夏を走り切った愛車は各部に疲れがたまっている。そのひとつがバッテリーだ。高温はバッテリーの劣化を進める要因になるため、暑さが落ち着いた今こそ状態をチェックしておきたい。
◆夏を越えたバッテリーは要点検 高温による劣化を見逃さない
クルマの消耗パーツの中でも、思わぬタイミングでトラブルが起こりやすいのがバッテリーだ。厄介なのはタイヤやワイパーのように摩耗や傷みを目視しにくいこと。一般ユーザーには性能低下がわかりにくく、出先で突然エンジンが始動できなくなることもある。
実際、JAFのロードサービスでもバッテリー上がりは主要な出動理由となっている。特に夏は高温によってバッテリー内部の化学反応が活発になり、自己放電や劣化が進みやすい。一方で冬は低温によって性能が低下するため、夏に受けたダメージが寒くなってからバッテリー上がりとして表面化するケースも考えられる。
近年のクルマはスターターや充電制御などの性能が向上していることもあり、以前のように「セルモーターの回転が明らかに遅い」「ライトが目に見えて暗くなった」といったわかりやすい兆候が出ないまま性能低下が進むこともある。だからこそトラブルが起きてから対処するのではなく、定期的な点検とメンテナンスが重要になる。
◆補充電で充電不足をリカバリー ちょい乗りが多いクルマほど要注意
バッテリーのコンディションを整える基本的な方法が「補充電」だ。クルマのバッテリーは走行中にオルタネーターなどから充電されるため、普通に乗っていれば常に十分な電力が蓄えられていると思いがち。しかし実際には使い方によって充電不足になることがある。
特に注意したいのが近距離ばかりを走る「ちょい乗り」だ。エンジン始動時には大きな電力を消費するが、走行時間が短ければ消費した分を十分に充電できない場合がある。さらにドラレコ、スマートフォンの充電、オーディオなど電装品を多く使用するクルマや、週末しか乗らないクルマも充電不足になりやすい。
そんなときに役立つのがバッテリーチャージャーを使った補充電だ。家庭用100V電源に接続するタイプが一般的で、対応する充電器を使えばバッテリーを適切な充電状態まで戻すことができる。
ただし充電器なら何でも使えるわけではない。一般的な鉛バッテリーのほか、アイドリングストップ車用やAGMなどバッテリーには複数の種類があるため、愛車に搭載されているバッテリーに対応した製品を選ぶことが重要だ。充電方法や端子の接続方法についても車両と充電器の取扱説明書を確認したい。
補充電のメリットは充電不足によるバッテリー上がりを防ぎやすくなること。一方で充電器を用意する費用がかかり、自宅に100V電源や充電する場所が必要になるのはデメリットだ。それでも短距離走行が多い人やクルマに乗る頻度が低い人なら、一度用意すれば長期間使えるメンテナンス用品として役立つだろう。
◆サルフェーション除去は万能ではない バッテリー充電器の機能と限界
補充電と合わせて耳にすることが多いのが「サルフェーション除去」や「デサルフェーション」と呼ばれる機能だ。
鉛バッテリーでは放電時に極板へ硫酸鉛が生成される。通常は充電によって元の状態に戻るが、充電不足のまま長期間使用したり放置したりすると硫酸鉛が結晶化し、充放電性能を低下させる原因になることがある。これがサルフェーションだ。
バッテリーチャージャーの中にはパルス充電などを用いたメンテナンスモードを備え、サルフェーションによって低下した性能の改善を狙う製品もある。充電不足になりがちなバッテリーを維持する機能として注目されるが、ここで注意したいのは「古いバッテリーが新品同様に復活する機能」ではないことだ。
極板の劣化や内部故障が進んでいるバッテリーは充電しても本来の性能まで戻らない。何度もバッテリー上がりを繰り返す、充電してもすぐに電圧が低下する、ケースに膨らみや液漏れなどの異常があるといった場合は、メンテナンスで延命するより交換を優先したい。
また市販されているバッテリー復活剤などを利用する方法もあるが、使用できるのは液口栓を開けられるタイプなどに限られ、すべてのバッテリーに使用できるわけではない。密閉型など適用できない製品もあるため、バッテリーとケミカル双方の説明書を確認する必要がある。基本は適切な補充電と状態診断を行い、そのうえで交換時期を判断するのが確実だ。
◆バッテリー寿命は2~3年がひとつの目安 CCA測定で状態を確認
一般的なエンジン車用バッテリーでは2~3年が交換を検討するひとつの目安とされている。ただし実際の寿命は走行頻度、走行距離、気温、電装品の使用状況、保管環境などによって大きく変わるため、年数だけで判断することはできない。
そこで利用したいのがカー用品店や整備工場などで行われているバッテリー診断だ。電圧だけでなくCCAなど始動性能に関わる数値を測定できるテスターを使えば、充電不足なのかバッテリー自体の劣化が進んでいるのかを判断する材料になる。
例えば充電量が不足しているだけなら補充電によって改善できる可能性がある。一方、十分に充電しても性能が回復せず診断結果も悪い場合は、サルフェーション除去などで延命を狙うより新品への交換を考えた方が安心だ。
つまりバッテリーメンテナンスでは「とりあえず交換」と「何とか復活させる」の二択ではない。まず現在の状態を確認し、充電不足なら補充電、劣化が進んでいるなら交換と使い分けることが大切だ。
◆秋のバッテリー点検で冬の突然死を防ぐ
ドライブ先でバッテリートラブルが起きればエンジンを始動できず、その後のスケジュールが大きく崩れてしまう。特に気温が下がる冬はバッテリー性能が低下しやすいため、本格的な寒さを迎える前の秋は状態を確認する絶好のタイミングだ。
夏の高温を乗り切ったバッテリーを点検し、必要なら補充電を実施する。使用年数が長い場合や性能低下が確認された場合は交換も検討する。この基本的なメンテナンスだけでも突然のバッテリー上がりを防ぐ可能性は高められる。
まだ十分に性能を保っているバッテリーまで早々に交換する必要はない。適切な点検と補充電で使えるものは最後まで使い、寿命が近づいたら確実に交換する。トラブル防止だけでなく経済性や資源の有効利用という点でも、状態に応じたバッテリーメンテナンスを心がけたい。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後、出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務し、独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がける。カーオーディオ雑誌の編集長も請け負い、現在もカーオーディオをはじめとしたライティングを中心に活動中。




