【神尾寿のアンプラグドWeek】放送は通信の敵か?見方か?

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
【神尾寿のアンプラグドWeek】放送は通信の敵か?見方か?
【神尾寿のアンプラグドWeek】放送は通信の敵か?見方か? 全 3 枚 拡大写真

今年後半は地上デジタル放送とデジタルラジオの試験放送が開始され、放送のデジタル化元年になっている。放送事業者は、これを契機に「普及台数8000万」の巨大市場を持つ携帯電話に進出し、モバイル分野での消費者の視聴機会と視聴時間の拡大にソロバンを弾いている。

しかし、携帯電話業界にとって「放送」は、魅力はあるが迂闊に手を出せば火傷をするホットポテトである。単純にテレビやラジオを視聴するだけでは通信をする必要がないので、自らの収益に何ら貢献しないからだ。ユーザーがテレビやラジオの視聴している間は、メールやコンテンツ、アプリが使われない事や、バッテリー容量を食われる事を考えれば、プラスどころかマイナスである。

このように携帯電話事業者にとって「放送」は大きなジレンマを抱えている。そのような中で一歩を踏み出したのが、auを擁するKDDIだ。

同社は9月24日にFMアナログ放送を通信サービスと連動させる「新FMライフスタイル」を発表。今年の冬商戦から対応端末を投入する。さらに10月2日にはFM東京とともに今年10月からスタートする地上デジタルラジオ試験放送において、放送・通信の連携サービスを実験すると発表した。

これらKDDIのアプローチでは、携帯電話のアプリや通信モジュールが、放送と通信をシームレスに融合させる"鎹(かすがい)"の役目を担う。

例えば新FMライフスタイルのFMケータイでは、au独自のアプリ技術「BREW」で作られたチューナーアプリで、1)FM放送の受信、2)番組/アーティスト情報の取得、3)放送局サイトの閲覧、4)オンエア中の曲の着うたダウンロードまですべてシームレスに行える。

「FMケータイで重要なのはチューナーアプリです。これが放送と通信を繋いで、トラフィック(通信量)を生み出します。今回はアナログFM放送ですが、チューナーアプリを使った仕組みとノウハウは、地上デジタル放送などテレビと融合する時も使えます」(KDDIソリューション事業本部コンテンツ開発部コンテンツ開発1グループリーダーの神山隆課長)

デジタルラジオの実証実験端末は、今のところデジタルラジオチューナーと定額制PHSを組み合わせたモジュールをPDAに装着するものだが、これはあくまで実験端末。将来的にはauの携帯電話型になるという。

さらに、「携帯電話型になるという事は、(デジタルラジオ受信機能を持つ)通信モジュールを作ることも簡単にできる。組み込み市場向けも視野に入っている」(KDDI執行役員 技術開発本部長のの村上仁己氏)

KDDIはトヨタのG-BOOKやパイオニアのAir Naviに通信モジュールを提供しているが、この次世代モデルにBREWアプリ環境やデジタルラジオ/地上デジタルテレビの受信機能が内蔵されれば、それはカーナビやカーオーディオ、他のAV機器に放送と通信がシームレスに統合された環境を提供できるものになる。

KDDIは「放送」を携帯電話の魅力とトラフィック向上に結びつける手法を編み出したばかりか、将来、通信モジュールを様々なデジタル機器に普及させるキラーアプリケーションのひとつとして「放送」を活用しようとしている。FMケータイから始まったKDDIの放送メディアとの連携だが、その先に狙うものはかなり大きいようだ。

《神尾寿》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  4. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る