スクーターに求めるのは日常か、非日常か? “個性つよつよ”な2台、ヤマハ『NMAX155』とホンダ『ADV160』を徹底比較!

ヤマハ NMAX155 & ホンダADV160
ヤマハ NMAX155 & ホンダADV160全 44 枚

上質さとスポーツ性を併せ持つヤマハ『NMAX155』、そしてギア感と遊び心を備えるホンダ『ADV160』に試乗。どちらのモデルもなにかと便利に使える最新の軽2輪スクーターだが、それぞれどんな個性を持っているのか。

【比較画像】ヤマハ『NMAX155』とホンダ『ADV160』

街中をスイスイと駆け抜けることができ、いざとなれば高速道路などの自動車専用道路にも乗り入れることができる存在。それが軽2輪スクーターの便利なところで、日々の通勤や仕事だけでなく、週末のツーリングにも活用している人は案外多い。

そこで今回は、洗練されたデザインが持ち味の「NMAX155」と、アウトドアイメージが強い「ADV160」を比較し、その違いを体感してみた。スペック上の主な差異は、下記の通りとなる。

ヤマハ NMAX155ヤマハ NMAX155
ホンダ ADV160ホンダ ADV160

●NMAX155/ADV160

・車重:135kg/136kg
・軸間距離:1340mm/1325mm
・シート高:770mm/780mm
・フロントタイヤ:110/70-13/110/80-14
・最高出力:15ps/8000rpm/16ps/8500rpm
・最大トルク:1.4kgf・m/6500rpm/1.5kgf・m/6500rpm
・シート下容量:約23リットル/29リットル
・USBソケット:タイプC/タイプA
・燃料タンク容量:7.1リットル/8.1リットル
・燃費(WMTCモード):46.4km/リットル/42.5km/リットル
・価格:45万9800円/49万5000円

◆華やかさか、堅実な実用か

ヤマハ NMAX155ヤマハ NMAX155

シートにまたがってメインスイッチをオンにした時(両車ともスマートキー)、華やかさを味わえるのは「NMAX155」だ。メーターはカラーのTFTディスプレイで、スマートフォンとのコネクティビティも充実。それによって得られる各種通知や音楽、ナビなどの情報を画面に反映することができるため、利便性と同時にエンターテイメント性も満たしてくれる。

「ADV160」は、そうしたおもてなし機能よりも、走りそのものに注力。メーターには小ぶりのLCDを備え、その先に高さ調整が可能なウインドスクリーンを、また手前にはテーパーハンドルを採用。タフさに重きを置いた装備で固められている。

ホンダ ADV160ホンダ ADV160

シート高は「NMAX155」が10mm低い数値ながら、座面前端がかなり絞り込まれ、サイド部分の傾斜が大きい「ADV160」の方が足の上げ下げがしやすく、足つきもわずかにいい。

未舗装路に踏み入れ、車体が振られるような場面を想定した場合、パッと足を出しやすく仕様と言え、車両のキャラクターに見合ったもの。対して座面が広く、お尻のホールド感に優れる「NMAX155」のシートは、長距離・長時間の走行をサポートしてくれる。

◆走りの新鮮さはNMAX、“緩い”ADVもクロスオーバーならでは

ヤマハ NMAX155ヤマハ NMAX155

エンジンとその制御に関しては、「NMAX155」に明らかな新鮮さがある。SとTの2パターンの出力特性を選べる走行モードに加え、任意のタイミングで最大3段階のシフトダウンが可能な「YECVT」を備えているからだ。

通常のCVTでスロットルを大きく開けると、エンジン回転数の上昇と車速の伸びがかみ合うまでに一定のタイムラグというか、滑り感がある。その点、YECVTならスロットルの急開で即座にキックダウンできる他、SHIFTボタンを押すことでそのタイミングを自身で決められるなど、より積極的にエンジンへ介在できるところが特徴だ。

ホンダ ADV160ホンダ ADV160

「ADV160」にこうした自由度はなく、制御も操作もシンプルに仕立てられている。もっとも、それは物足りなさを意味するものではない。中間加速のダイナミックは「NMAX155」にかなわないが、スロットルレスポンスのリニアさは、このクラスのスクーターの中にあって、及第点以上のレベルに到達している。

ハンドリングは優劣というよりも、どちらが好みかによる。車体剛性は「NMAX155」が勝り、バンクさせる時の俊敏性や切り返す時のきびきび感は、スポーツバイク的だ。旋回中の安定性やタイヤの路面追従性も高く、車体がコンパクトに感じられるような一体感が好ましい。

ホンダ ADV160ホンダ ADV160

対する「ADV160」は、いい意味で緩い。要因の多くは、「NMAX155」よりもワンサイズ大きい14インチホイールと、そこに組み合わせられる80扁平のタイヤで、やや大げさに言えば、「NMAX155」ならスパッと倒れ込む場面でも、「ADV160」はフワリとリーン。同じ条件で比較するとハンドリングはおおらかで、タイヤのパターンも含めて、未舗装路も見越した味つけになっている。

◆日常をとるか、非日常をとるか

さて、スクーターという性質上、日常使いで気になる収納力はどうか。ここは一長一短がある。まず、メインとなるシート下のスペースは、「ADV160」が使いやすい。「NMAX155」の容量が約23リットルなのに対し、こちらは29リットルを確保。シートを開けた時の開口角度の大きさ、収納部の前後長も上回り、使い勝手がいい。

ヤマハ NMAX155ヤマハ NMAX155ホンダ ADV160ホンダ ADV160

ただし、最も多用するであろう、ヘルメットの収納は、どっちもどっちといったところ。いずれのウェブサイトにもヘルメットを収納しているカットが掲載されているが(形状や大きさによって収納できない可能性があることは、注釈できちんと示されている)、筆者所有のジェットタイプだと、前後上下の向きがどうあれ、シートを閉じることができず、ヘルメットホルダーを使用せざるを得なかった。

一方、ひざ前に備わるフロントボックスは、「NMAX155」が便利だ。右側にフタ付きのボックス、そして左側にはフタなしのボックスの2か所が用意されている。まだまだ暑さの残る中での試乗だったが、左側にはペットボトル(500ml)を放り込んでおくことができ、しかもすぐに取り出せるため、信号待ちなどでその恩恵を受けることができた。

ヤマハ NMAX155ヤマハ NMAX155ホンダ ADV160ホンダ ADV160

「ADV160」にも、フタ付きのボックスがひとつ備わっているが、中の形状やUSBポートの大きさが影響し、容量自体は2リットルありながらもペットボトルを入れることができなかった。もちろん、収納物の大きさや目的は様々なので、ペットボトルだけで判断できるものではないが、不利は否めない。

日常的な面で、もうひとつ。燃費と燃料タンクの関係を見てみると、燃費は「NMAX155」の方が、3.9km/リットル上回る反面、容量が1リットル少ない。計算上の航続距離は、「NMAX155」が329.4km、「ADV160」が344.2kmとなり、日々の燃費か、遠出の時の航続距離に備えるかは使い方による。

これらのことから分かるのは、「NMAX155」は平日・街中において機動力を発揮。「ADV160」は休日・郊外におけるレジャー寄りに仕立てられているということだ。その意味で、それぞれのモデルのコンセプトや成り立ち、機能に対して忠実に作り込まれているのは間違いない。ユーザーがどんな機能を求め、どんなシーンをイメージしているかによって、モデル選びの答えは、おのずと決まってくる。

伊丹孝裕氏とヤマハ NMAX155 & ホンダADV160伊丹孝裕氏とヤマハ NMAX155 & ホンダADV160

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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