警視庁は4日、輸入車販売業者から求められるままに車検を合格させていた国土交通省・東京陸運支局(現在は東京運輸支局)の自動車検査官を虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで逮捕したことを明らかにした。
逮捕された検査官は、本来は排出ガス試験結果の提出が義務付けられている新規登録輸入車について、これの提出を受けずに輸入車販売業者から求められるままに車検を合格させていた。この検査官に不正合格を依頼していた輸入車販売業の男も同容疑で逮捕されている。
警視庁・交通捜査課の調べによると、この輸入車販売業の男は、並行輸入車など国内で型式証明を受けていないクルマの車検を通すために必要な「排出ガス試験結果成績表」を提出せず、一緒に逮捕された自動車検査官に「後で出すからここはひとつよろしく頼む」などと依頼。検査官もこの求めに応じて車検を通していた疑いが持たれている。
排出ガス試験結果成績表は、国内の排出ガス規制値に合致しているかどうかを調べるもので、1台あたり約18万円の費用が必要となる。
正規輸入されておらず、メーカーが国内での型式証明を取得していない並行輸入車や、少量輸入車ではこの検査結果を提示しないと車検が取れないが、事前の出費を嫌う業者はクルマが売れてから(つまりは客が支払った金を使って)試験を受けることが多く、成績表の後出しは慣例化していたという。
逮捕された検査官もこうした慣例が存在していることから業者の言うままに車検を通していたが、この業者から試験結果成績表が届けられることは無く、提出を受けたのは不正車検が明るみとなった以後だった。
調べに対して検査官は「成績表の後出しが部内で慣例化しており、自分も何の疑問も持たないままにやってしまった」と供述しているが、この業者は不正車検の問題が明るみになったころ、陸運支局からの要求に応じて過去数年分の成績表をまとめて提出するなどしており、実際には試験を受けていなかったとも考えられている。
こうしたことから、この検査官が業者と結託していたのではないかなど、余罪に含めても追及していくとしている。
また、これについて国土交通省・自動車交通局の局長は「警察当局の捜査に全面的に協力して事実の解明に努めるとともに、組織を挙げて全力で再発防止に努める」とコメントしている。