「帰宅」は「公務」なのか、外交問題に関わる裁判

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来日していたスリランカ政府の閣僚を宿泊先のホテルまで送迎した直後にバイクと衝突する交通事故を起こし、相手にケガを負わせたことで業務上過失傷害罪に問われた在日スリランカ大使館の日本人職員に対する初公判が19日、東京地裁で開かれた。

検察側は公務外の事故であるとして起訴に踏み切ったが、初公判で弁護側は「公務中の事故である」として、ウィーン条約に基づく外交特権での裁判権免除を主張している。

問題の事故は2002年12月に東京都千代田区日比谷付近で発生している。非公式に来日していたスリランカ政府の閣僚を自分の所有するクルマに乗せ、宿泊先のホテルまで送り届けた日本人職員が、ホテルを出た直後にバイクと衝突するという人身事故を起こした。

事件捜査を担当した検察は、事故がこの職員の漫然運転によって引き起こされたと認定。公務を主張する職員に対しても「職員は自宅に戻ろうとした際に起こしており、公務は閣僚をホテルに送り届けた段階で終了している」と指摘。2003年3月に略式起訴を行った。

ところが後に大使館が「公務中の事故だった」としてスリランカ政府発行の証明書を証拠として提出。このため東京簡裁では「上級審に委ねることが適切」と判断し、職権で正式裁判への移行を行った。

19日に東京地裁で行われた初公判で、検察側は「大使館の所有する車両(外交官ナンバー装着車)も使っておらず、大使館に戻るのではなく、自宅に帰る途中だった経緯から考えれば公務には当たらない」として起訴の正当性を主張した。

これに対して弁護側は「公務で立ち寄った場所から戻る途中で起こした事故であり、スリランカ政府もそれを証明している。ウィーン条約では外交特権として公務中に起きた事故の裁判免除を認めており、起訴される理由もない」と反論し、公訴自体の棄却を求めている。

問題となるのは「公務中か否か」と「日本人職員にまで外交特権が及ぶのか」ということだが、後者について日本の外務省は明文化していない。ただし、これまでは慣例として「日本人職員であっても、公務中の事故であればウィーン条約に基づき、裁判権は免除される」と判断してきた。

しかし、こうした紛争の数自体が少なく、今回の一件がどのように審理されるか、今後の動向は不透明だ。

《石田真一》

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