【スズキ クロスビー 新型試乗】独特な世界観と走りは、往年のシトロエンを思い起こさせる…中村孝仁

スズキ クロスビー ハイブリッド MZ
スズキ クロスビー ハイブリッド MZ全 31 枚

2014年に軽自動車市場に『ハスラー』を投入したスズキ。それからほぼ4年後の2017年暮れに、この『クロスビー』を発売した。だから、クロスビーはデビューからすでに、ほぼ10年近くが経過したことになる。

【詳細画像】スズキ クロスビー ハイブリッド MZ

当時から大型化したハスラーと言われていたものの、独特なボックスデザインのスタイリングは、ハスラー同様コンテンポラリーなデザインであるのか、いまだに飽きが来ない(個人的に)し、『ハマー』のパクリと言われたスタイリングにしたって、本家はとっくの昔に無くなっているのだから、本家分家の騒動もけりがついている。

まあサボっていたといえばそれまでになってしまうけれど、実はデビュー時の2018年以来、クロスビーには試乗していなかった。その間にだいぶ変わっている。

◆大きく変わったスペックとインテリア

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自分のメモリー刷新も含め、改めてその違いを記すと、まずエンジン。デビュー当初は1リットル3気筒ターボにモーターを装備したマイルドハイブリッドで、組み合わされるトランスミッションは6ATであった。これが2025年以来、1.2リットルNAの3気筒とモーター、そしてトランスミッションはCVTへと変更されている。

性能的にどう変わっているかというと、数値上は1リットル時代の99psから80psへダウン。最大トルクも150Nmから108Nmへとこちらもダウン。しかも発生回転数が1リットル時代は1700~4000rpmと幅広い回転域で発生されていたものが、1.2リットルはNAということもあってか、4500rpm時にピークがある。少なくとも机上のパフォーマンスは、かなりダウンしたことになる。ただし、モーターの方は出力は同じだがトルクは60Nmと、10Nm増えている。

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外観ではグリルをはじめとして変更が見られるが、基本骨格はほとんど変わっていないので、グリル周りを見ない限り、変化は乏しい。一方インテリアの方は大きく変わった。やはり電脳時代へのアジャストか、アナログだったメーターは、デジタルに改められた。

メーターナセル内はディスプレイ化されているから、表示も自由自在で、ステアリングスイッチを操作することで、好みというか、必要な情報を呼び出すことができるようになっている。もちろん、ダッシュボード全体のデザインも改められたので、旧型をご存じの方なら、変わった感が強い印象を持たれると思う。

◆かつてのシトロエンのような世界観

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大した距離は走れなかったものの、日常使うことを想定した、生活に溶け込んだ使い方をしてみた。我々が試乗と称して、1日でクルマを返却してしまうようなケースでは、高速を飛ばして東京から箱根あたりに持ち込み、そこで山坂を走り回ってまた高速を使って東京に戻るというスタイルが一般的。しかしこれだと、日常的なクルマの表情は見えない。

新しいクロスビーに乗って感じたことは、自分が昔乗っていた、古いシトロエンみたいだな(シトロエンGS)…ということだ。この時代のシトロエンは、非力なエンジンとそれに見合わない、比較的大柄なボディの組み合わせという構造が多かった。非力なエンジンだから、当然ながらアンダーパワーである。しかし常用域だろうが高速域だろうが、いったんそのスピードに載せて巡行すると、とても気持ちが良い。

特にシトロエンの場合はハイドロニューマチック(当時)と呼ばれた、魔法の絨毯のような快適な乗り心地(魔法の絨毯に乗ったことなどもちろんない)があるから、巡行領域の快適さは素晴らしいものがあった。クロスビーもこうした傾向がある。さすがに魔法の絨毯的乗り心地はないが、静粛性はすこぶる高い。そして何よりも巡行域での走行は、いったんそこに収まってしまうと、実に快適なのである。

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ただ、前の車がブレーキを踏んでこちらがその巡行域から外れると、その巡行域に戻すのは、特に高速域の場合は時間がかかる。そして40~60km/h付近の市街地走行モードのような場合だと、以前の6ATのようなしゃっきり感が薄れたCVTでは、間延びした加速感とともに、こちらもまどろっこしい。要するに、走りそのものはしゃきっとしたメリハリがないのである。

ただ、日常的に使うには何ら過不足なく、快適だし取り回しがいいし、とにかく静かだから、足、下駄代わりには、これほど適したモデルはない。要するにかつてのシトロエン同様、そのスタイリングまで含めて、クロスビーならではの、独特な世界観を作り上げている、ということである。

◆改善点を挙げるなら

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取り回しは良いけれど、不満がないわけではない。その一つは短いノーズと屹立(大げさだけど)したフロントウィンドーのせいか、停止線に止めると、真上にあるような信号が見えないケースが多々ある。広い交差点ならまだしも、日常的に走る片側1車線の交差点などでは、とても信号が見にくいケースがあった。

もう一つは、新しいメーターはデジタルのスピードメーターと、その周囲にタコメーターを配したデザインとなっているのだが、このタコメーターは、バーが円周上に出てくるタイプ。しかもその色が茶色(薄い)で、およそメーターに使うような色合いではなく、正直言うと見づらい。個人的にはもっと別な色を所望したいところである。

また、スズキは何故かワンタッチで3回ウィンクするウィンカーの機能を装備していない。これは他のスズキ車にも共通で、以前もメーカーのエンジニアと懇談した際に話をしたのだが、つけない理由がトヨタと同じだった。そしてトヨタは今や5回ウィンクさせる機能をつけているから、つけない理由は見当たらなくなっている。これは改善を望みたい。

それから、ブレーキのホールドスイッチも、デフォルトがオフなので、ちょっとコンビニに立ち寄って、それまでオンにしていた機能がオフになると、ブレーキを踏めば、放しても勝手に車輛が止まるものと思い込んでいると、危ない目に合う。なので、これもドライバーの操作により、自由に使えるデフォルト・オフを止めていただきたいものである。デフォルト・オフのメーカーはほかにもある。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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