【マツダスピリットレーシング ロードスター 新型試乗】526万円のロードスターは高いのか?…中村孝仁

マツダスピリットレーシング ロードスター
マツダスピリットレーシング ロードスター全 34 枚

その名を「コアモデル」という。といっても正式名称ではない。僅か200台限定生産の「12R」に対する形で、便宜上そう呼ばれるようである。

【画像】マツダスピリットレーシング ロードスター

コア(Core)とは、中核とか核とか言う意味であり、今回のスピリットレーシングロードスターのまさに核がこのクルマ、ということだろう。そもそもマツダスピリットレーシングは、マツダのモータースポーツ活動におけるサブブランド。『ロードスター』はその初の市販車ということである。

◆2リットルエンジンによる圧倒的なパワーウェイトレシオ

マツダスピリットレーシング ロードスターマツダスピリットレーシング ロードスター

従来のソフトトップロードスターと比べて一番の違いは、『ロードスターRF』と同じ2リットルエンジンを搭載したことにあるのだが、話はそれほど単純ではない。「街中でもサーキットでのスポーツ走行でも楽しく走れる」、をテーマとして開発したモデルであり、RFと比較しても、エンジンにはさらに手が入り、足回りもレースで培った技術を入れ込んでいる。

そもそも、1.5リットルのRSと比較した場合、パワーウェイトレシオがまるで違う。2リットルエンジンのパワーは184ps(RFより2ps増えた)。これに対して重量は1070kgと、1.5リットルのRSから僅か20kgの増加に留めているから、パワーウェイトレシオはRSの7.7kg/psに対し、コアの方は5.8kg/psだからその差は歴然なのだ。だから走りは全体的にいかなる領域からでも、その瞬発力の差が歴然だ。スピリットレーシングの優れた点は、僅か20kgの重量増に留めている点にあろう。

マツダスピリットレーシング ロードスターマツダスピリットレーシング ロードスター

次に、車両本体価格は490万500円だそうだが、これにマツダ・スピリットレーシング・ロードスターキットが加算されて、合計は526万5700円となる。何も知らずにこの値段を見せられた時は、ちょっと高いかな?と思ったものだが、エンジンと足回りにおよそ70万円弱(RFとの比較で)の価格アップなら、まぁ適正かな?と。これに加えて、エアロ中心のロードスターキットが36万5200円の上乗せとなっている。だから、決して高い値段だとは思わない。

◆走りの「質感」の差に驚かされる

そこへもってきていざこのクルマを走らせてみると、その性能差というか走りの質感の差に驚かされる。ビルシュタインダンパーの入った(RSもビルシュタインだが性能差は顕著に感じる)足は、さすがにRSと比べてもかなり締まった印象を与える。決して硬いとは思わない。この締まった足による効果は、ターンインでの車の挙動に顕著に表れていた。

取り立てて速い転舵を行ったわけでもないのに、ノーズはスパッとステアリングを切った方向に向きを変える。きわめてシャープだ。だから総じて、運動性能が一段と磨きのかかった印象を与える。

マツダスピリットレーシング ロードスターマツダスピリットレーシング ロードスター

大して回しもせず(精々3000rpm程度でシフトアップ)に加速していっても、1.5リットル車に対して、2割ぐらい速い印象を与える加速力を持つ。ただ、総じてトルク感は低く、ずぼら運転には不向きな印象である。2リットルになったのだから、1.5リットルよりもはるかにずぼら運転ができると思い込んでいたが、そうではない。

サウンド自体は、フジツボ製マフラーが入っているわけではないので、従来のモデルと変わらない。

驚いたことは、比較的長めの同じ曲率が続くようなコーナリングでクセルを踏み増していくと、通常ならばリアがアウト側に振られていく印象を受けるものだが、このクルマの場合、アウト側の前後輪で踏ん張っている印象で、抜群の安定感を示したことである。このあたりの挙動は、やはりレースによって培われた成果なのかな?と感じる。だから恐らくではあるが(サーキットを走ったわけではないので)、限界領域は1.5リットルよりも格段に高いのではないかと思えた。

◆526万5700円は高いのか?

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上質感という点では、赤いパイピングの入ったレカロ製セミバケットシートが装備される。また、ダッシュやドアパネルにはアルカンターラのバックスキン調の素材を使っている点などが、主たる相違点。まあ、レカロはRSにも装備されるし、レイズの鍛造アルミやブレンボのブレーキなども、RSにオプション設定されているから、チョイスができるといえばできるのだが、スピリットレーシングの場合、ホイール/タイヤは17インチとなるのが決定的な差である。

エンジンルームを覗いても、取り立てて変わった点は見受けられない。ストラットタワーバーの入れ方もRSと同じである。もちろん外観はエアロが装備されて、より精悍であるし、高速になれば、それらは真価を発揮するのかもしれないが、日常的にはドレスアップ的な効果の方が大きい。

では、526万5700円が高いのか?という問題だが、この走りを味わってしまうと、個人的には高いとは思わない。乗り心地も含め(個人的には快適重視のくせに)、十分に許容範囲である。つまり、快適さ重視を走りの愉しさが上回ったということだろう。まさに価値ある526万円である。

マツダスピリットレーシング ロードスターマツダスピリットレーシング ロードスター

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。  

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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