安易な公務執行妨害の適用は認めない---「倒れ公妨」はもう使えません!?

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福岡家裁は23日、通報で駆けつけた警察官の顔を殴るなどの暴行を行い、公務執行妨害で逮捕した18歳の少年に対し、不処分(一般裁判の無罪)の判断を下していたことを明らかにした。暴走族や不良グループを警察が検挙する際、警官に対して抵抗した少年に適用されることの多い公務執行妨害だが、この判断が警察の安易な検挙に一石を投ずることになるかもしれない。

審判によると、この少年は6月12日夜、バイクなどで集まった仲間数人と福岡市早良区の路上に座り込み、シンナーを吸引しているところを近所の住民が目撃、警察に通報した。通報を受けて駆けつけた福岡県警自動車警ら隊の警察官が少年らにシンナーの吸引を止めるように注意したところ、少年らはバイクで逃走しようとしたため、それを制止しようとした別の警察官ともみ合いになった。この際、1人の少年が警察官の顔を殴ったため、公務執行妨害の現行犯で逮捕。他の少年も毒劇物取締法違反容疑で検挙した。

少年審判の際、この少年は「警官から腕をねじ上げられたため、振りほどこうとしたら、ひじがメガネに当たった。顔ではなくメガネに当たったことは確かなのに警官が“殴られた”と大騒ぎした」と強固に主張。シンナー吸引は認めつつ、公務執行妨害での逮捕は不当だと訴えた。

これを受け、福岡家裁の井川真志裁判官は「たしかにひじは当たったかもしれないが、少年に警察官の公務執行を妨害しようという意図はなく、偶発的に起きたもの」と判断。シンナー吸引による毒劇物取締法違反については試験観察としたものの、公務執行妨害については不処分。つまりは刑事裁判の無罪に当たる判断を下した。

抵抗した容疑者に「とりあえず…」といった感覚で適用されることの多い公務執行妨害。暴走族グループの検挙でも、共同危険行為の条件をクリアする案件を捜査する間、とりあえず公務執行妨害で逮捕して身柄を確保するケースは珍しくない。その昔には「倒れ公妨」という言葉を生み出し、今でも別件逮捕の代名詞のように使われているが、裁判所がこのような判断を下したということは公務執行妨害の安易な適用に一石を投じることにもなりそうだ。

《石田真一》

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