余分な介護費用を払う必要は無い---東京高裁が聖域にメス

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交通事故で植物状態になった女性の家族が将来の介護費用などを求めた民事訴訟で、東京高裁は29日、これらを含む約9800万円の一括支払いを被告側に命じた一審判決を変更し、介護費用分を分割で支払うように命じる判決を言い渡した。被告側の主張を一部受け入れた形だが、極めて異例な判断となった。

これは交通事故に遭い、頭を強打するなどして植物状態となった48歳の女性とその家族が、慰謝料や介護費用など総額1億2000万円あまりを事故の加害者に求めた民事訴訟。一審の千葉地裁八日市場支部は原告側の主張をほぼ認め、約9800万円の一括払いを被告(加害者)側に命じている。

しかし、被告側は「介護費用は平均寿命とされる84歳までが支給対象となっており、それ以前に亡くなった場合、将来的な介護費用の部分については余分に支払われることになる」と主張。この部分の算定見直しを求めて東京高裁に控訴していた。

29日の判決で東京高裁の鬼頭季郎裁判長は、被告の主張を一部認めた上で、賠償金の支払方法を一括から分割に変更している。

高裁判決では一時金として5400万円を慰謝料などとして支払い、介護費用については平均寿命となる84歳か、女性が死亡するまでの間、毎月25万円を支払うものとした。84歳まで女性が生存した場合には一審と同額が支払われることになるが、女性が数年で死亡した場合には大幅に減額されることとなる。

これについて鬼頭裁判長は「介護費用という性格上、これは被害者が生存している間は必要であり、支払いを認めることに異論はない。しかし、推定余命を前提とした一括支払いの場合、早い段階で死亡すれば本来は必要のない介護費用まで受け取ることになる。一括賠償ではこのように多い、少ないの問題が生じやすく、本件でもそれが最大の争点となっている。介護費用の部分については月額払いを採用し、定期金賠償方式とした方が合理的である」と説明している。

一括払いの場合には法定利率による控除が行われるが、定期金賠償の場合にはこれが適用されないため、低金利の現在では場合によっては受け取る金額が高くなるケースもあるが、これまでにそうしたことが争点にはなっても、将来的な介護費用については争点にならなかった。

加害者側が「被害者が早く死んだらどうするんだ」と問題を提起し、被害者側の感情を刺激することをを避ける傾向にあったからだ。従来は一種の聖域であり、触れることが許されなかった部分でもあるが、今回のような判決が出たということで、今後は将来的な介護費用部分の金額見直しを求める裁判が相次ぐ可能性も内包している。

《石田真一》

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