女子中学生ひき逃げ死事件で甘い判決

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酒気帯び状態で意識が朦朧としているにも関わらず運転を続け、制限速度を大幅に超える状態で帰宅途中の女子中学生2人をひき逃げして死亡させ、業務上過失致死と道路交通法違反の罪に問われた38歳の男に対する判決公判が23日、宇都宮地裁で開かれた。裁判所は運転の悪質さを指摘しながらも、懲役5年6カ月の実刑判決に留めている。

この事故は今年3月17日に発生した。被告の男は数時間に渡って飲酒を行ない、自分が酒気帯び状態であることを認識しながら、直前まで感じていた眠気が薄らいだことから運転を強行。しかし、直後に居眠り運転状態となり、同日の午後7時ごろ、益子町塙の町道
を歩いていた帰宅途中の女子中学生2人に突っ込んだ。衝突当時、クルマは制限速度を大幅に超える90〜100km/hの状態で走っており、2人の体は数十メートル飛ばされるほどだった。

クルマも大破したが、男はそのまま現場から逃走。自分の勤務先に訪れた警察官にも保身のために嘘の供述をしていたが逃げ切れないと判断。翌日の未明に警察へ出頭し、業務上過失致死と道交法違反容疑で逮捕された。

だが、警察は行状があまりに悪質であると判断し、容疑を危険運転致死に切り替えて送検。これを受けた検察側は「著しい高速度は居眠り運転によって生じたものであり、事故直前の2kmを支障なく走行していることは飲酒運転による影響が出ていたとは考えにくい」として起訴の際、再び業務上過失致死に戻してしまった。

これに遺族が猛反発。論告求刑公判の際には危険運転罪適用を求める9万3000人分の署名を提出。裁判所に改めて危険運転罪の適用を呼びかけるなど、裁判所の判断が注目されていた。

23日の判決公判で宇都宮地裁の野口佳子裁判官は「酒気帯び状態を自覚しており、確実な運転操作ができないことを認識していたにもかかわらず、運転を続けた行為については悪質さの度合いが高い」と認定したが、「最終的に自首したことは評価できる」として懲役7年6カ月の求刑に対し、懲役5年6カ月の実刑判決を言い渡した。

業務上過失致死の最高刑は5年で、今回は道交法違反との併合罪が適用されてこの結果となったが、危険運転致死罪だった場合の最高刑は15年。2人を「殺した」という今回の刑罰は業務上過失致死としては厳しいが、危険運転罪というものがあり、それを適用できたかもしれないということを考えた場合には短いと言わざるをえない。

悪質な飲酒運転取り締まるために施行された危険運転罪だが、かなり悪質と推測される今回の事件に適用されなかったことは、同様の事件が今後発生した場合の検察判断に影響を与えるとも考えられる。遺族は今回の結果を不服とし、検察側に控訴することを求める要望書を提出するとコメントしている。

《石田真一》

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