一見すると『キューブ』をただ「のばしただけ」に見える『キューブ・キュービック』。キューブ・コンセプトを生かし、あえて専用デザインを与えずにストレッチするという手法を選んだのだが、そこには「つじつま合わせとコスト」というモデラーとデータとの戦いが繰り広げられていた。
その「のばす」作業を担当したのがモデル開発室・専門主任の峯岸昭男氏だ。「まず標準型キューブですが、プランカーブ(上から見た図)を見ると四角いようで実は丸いんです。それをそのまま後方へのばしてしまうとリアの幅がすぼまってしまう」
「しかしコスト面を考えると、左右非対称でもともとコストがかかるバックゲートをなんとか標準型と共有できないか、と」と思い出したように苦笑い。結局キュービックは、標準型のリアドアのBピラー側をストレッチした。
「ここだけの話、データ上ではキュービックのプランカーブはBピラーの所で折れているんです。見た目ではまったくわかりません(笑)。リアドアとルーフは新規のものを使用していますが、ドリップのモールがS字になってしまったりと、単純にのばすだけにはいかないデータとの戦いがありました」と語る。
今まででも一番難しいと言っていい仕事だったと語った峯岸氏。実車を見るとキューブよりも伸びやかで、安定感が増した素晴らしい仕上がりを見せている。「のばしただけ」ではない、そう思ってキューブとキュービックを見比べてみては?