運輸省の現役課長が「現代」に署名の上で愛知万博の現行案に反対する論文を掲載したことが霞ヶ関で話題になっている。森田運輸相は、この件で平沼通産相に「おわび」するなど、事態の沈静化を図っているが、当の課長には注意だけに収めている。
論文を掲載したのは、運輸省の現役官僚で、名古屋市出身の赤井祐司・運輸政策局地域計画課長。現行の愛知万博が環境や交通アクセスの面で問題があるとしてこれに反対、名古屋市での開催を提言している。
この論文について、森田運輸相は閣議後の記者会見で「論文は課長の個人的な見解だが、ご迷惑をおかけした」と、愛知万博を振興している通産省の平沼通産相におわびしたことを明らかにした。しかし、赤井課長についての処分はなされず、運輸政策局長が注意したにとどめた。
「個人的とはいえ、大臣が陳謝するほどの案件なのに、課長に対する処分がなぜできないのか」というと、実は赤井課長は建設省の官僚で、今は運輸省には出向しているからに他ならない。建設省は運輸省と来年1月に統合され国土交通省となるが「こんな事で、しこりを残したくない」との考えが働いたようだ。建設省と運輸省の力関係が現れた格好となった。