S 東洋経済の11月13日号は「自動車保険全面戦争、どうなるなたの補償とサービス」と題した特集を組んでますね。
M ソニー損保がリスク細分型自動車保険に参入したことを話のきっかけに、国内損保会社が続々とリスク細分型保険に参入し始めたり、業界再編が起きている、という損保会社のサバイバル戦の話題を取り上げているね。これまではリスク細分型というと外資の専門という感じだったけれど、生保分野で知られているソニーという日本のブランドが、先陣を切ってリスク細分型を始めて、しかも販売はインターネットと電話の通販だけという、日本企業としては斬新なやり方をした。たしかに、そうとうインパクトはある。
T それを追う形で日本の大手損保トップ3も続々とリスク細分型に参入していると。それにしてもソニーという会社はやっぱり目ざといというか。時代を見ている。
S この特集では、具体的に自分にはどこのどういう保険がふさわしいか、というガイドもいちおうやっているけど、ほとんど役に立たないね(笑)。
M そのへんは経済誌だからしょうがないでしょう。グローバルな話題は得意だけど、そういうところは弱い。
T 「どの保険会社がいいか」とか「実際に事故の対応はどうだったか」というような記事は、むしろ自動車雑誌がやるべきですね。
Mでも、今の自動車雑誌って「ハンドリングがどうだ」みたいなハードの記事ばかりでしょ。一般の人の知りたいこととずれていると思うんだ。いまは業界再編がどうなるか、とか、代替燃料がどうなるか、インターネットでの自動車販売やリスク細分型自動車保険はほんとにいいのか、といったような、ソフトにまつわる部分がいちばんホットな話題でしょ。なのに、クルマ雑誌そのへんをしっかりフォローできていない、つかめる読者をとりこぼしているよ。
F でも、クルマ雑誌の読者に、そういうソフトの問題に興味がある人がどのくらいいるかな。だからクルマ雑誌はあまり扱わないんじゃないの。
M というより、編集者に知識がないからできないのかも。
T 今までの日本は高度成長で、クルマを出せば売れてて、雑誌も新車を追いかけていれば売れてた。でも今は景気も悪くて、クルマもコンセプトとかインターネットでの販売とか、ソフトで売る時代になっている。クルマ雑誌は、そういう時代の流れについていけてないんじゃないかな。それが部数にも出ている。
M だからむしろ僕は、ソフト問題をよく取り上げている経済誌のスタッフが作ったクルマ特集が読みごたえある。週刊東洋経済はこのあいだもクルマ業界再編の特集をやっていたわけだし。
T 自動車がエコノミックでグローバルなものになってきたから、いまは一種類の媒体だけではカバーできない時代なんですね。ただ、クルマって昔は好きな人だけが乗っていたけど、いまは誰でも運転するでしょ。環境や保険は避けて通れない問題だから、クルマ雑誌ももっと取り上げるべきだと思いますね。
F でも、東洋経済の特集は、無保険車の問題にはふれてないね。リスク細分型保険て、結局優良ドライバーを集めることになるから、事故を起こす率の高い若者やスポーツカーの料率が高くなる。イギリスやアメリカだと、それで保険料が払えなくて、無保険車が増えていて、社会問題になってるでしょ。日本もそうなるのは時間の問題だよ。
M いや、日本の場合はまだ、ようやくリスク細分化保険が出始めたくらいの段階だから、無保険問題は十年後の話でしょう。
S いずれにせよ、クルマ雑誌にももう少し経済問題とか、ソフト面の記事を充実して、ソニーじゃないけれど、時代にフィットしてほしいものですね。
座談会メンバー
S:陶山 拓(まとめ)
M:三浦和也(auto-ASCII24)
T:高木 啓(auto-ASCII24)
F:藤田耕治(auto-ASCII24)