欧州連合(EU)が、EVなどの戦略産業で欧州域内の生産を優遇する新たな産業政策を進めている。
欧州委員会が2026年3月に提案した「Industrial Accelerator Act(産業加速法、IAA)」で、公共調達や購入補助など公的資金を使う場合に「Made in EU」の要件を導入する。欧州議会とEU理事会が法案を審議しており、自動車業界では部品やバッテリーをどこまでEU域内で調達できるかが焦点となっている。
◆自動車は「加速」戦略分野のひとつ
欧州委員会は3月4日、IAAを提案した。鉄鋼、セメント、アルミニウム、自動車、ネットゼロ技術などを戦略分野と位置付け、EU製や低炭素製品の需要を拡大する。公共調達や公的支援制度を活用し、欧州域内での生産能力を高める狙いだ。
●EU製造業の競争力低下
背景にはEU製造業の競争力低下がある。EU理事会の資料によると、EU製造業が域内GDPに占める割合は2000年の17.4%から2024年には14.3%まで低下した。EUはIAAなどを通じ、2035年までに製造業の割合を20%以上へ引き上げることをめざす。
●バッテリーは半数が中国製
特に課題となっているのがバッテリーだ。EU理事会によると、EUはバッテリー需要のおよそ50%を中国からの輸入に依存している。太陽光発電モジュール・セルでは中国への依存度が94%に達するそうだ。

◆公的資金を使う市場が対象
IAAは輸入車そのものを禁止する制度ではない。公的資金を使う市場を通じ、EU域内で生産された製品への需要を作ることが柱だ。
●バッテリーでは段階的な導入を想定する
自動車では、BEV(バッテリーEV)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)などが対象。欧州委員会案は、公共調達や購入・利用に対する公的支援について、車両や主要部品にEU域内での生産要件を設ける。
バッテリーでは段階的な域内生産要件を想定する。欧州自動車工業会(ACEA)によると、法施行から6か月後には、バッテリーセルを含む3つの構成部品をEU原産とする要件を導入する。施行3年後には5つへ増やし、セルに加えてバッテリーマネジメントシステム(BMS)と正極活物質(CAM)をEU原産とすることが求められる。
●最低70%の域内調達比率を求める部品工業会
欧州自動車部品工業会(CLEPA)は、欧州製車両を定義する際に最低70%の域内調達比率を維持するよう求めている。購入支援など各種制度の対象車についても、少なくとも70%のEU域内比率と連動させることを提案する。




