【ボルボ EX30クロスカントリー 新型試乗】クルマの評価軸が変わった…中村孝仁

ボルボ EX30クロスカントリー
ボルボ EX30クロスカントリー全 24 枚

ここ3年、毎年ボルボ『EX30』に試乗している。デビューから毎年のように新たなモデルが登場しているのもその理由である。

【画像】ボルボ EX30クロスカントリー

しかし、試乗する理由のもう一つは、ある意味でこのクルマがコンパクトBEV市場のモデルとして、一つのベンチマークではないかと認識しているからである。

過去にも書いたが、このクルマはそのパッケージング、走行性能、内外装の造り、それにスタイリングなどで、個人的には非常に高い評価を与えているからにほかならず、何よりもBEV嫌いの筆者ですら、よろっと来るケースが多かったこともその要因である。

◆これ以上ないレベルの運動性能

ボルボ EX30クロスカントリーボルボ EX30クロスカントリー

今回試乗したのは、「クロスカントリー」と名付けられたモデルである。ボルボは以前から、車高を少しだけ上げて、オフロードにも適する地上高を持った、クロスカントリーというモデルを発売してきた。従来それはワゴンをベースとしていたのだが、今回はコンパクトSUVにその名を与えたということである。

全高は1565mm。地上高は195mmにアップされて、悪路走破性は確実に上がっている。もちろん電動四駆。それに「ウルトラツイン」の名を持つ2モーターシステムだから、パワフルである。さらに加えれば、ボトムモデルのリン酸鉄を使ったバッテリーとは異なり、こちらはNMCのバッテリーを使っているので、高い密度で航続距離も長い。

とまぁ、いいことずくめではあるのだが、お値段は試乗車で671万2750円(22万2750円のオプションを含む)と、車両本体のみでもグレード中最高値となっている。

ボルボ EX30クロスカントリーボルボ EX30クロスカントリー

走りに関しては、確かに車高が高い分重心も高く、それなりに飛ばせばロールも伴うのだろうが、およそ街中で走る限り違いを見出すことはできない。

今回は、本来このクルマがその真価を発揮するであろう、オフロードや、滑りやすい路面などには持ち込んでいないから、あくまでも日常的な運動性能の印象にとどまるが、まあ相変わらず素晴らしい。ツインモーターの性能と、ハンドリングに関しては以前にも記したが、素晴らしく切れ味の鋭い運動性能を見せてくれて、これ以上何が必要かと思うほどである。

◆尖すぎた反面…

ボルボ EX30クロスカントリーボルボ EX30クロスカントリー

実は今回、2台続けてボルボに乗せてもらった。最初がこのEX30。そして次はより上級モデルである。名前は敢えて伏せておく。

その上級モデルに装備されていたオーディオは、39万円もするバウアー&ウィルキンスの高級オーディオだ。対するEX30は標準装備のハーマン・カードン製オーディオなのだが、ダッシュ全体を使ったサウンドバーの効果なのか、素晴らしく良い音を奏でる。EX30の場合ドアにはスピーカーが装備されていないので、どこから音が出ているのか判別しがたいが、とにかくクリアで繊細な音を奏でてくれて、メカニカルノイズのないBEVとの親和性は、素晴らしく良いと感じた。

というわけで、どこをとっても言うこと無しのBEVに仕上がっているのだが、やはり尖り過ぎた側面も否定できない。それは以前からこのクルマのネガ要素として書かせていただいている、センターディスプレイにすべての情報を詰め込んだ、表示の問題である。

この点については、例えば筆者自身が高齢化して、字が読みにくいとか、ディスプレイの使い勝手が良くないといった、個人的なネガ要素なのかと思っていたのだが、どうやらそうではないようであった。

◆安全性評価で下位に転落した理由

ボルボ EX30クロスカントリーボルボ EX30クロスカントリー

アメリカのコンシューマーレポートが発表する安全性の評価(Safety Verdictという)において、常にトップクラスの常連だったボルボが、今年の評価では何故か、下位に転落している。この評価は個別の車種ではなく、ブランド全体で評価されているようだが、実はボルボが評価を落とした原因の1台がこのEX30であった。

従来、安全といえば車両個体の高い安全性で評価されていた。即ちそれは衝突時の乗員保護能力などで優れたクルマが、この安全性評価の上位にランクされてきたのだが、どうやらその評価軸が変わったらしい。

コンシューマー・レポートで自動車安全部門の副ディレクターを務めるエミリー・A・トーマス博士によれば、「安全性とは、単に衝突試験の結果だけを指すものではない」というのである。「安全な車とは、予測可能なハンドリングやブレーキ性能を備え、運転の妨げにならない操作系を持ち、衝突事故を未然に防ぐ技術を搭載し、万が一衝突した際には乗員を保護する設計がなされている車を指す」のだそうだ。ではなぜボルボが高い評価を得られなかったのか。

ボルボ EX30クロスカントリーボルボ EX30クロスカントリー

それはコンシューマーレポートで以下のように説明されている。「新型ボルボの多くは、安全性評価で『最高(Best)』の判定を得られていない。その理由は、操作系が運転の妨げになるほど複雑で、使いやすさの評価でCRの最低スコアを記録しているため」だという。

つまり、一つのディスプレイにすべてを詰め込んだEX30の操作系は、安全運転の妨げになるというのが、コンシューマーレポートの結論である。そして、ユーザービリティー即ち「使いやすさ」という点で最低評価を受けてしまったのだ。やはりこのシステムが使いにくいと思ったのは、筆者だけではないようである。

ボルボ EX30クロスカントリーボルボ EX30クロスカントリー

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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