆けでもあり、その後、様々なメーカーが奇抜なネイキッドをラインナップ。もちろんドゥカティもストリートファイターを新たに誕生させたが、モンスターはネイキッドやストリートファイターという枠に収まらず、そのものがアイコンとなり進化。様々な派生モデル、様々な排気量をラインアップし、世界中で新たなカスタマーを獲得。すぐにドゥカティの主力機種となっていった。
ドゥカティ ジャパン マッツ・リンドストレーム社長自ら「I M LEGEND」と謳うフルモデルチェンジした2026年モデルの第5世代のモンスターと対峙すると、一見、第4世代と大きな違いはないように見える。しかしその中身は別物だ。
V2エンジンを初めてモンスターに起用。バルブ開閉機構にバルブスプリングを採用し、ヘッド周りの大幅なコンパクト化を可能に最も大きな変更点はエンジン。ドゥカティのVツインエンジン史上最軽量となる『V2』と名付けられたこのエンジンは、ミドルクラス専用設計。バルブ開閉機構をデスモドローミックからバルブスプリングに変更するなど、様々な改良を施してエンジンのコンパクト化に成功した。絶対的なパフォーマンスよりも扱いやすさと軽さを優先し、バイク作りの根本を見直したのだ。
身長165cm、体重68kgの筆者が跨った足つき。シート高は本国仕様より40mmも低い775mmに設定。数値以上に足つきは良い車体は、第4世代から4.0kgの軽量化を果たし、コンパクト。押し引きして、跨ってみると890ccのバイクであることを忘れる。400cc…いや足つきの良さや軽さ、柔らかいサスペンションがもっと排気量の小さいバイクに感じさせてくれる。
◆V2エンジンは全ての回転が常用域、モンスターとの相性は抜群だ
PEC東京はタイトで回り込んだコーナーがたくさんあるが、自由自在にラインを選ぶことができた今回、試乗会が開催されたのは、木更津のポルシェ・エクスペリエンスセンター東京。クローズドコースではあるものの、一般的なサーキットよりはタイトなコーナーが連続し、アップ&ダウンのあるコース。天気は霧雨が降ったり止んだりの絶妙なコンディションだった。
エンジンを車体剛体の一部とする考えは、すべてのドゥカティに共通する思想。第4世代でアルミモノコックフレームに走り出した瞬間に感じるのは、V2エンジンの低回転域の扱いやすさだ。第4世代は、ドゥカティの中ではエントリーモデルとしての位置付けだったものの、他メーカーのミドルレンジと比較するとやはり低回転がギクシャクしてエンジンに難しさを感じさせる部分があった。
今まではそれを乗りこなすのがドゥカティの、そしてモンスターの宿命だったが、第5世代はその難しさを感じさせない。試しに回転を4速2,000rpmあたりまで落としてみても、何事もなくスルスルと加速していくから驚く。
ドゥカティ 新型モンスター 試乗もちろん中回転以上を使えば、Vツインエンジンらしいパルス感を伴った加速を約束。スロットル全開のまま、シフターを使ってシフトアップしていくとドゥカティらしい咆哮を轟かせながらダッシュ。ダウン側のシフターも秀逸で、旋回中にシフトダウンしても車体に大きな挙動は出ず、スムーズ。どんな時でも欲しい回転を手に入れることができる。
モードによってパワー感はもちろん、トラクションコントロールやABSの介入度が変化する。モードはウエット、アーバン、ロード、スポーツの4種類。モードによってパワー特性はもちろんトラクションコントロールやABSの介入度が変わる。スポーツは高回転でよく吹けて、ロードは扱いやすさが光るモード。不安定な路面コンディションだったが、この2モードではトラクションコントロールが大きく介入するシーンはなく、それがエンジンの扱いやすさと車体バランスの高さを証明していた。
◆あのモンスターが身近に。簡単に一体感を得られる
ドゥカティ 新型モンスター 試乗ハンドリングは軽快かつ大らか。初めてのコース、先がどちらに曲がっているかわからないシーンでも瞬時に攻略でき、思い通りのラインを描ける。曲がりたい方向に目線を向ければ、モンスターはスッとイン側に舵を切り、すぐさま旋回へと入っていく。
ライダーの意思とバイクの動きがシンクロする感覚が気持ちよく、エンジン同様にハンドリングにも難しさを感じさせない。これまでにパニガーレV2、ムルティストラーダV2など、何台ものV2エンジン搭載車に試乗してきたが、これほどバイクとの一体感を得やすいドゥカティは初めてだ。
膝の曲がりが窮屈に感じる場合は、アクセサリーのハイシートやスポーツシートへの換装がオススメだそれは、日本仕様のモンスターが第4世代と同様にショートサスペンションとローシートを採用し、シート高を775mmに設定しているからで、これが低さとコンパクトさ、さらに馴染みやすさに拍車をかけている。ちなみに本国仕様のシート高は815mmのため、そのキャラクターは別物と言っていいだろう。
筆者が初めてモンスターに出会ったのは1995年。初期型のモンスターは、文字通り怪物だった。パワフルで敏感。バイクが勝手に曲がって行こうとするし、ギャップに乗ると大きく振られ、乗りこなすことは困難だった。しかし、筆者はそこからドゥカティに没頭していった。
ドゥカティ 新型モンスター 試乗モンスターのデビューから30年以上の月日が経ち、モンスターは軽さと馴染みやすさを手に入れるため、驚くほどシンプルな車体構成になった。しかし、ライダーを高揚させるドゥカティらしさ、モンスターらしさは変わっていない。だからモンスターは、今も伝説であり続けている。
5つ星評価
パワーソース:★★★
ハンドリング:★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★
オススメ度:★★★
モーターサイクルジャーナリスト 小川 勤氏小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。




