国民生活センターでは補助動力付きスケーター/スクーターに関する相談や苦情が増加していることを受け、実際に4機種を購入したテストを行なうことになった。テストは「道路運送車両の保安基準で定められた装備を有しているか」という基本的なものから、実際に運転したときの制動距離まで多岐に及んだ。
同センターが“検体”として購入したのは、「公道走行が可能であるとうたい、連絡先が明確な販売店が扱っている最大出力250Wのスクータータイプ」で、山真製鋸『ドラゴンスクーター』、ニシハラプロダクツ『ノアカフェ』、ビング『ハンプバック42C』、同『ポーパス20A』の4機種を揃えた。
いずれも3〜7万円で販売されており、道路運送車両法では第一種原動機付自転車に該当する。
これとあわせ、ベンチマーク(基準)用としてヤマハ発動機が限定販売している電動スクーター『パッソル』(最大出力580W)も購入。検体との比較対象としている。パッソルはバイクメーカー製ということもあり、原付バイクと同等の装備がなされているというのもポイントとなる。
道路運送車両法では保安基準に定められたブレーキや灯火類を装備する必要があるが、同センターが検体とされた4機種をチェックしたところ、前ブレーキが装着されていないものや、灯火類が備わっていないものがあり、そのままでは公道走行ができないものばかりだった。
また、検体4機種の最高速度はいずれも20km/h以下(平均17km/h)だったが、最高速度からの急ブレーキを使用した場合、完全に停止するまでの距離は3.5〜6.6mとなった。パッソルを用いて同速度からの急制動を行った場合、この距離は2.7mとなり、いずれの検体もパッソルより車重が軽いにも関わらず制動距離は長くなるなど、ブレーキが弱点であることも発覚した。
モーターの出力を測定するテストでは、傾斜角8度の坂で坂道発進をテストしたが、全く発進できないものが2機種あり、坂道でブレーキを掛けた状態で保持できない(ずり落ちる)ものが3機種あった。このテストでもパッソルにはそのような問題が発生せず、きちんと動作している。
検体のうち、ビング製2機種はすでに販売が中止されているが、同センターではこの実験結果を受け、現在も販売を継続している山真製鋸とニシハラプロダクツには道路運送車両法の基準に適合するよう改善するか、「公道での走行可」との表示を中止するように指導していく方針だという。