“しあわせ家族空間”を開発コンセプトにしたダイハツ『タント』。『ムーヴ』以上の全高を持ったワンボックスワゴンタイプのFFレイアウトを採用しながら、軽自動車最大のロングホイールベースを備えたことで、ミドルクラスセダンをも凌駕する居住空間を実現した。
だが、限られた軽自動車のサイズの中で、全高を上げてロングホイールベース化を実行することで、走行安定性能が犠牲になることはなかったのだろうか。タントの開発責任者、薗田孝氏はこう説明する。
「タントの足回りの特性は、限界性能を高めるというよりは、しなやかさを重視したセッティングに仕上げています。ムーヴに比べ重心が高いために、リアのバネレートを50%ほど上げるなどの専用設計を施していますが、ショックアブソーバーのチューニングを変更していますので、硬さを感じることは全くないと思います」
実際に試乗してみても、リアのバネレートが50%も硬くなっている感じはなく、後席に乗っていても、ワンボックスワゴンタイプのクルマに多いリアがヒョコヒョコと跳ねる印象は少ない。ただし、全高が高いだけに、左右に素早くステアリングを操作を行った場合には、ロールが大きくクルマの揺り返しも大きい。
その点に関して薗田氏は「ムーヴに比べるとロールは大きいかもしれませんが、タントの足回りは乗り心地と走行安定性能のバランスを考慮した結果、このようなセッティングになっています。タントのキャラクターには充分にマッチしていると思っています」と解説。
確かにタントにはターボ車はラインナップされているが、『ムーヴ・カスタム』のようなスポーティなモデルは用意されていない。走りを楽しみたければそちらを選んで欲しいということのようだ。
タントの足回りは大事な“しあわせ家族空間”乗せて、快適に走るための軽自動車と考えれば、順当なセッティングといえるのだろう。