昨年1月、泥酔状態でクルマを無免許運転、さらには赤信号を無視して交差点進入し、衝突事故を起こして5人を死傷させる事故を起こして危険運転致死傷罪に問われた26歳の男に対する判決公判が19日、大阪地裁で開かれた。裁判長は男に対し、危険運転致死傷罪では現時点で最高となる懲役13年を言い渡している。
問題の事故は2002年1月10日に発生している。同日の午後11時50分、大阪府堺市深井中町の府道と市道が交わる交差点で、赤信号を無視したワゴン車と、青信号で進入してきた乗用車が出会い頭に衝突。乗用車側の4人が即死し、ワゴン車を運転していた男も事故直後から意識不明となっていた。
この男は一時意識不明となり、生死も危ぶまれたが奇跡的に回復。事故から11カ月後に危険運転致死傷罪で逮捕されていた。検察は「無免許で日常的にクルマを運転するなど極めて悪質。傷害事件という枠を超えており、内情は故意に起こした殺人に等しい」として危険運転罪の最高量刑となる15年を求刑していた。
しかし、大阪地裁の朝山芳史裁判長は「無免許、酒気帯び、赤信号無視という交通三悪のすべてに当てはまる状態で被告はクルマの運転していたが、これは正に“走る凶器”と化していたと言わざるをえない。無謀かつ危険極まりない犯行で、突然命を奪われた被害者の無念さは察するに余りある」として、懲役13年の実刑判決を言い渡している。
また、判決言い渡し直後、被告に対して「被告は反省や謝罪の意思を示しているが、結果の重大性や悲惨さを考えると、主文の刑は止むを得ない。危険運転の恐ろしさと撲滅の必要性を世の中に知らしめた事故であり、被害者のためにも刑期を務めて欲しい」と諭した。
懲役13年の判決は危険運転致死傷罪の制定以後、最も厳しいものとなる。これまでの最高量刑は9年で、泥酔した状態で大型トラックを運転した男が信号待ちをしていた歩行者2人を下敷きにして死亡させたというもの。危険運転と覚せい剤取締法違反との併合罪では懲役10年の判決も出されている。