◆熟成の400に“もうひと押し”を加えた新世代
カワサキのミドルスポーツが新たなステージへ進化した。『Z500』と『Ninja500』は、従来の『Z400』/『Ninja400』をベースに排気量を451ccまで拡大した最新モデルである。日本には初導入だが、グローバルではこちらが標準モデルとなっている。
水冷並列2気筒DOHCはストロークアップによって451ccとなり、中低速トルクを大幅に強化。ピークパワーを追い求めるのではなく、公道からスポーツライディングまで幅広く扱える実用域を磨き上げた。従来の399ccエンジンは高回転まで鋭く吹け上がる爽快さが魅力だったが、一方でコーナー立ち上がりなど、もう少しパンチが欲しいと感じる場面もあった。新型はその"あと少し"を見事に埋めてきた印象だ。
カワサキ Ninja500の451ccエンジン
フレームは高張力鋼トレリスを継承し、車体寸法やライディングポジションも基本的には400シリーズを踏襲。だからこそ、乗った瞬間から違和感がなく、排気量アップによるメリットだけを直球で味わえる。
サスペンションは正立フォークとリンク式リヤショックの構成を維持しながら、エンジン特性に合わせて最適化。アシスト&スリッパークラッチも引き続き標準装備され、ハードブレーキングからのシフトダウンでも安定を確保した。
さて、Z500とNinja500の違いだが、簡単に言うとZ500は上体が起きたポジションとワイドハンドルによって、ライダーが積極的に車体へ入力できるストリートファイター。一方のNinja500はフルカウルとやや前傾したライディングポジションによって、高速域での安定性や一体感を高めたスポーツモデルという位置付けになっている。
◆トルクアップの余裕は“速さ”以上の武器だ
カワサキ Z500今回の試乗ステージはサーキット。まずZ500でコースインすると、最初の数周で従来のZ400との違いがはっきり見えてきた。
特にコーナー立ち上がり。400では旋回スピードを維持しながら回転を合わせる必要があった場面でも、500ではアクセルを開けた瞬間からひと押し強い加速を見せる。決して爆発的ではないが、16%増したトルクはひと回り線が太く、ピリッとした感じ。最高出力(53ps/10,000rpm)もたった5psアップの違いだが、この僅かな余裕がストレートでの加速のノリとして表れている。
中速コーナーでも恩恵が大きい。ひとつ高いギヤでも失速せず、アクセルワークだけで車速をコントロールできるため、ライダーはライン取りに集中できる。結果として走り全体に余裕が生まれるのだ。吹け上がりも従来どおり軽快。高回転域までストレスなく回り切り、並列2気筒らしいレスポンスの良さもそのまま残されている。つまり400の軽快感を失うことなく、一段力強くなった印象である。
カワサキ Z500シャシーの完成度も高い。切り返しは軽く、リーン開始からフルバンクまでの動きが極めてニュートラル。最初から500cc用として、しっかり作られているのだろう。車体がライダーの入力をしなやかに受け止め、狙ったラインを自然になぞっていく。
ブレーキングでも安心感がある。フロントの沈み込みは穏やかで接地感が失われず、アシスト&スリッパークラッチの効果もあって、シフトダウンでリヤタイヤが暴れる気配もない。ブレーキをある程度奥まで残しながら、旋回へ持ち込めるスポーティな走りも可能だ。
◆攻め込むならNinja500、操る面白さならZ500
カワサキ Ninja500続いてNinja500へ。基本性能は共通だが、走りの印象は想像以上に異なる。
セパレートタイプのハンドルとフルカウルによって自然と前輪へ荷重が乗り、高速コーナーではフロントタイヤを路面へ押し付けながら曲がっていく感覚が強い。旋回中の安定感はこちらが一枚上手だ。攻め込む楽しさならNinja500、ライダー自身が積極的にマシンを操る面白さならZ500。その個性は明確に分かれている。
伝統の400シリーズで培った完成度の高いパッケージを崩すことなく、スポーツライディングの質を一段引き上げた新型500シリーズ。その進化は決して派手ではないが、走れば違いは確かな手応えとしてライダーの右手に伝わってくる。きっとストリートでも、その余裕が楽しさを引き出してくれるはず。
ビッグバイクに疲れた大人たちにもおすすめしたい一台だ。
カワサキ Ninja500(左)とZ500(右)■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★
佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。




