【IMTS試乗レポート Vol. 3】IMTSのメカニズム大解剖

自動車 テクノロジー ITS
IMTSとは「無人運転で無連結・隊列走行」するバス…というか、従来のバスと鉄道を融合させた
ような存在なのだと、なんとなく理解していただけたと思う。

では、そのバスが何で「無人運転で無連結・隊列走行」できんだろ? いつも乗っている身近なバスとの違いは、どこらへんにるのだろか。じっくりと、その秘密を観察していきたい。



くちばしが愛嬌ある、IMTS車両だが実はハイテク・デバイスの塊だ。頭部(?)から生えるツノは車々間通信用のアンテナ。これは車両同士が、位置・速度・加速度等の情報をやりとりするためのもの。くちばしのまんなかやや右に見えるのがレーザー・レーダー(車間距離レーダー)だ。 このふたつのセンサーからえられた情報により、車間距離制御と自動ブレーキ制御をおこなう。
まるで鳥のクチバシを思わせるバンパー部を取り外すと、中央部にレーザーレーダーと、ミリ波レーダーの端末があらわれる。

レーザーレーダー端末は、同社の乗用車“プログレ”にオプションとして用意されている“レーダー・クルーズ・コントロール”と、だいたい同じものと考えていい。

センサーによって収集されたデータは、IMTSにおいても前車との車間距離制御ならびに、自動ブレーキ制御に使われる。センサーにより追突防止と車間距離維持(=自動追従)を実現しているのだ。



フロントバンパー部に収まる車間距離センサー。むかって左からミリ波レーダーとレーザー・レーダー端末。今回の実験では信頼性の高いレーザーのほうを利用しているという。

今回のプロトタイプでは、レーザーのほか赤外線カメラ(写真・運転席隣)も、車間距離センサーとして使われている。

今回の実験ではレーザーのみが使われたということだが、将来的にはミリ波レーダーに取ってかわられるだろう。というのも、ミリ波は樹脂を透過する特性を持ち、すなわち車両デザインに自由を与えるからだ。

またこの傾向はIMTSのみならず、市販車の開発現場にもみられる傾向である。



IMTS専用道路には、磁気レーンマーカー1mごとに埋設され、車線保持誘導している。このほか、ループアンテナも埋設されており、こちらは「閉塞&信号装置」により自動ブレーキ制御の命令を車両に送る。

磁気レーンマーカーのアップ。表面にNと刻まれているのは磁石のN極のこと。例えば支線にはS極を埋設し経路誘導するのである。

以上に挙げてきた、車々間通信、車間距離センサー、磁気レーンセンサーに加え、路車通信(管制室の制御コンピュータと通信し、“駅”での停車・発車を制御する)といった個々の電子デバイスによってえられたデータが、車載の車両制御コンピュータに集められ、アクセル制御モータ・ブレーキ制御電磁弁・操舵制御モータをコントロールすることで、IMTSの「無人運転で無連結・隊列走行」が実現しているというわけ。


IMTSの安全運行を支える官制室。運行の様子を常時監視している。
IMTSとは車両や専用道路規格のみならず、このような管制装置を含めたシステム全体を総称するものであると覚えておきたい。


《小谷洋之》

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