無免許で原付バイクを運転し、衝突事故で死亡した14歳少女の兄ら5人が、この少女にバイクを貸した16歳の少年に対して激しい暴行を加えて死亡させたという事件の少年審判で、東京家裁八王子は16日、この5人を少年院送致するという保護処分の決定を下した。相手を死に至らした場合、最近のケースでは「刑事処分相当」と判断されることが多いが、裁判官は「事件の重大性を直視させるため」として、長期の収容を選んだ。
この事件は5月31日に起きた原付バイクとトラックの衝突事故が発端となった。14歳の少女が友人から借りた原付バイクを無免許運転。一時停止標識を無視して交差点に進入し、トラックと出会い頭に衝突する事故を起こした。少女は衝突の衝撃で路面に投げ出され、全身を強く打つなどして死亡している。
翌日の1日深夜、この少女の葬儀が行われていた葬儀施設の駐車場で、少女の兄や交際相手など少年10人がバイクを貸した少年を呼び出し、「お前がバイクを貸さなければ死ぬことは無かった」とこの少年らの責任を追及しようとした。しかし、この少年らが事故直後に「事故を起こしたのはあの女が悪い」などと言ったという噂がすでに広がっていたため、少女の兄らが義憤から暴行に及び、結果的に1人を死亡させた。
少年審判では、この少年らの暴行を「被害者のそうした発言はあくまで噂に過ぎず、誤解から生じた怒りによる暴行は執拗かつ卑劣なほど繰り返された」と判断。当初は「刑事処分相当」とする流れで始まった。しかし、「暴行に及んだ少年らは葬儀のために集まっていたのであり、暴行を計画していたわけでなく、発生は偶発的だった」ということが認定され、さらに「加害者の親(バイク事故で亡くなった少女の両親)が暴行を積極的に制止しようという考えがなく、これが事態をエスカレートさせた」ことも明らかになり、少年たちだけに過重な責任を負わせる必要性が検討されることになった。
この結果、刑事処分の適用を見送り、「自分たちが行った犯罪を直視させ、重大性を再認識させる必要がある」という考えから、裁判かは「少年院に長期収容させることが妥当」という判断を下した。15歳の2人と17歳の2人を中等少年院に、15歳(当時14歳)の少年1人を初等少年院へそれぞれ送致する。
ただし、この少年らが起こした事件の重大性に気づきだしたのは最近とのことで、少年院送致という保護処分が、裁判官の意図したとおりに働くのかということには疑問も残る。