S 3シリーズはわかりやすい。
F プロポーションからして古典的だね。直6縦置きのロングノーズという。最近フェイスリフトされたんだけど、見た目の印象はフェイスリフト以前とほとんどかわらない。
KS アシを前に投げ出して深いスカットルに収まるという、古きよきスポーティなドライビングポジションですね。僕は好きですが。
F いかにも低重心こそ命という感じ。
KS やっぱりエンジンはいいですねえ。内燃機関という感じで、すごく力というかトルクがある。ATのツキもいいから、ついつい踏みたくなるんですよ。で、踏むとじつにいい感じにふけあがる。ただ乗り心地は、悪いわけじゃないけど昔ながらのスポーツカー的ですね。ダンピングが強くて、悪路でわりと上下にゆすられる。
S E30(先々代3シリーズ)とかE36(先代)のMTモデルみたいなヒラヒラ感はもはやないね。tiシリーズが受け継いでいるというべきか。
F BMWというクルマに乗ると、圧倒的にエンジンの印象が強いね。とくに今回の試乗のような環境では。そう考えると、E30のころと比べると、たしかにいまのエンジンはアピールが薄いね。
KS 僕はシルキーシックスときいて、単純に精密でスムーズな感じを想像をしていました。でもそうではなくて、いかにもガソリンがシリンダーの中で爆発している、って感じで驚きました。
F スムーズとか精密さとは違う感じだね。躍動感がある。それに、3シリーズってアウディのようなクールで硬い感じじゃなく、人間らしいし生き物のようだね。誰にでも分かる良さを正統的に突き詰めている。
KS これまでの二枚目。よく熟成されてはいるけど、新しい価値観はないですね。
F というか、BMWの追求しているところって普遍的な価値観だと思う。「アバンギャルド」というか革新的な部分をまるで無視しているから、逆に飽きがこないし長く愛せる。絵画でいえば、ピカソをわかる人は少ないけど、ルネサンスの写実的な絵画はわかりやすいというか。BMWって今度の新しい7シリーズもそうだけど、プロポーションに関しては顔とお尻を隠すと、どのセダンも同じカタチをしている。良くも悪くもそこから離れることはできないんだね。
S ミケランジェロのダビデ像的世界というか。
F でも逆にいえば、これからBMWがまさにかわろうとしているのかもしれないし、提案は実際ある。そういう意味で、いまの3シリーズはいま買うべきだろうね。
座談会メンバー
S:陶山拓(まとめ)
KS:佐藤耕一(auto-ASCII)
F:藤田耕治(auto-ASCII)
取材協力:JAIA輸入車試乗会