通信3社合併でトヨタ奥田会長・京セラ稲盛会長に温度差、トヨタ痛しかゆしの合意か

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「情報通信と自動車産業を結び、相乗効果を図る」——トヨタ会長の奥田碩氏は、KDDとIDO、DDIの合併発表記者会見でそう強調した。確かにトヨタにとってはその通りだったが、合併交渉は京セラ会長の稲盛和夫氏の強烈なラブコールと、NTTという巨人を前に“観念した”という側面があったのも事実。情報ネットワーク技術とクルマの結合をにらみ、通信業界で異業種参入組としては一人気を吐くトヨタ。次世代携帯電話をめぐる争いに滑り込みセーフで参入し、NTTをどこまで追撃できるか注目される。

奥田氏は記者会見で、「トヨタは情報通信産業は成長産業だと考え、本業のクルマとネットワークの結合が相乗効果を生むものとして力を注いできた」とトヨタとしての通信業界に臨む姿勢をはっきりさせた。その上で「国内通信市場の健全な発展には、NTTへの対抗勢力が必要だ。国際通信や移動体通信を全国でシームレスに展開できる通信会社は、トヨタの情報事業にとって好都合。モバイルとIP(インターネットプロトコル)を重点にした総合通信会社の誕生に期待したい」と語った。

奥田氏はトヨタにとってのメリットを強調したが、実は合併は思わぬ難産の結果。合併交渉が本格化したのは今年夏ごろで、“cdmaOne”の販売展開でパートナー関係を結んでいたDDIとIDOの間でまず交渉が始まった。

合併に向かわざるを得ない事情があった。通信各社は、2001年から商用化が始まる次世代携帯電話・IMT-2000への対応を迫られていた。IMT-2000では従来の携帯電話とは比べはるかに高速なデータ通信速度を持ち、クルマを始めとするモバイルによるインターネットを実現する最重要インフラだ。しかし全体の投資額は2兆円と膨大。参入には強力な経営基盤が必要になる。

トップを独走するNTTドコモは早々と計画を発表、日本テレコムは英ブリティッシュテレコムとの資本提携して参入を表明し、2グループが先行した。郵政省が認める免許枠は3。免許申請は2000年3月。残り1つに食い込んみ勝利を収めるためにも、DDIとIDOの合併はどうしても必要だった。

ところが突然、合併交渉はぱったりと止んでしまった。DDIとトヨタの間に確執が生じたのが原因とされている。この事態に、「このままでは来年3月に間に合わない」と危惧した稲盛氏が11月中ごろから、奥田氏と数回にわたって会談し、合併合意を要請。単独での事業展開が難しいことを理解していたトヨタも稲盛氏の熱意に根負けした形で、ぎりぎりセーフの合意に至ったようだ。

そのためもあってか、記者会見では稲盛氏と対照的に、奥田氏はいたって冷静な様子。記者団から「トヨタがイニシアチブをとる通信会社がなくなる。これは通信事業からの後退と受け止めていいのか」との質問に、奥田氏は「まったく違う。第三者割当増資を引き受けるし、ITS関連もあって情報通信はますます重要になる」と受け流した。会見終了後も記者団に囲まれ質問に答えた稲盛氏に対し、奥田氏は立ち止まることもなく早々に会場を後をするなど、合併に関し若干の温度差も感じられた。

とはいえ、情報通信でもトッププレーヤーを目指し、その目論見が外れたトヨタとしては、長期的に見て合併にメリットがあるのも事実。すでに市場が成熟している自動車産業を、確実に伸び続けるインターネットが結び付けばまたとない刺激となる。cdmaOneが大ヒットを記録したように、優れたモノを送り出せればNTTの独占を崩すことも夢ではないはずだ。織機メーカーから世界有数の自動車メーカーに変わり身を遂げたトヨタは、今また情報通信分野の発展に合わせ、新分野でのトップをうかがっている。

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