やはりドイツの自動車ブランドは、性急に電動化に走り過ぎたきらいがある。アウディは、車名を電動車と内燃車で分けて付けるとしてきたが、その方策を2025年に改めた。
アウディによれば、奇数と偶数でそれを内燃車もしくは電動車に振り分ける、というルールを一度は作ったものの、昨年再びアルファベットと数字で、その車格を表す方式に改めた。新しい『A6』から適用されたものだが、割を食ったのは『A5』だ。
アウディ A5 TDI クワトロ
元々のA5は、『A4』の、よりパーソナライズされた、例えばクーペやカブリオレに与えられた車名であった。ところが奇数、偶数のルール変更によって、かつてのコンパクトセダン、A4の車名を引き継ぐことになった。つまり、現行のA5は、かつてのA4である。
昨年モデルチェンジされて(日本市場)現行モデルになったものだが、その際にクーペやカブリオレなどはフェードアウト(また出て来るかもしれないが)して、今はセダン(クーペ風)とアバントの名を持つワゴンの2車系に絞られた。だから、A5にはICE仕様もあれば…と言いたいところだが、今はすべて、ベースはMHEV仕様となり、加えてPHEVも存在する。だから、変更前のルールを適用しても、一応電動車ではある。
◆4気筒ディーゼルの静粛性としては満点
アウディ A5 TDI クワトロ今回試乗したのはTDI、即ちターボディーゼルのMHEV仕様である。人間の思い込みは凄まじいものがあって、クルマを借り出す時に、自分はガソリン車を借りたつもりでいた(自分の間違いなのだが)。しかし乗り出してみると、少しうるさい。以前のTSFIはこんなにやかましく無かったのになぁ…、と思いつつ自宅まで戻った。ディーゼルを疑うことは微塵もなかった。それが帰宅して車載の仕様書を見ると「TDI?」と、ここでようやく、実はディーゼルであったことに気づくという体たらく。でも、裏を返せばそれだけ、このディーゼルが静かだという証左でもあった。いやはや…。
それで、改めてディーゼルであると頭に叩き込んで試乗してみると、なるほど、確かにわずかながらディーゼルノイズが届く。しかし、その程度である。メルセデスの直6ディーゼル並みとは言えないが、4気筒としてはこと静粛性に関して満点をつけてもよい。
組み合わされているトランスミッションは、7速のSトロニックと呼ばれる、VWグループお得意のデュアルクラッチ電子制御トランスミッションなのだが、今やステップATとその違いを見出すことは難しい。発進も変速も、そして減速時も、それがデュアルクラッチであることに気づくことはない。
◆肥大化するクルマの中でも「ちょうどよい」サイズ
アウディ A5 TDI クワトロ比較的最近A6を試乗した。まあ、それほど細い道を走ったわけではないが、そのサイズは少々気になるような状況もあった。その点A5のサイズ感はとても手頃というか、まさに「ちょうどよい」という言葉が適当だと思う。全長4835×全幅1860×全高1435mmというディメンションは、拡大する車両寸法の中ではうまく収めている方で、特に1860mmという全幅は、極めて適切である。それでいてクーペ風のなだらかなルーフを持っていても、後席のヘッドクリアランスならびに前席とのニールームも、十分に確保されている。
前述しているようにディーゼルだが、48Vのマイルドハイブリッド仕様である。だから、発進はするすると電気。これがディーゼル特有の振動や騒音をかき消してくれている要因だろう。因みにTDI用のMHEVは、MHEVプラスと呼ばれ、MHEVながら状況に応じて電動走行を可能にしている。
アウディ A5 TDI クワトロ車内の静粛性が高く、走行中気になるのは路面からの騒音なのだが、エンジン、トランスミッションなどからのメカニカルノイズは、常用スピードに達するとほとんど聞こえず、果たしていつ電動走行したのかはわからなかった。
プラットフォームは新しく開発されたPPCと呼ばれるもの。内燃機用に開発されたものだが、BEVが遅滞している現状では、このプラットフォームが主流になると思われる。今回は総計450kmほどを走り、その多くは高速の移動である。よってACCを多用したのだが、アウディのACC操作系は、ステアリングではなくステアリングポスト左側のコラムに存在し、場合によってステアリングの陰に隠れるケースが多く、正直言えば使いづらい。
◆オプション込みでおよそ1000万円…
車両本体価格は716万円。しかし試乗車はこれに249万円のオプションが装備されるので、限りなく1000万円に近付き、乗り出しは当然1000万円を超える。本当に車が高くなったことを実感する。というか、自分のインカムが上がっていないことを実感するわけである。
アウディ A5 TDI クワトロ■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。




