10年に渡る鑑定人同士の争いに幕?

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1991年4月に青森市内で起きた交通死亡事故を巡り、被告の当事者責任の有無を争って、10年4カ月間も続けられてきた刑事裁判の論告求刑公判が7月31日、青森地裁で行われた。検察側は「被告が事故当時に運転していたことは間違いない」として懲役2年6カ月を求刑している。

起訴状などによると問題の事故は1991年4月6日、青森県青森市内で発生している。同日未明、青森市八ツ役矢作の県道で軽自動車が道路左側の電柱に激突。助手席に乗っていた当時29歳の女性が全身を強く打って死亡した。この軽自動車を運転していたのは当時25歳の男で、酒気帯び状態だった。

男は事故発生直後は自分で運転していたことを認める供述を行っていたが、その後それを一転。「運転していたのは死亡した女性で、自分が助手席側に乗っていた」と強固に主張した。検察は「運転していたのは男であることは間違いない」として業務上過失致死と道路交通法違反(酒気帯び運転など)の罪で1993年3月に起訴。同年6月から青森地裁で公判がスタートした。

しかし、男は公判に入ってからも一貫して無実を主張。弁護側から鑑定依頼を受けた交通事故鑑定人は「発生直後の捜査に誤りがある」と結論づけた。検察側はこれを不服として別の鑑定人を立て、この鑑定書に証拠能力が無いことを追及するなどしたが、弁護側はさらに別の鑑定人に鑑定書の鑑定を依頼。結果として4人の鑑定人が法廷に上がった。

鑑定の結果もそれぞれがまちまちで、時には鑑定人同士の見解が相反することもあって議論は紛糾。双方の鑑定人に対して両者が執拗な尋問を行うなどしたため、一審が10年を超えるという交通事故としては非常にまれな展開となっていた。

7月31日に行われた論告求刑公判で検察側は「事故車両の衝突痕、被害者の受傷状況から被告が運転していたことは間違いなく、複数の鑑定がこれを認めている。また、事故の直前に当該車両を目撃した人物が“男性が運転していた”と証言しており、これも被告が運転していたことを示すものである」とした。

そして「様々な証拠から被告が運転していたことは間違いなく、過失は重大で悪質。長期に渡って自己の責任を回避するなど反省は見られない」として、裁判所に対して懲役2年6カ月の実刑判決を求めた。

弁護側は10月に行われる最終弁論で改めて無罪を主張するとしており、一審の判決は年を越えそうな情勢だ。

《石田真一》

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