直噴リーンバーンエンジンは排ガス浄化が難しい。これはリーンバーンの宿命と言えるもので、成層燃焼では、NOx(窒素酸化物)が多く発生する空燃比域を避けることができないからだ。三菱の「GDI」やトヨタの「D-4」シリーズで軒並み★が少ないのはこのためである。
ところが軽自動車で初めて直噴エンジンを搭載した新型『ミラ』の「V」グレードは★★★を取得している。なぜこのようなことが可能かと言うと、直噴エンジンではあるがリーンバーンではないからだ。
「660ccしかありませんので、リーンバーンだと充分なトルクを確保できません」と、第一エンジン室の寺田英樹氏は説明する。「そのほか、吸気のタンブル流(縦回転の渦巻き)を強くして効率を高め、可変バルタイを利用してEGRを15%ほど行って★★★を達成しました」とのことだ。
また、このミラ VはMTのみの設定となる。いまどきATでないと売れないのは当たり前だが、ここまでして30.5km/リットルにこだわる理由は、ガソリン車最高燃費を謳うために、スズキ『アルト』の30km/リットルを上回る必要があったからだ。
ミラVの希望小売価格は92万円。売れ筋モデルと見られるミラ L(5MT)より20万円近く高いほか、装備レベルも助手席アシストグリップが省かれるほど簡素なもの。環境技術的には最先端のスペックだが、数を売るモデルでないだろう。寺田氏によると、「官公庁などに納入したい」とのことである。