2001年3月、福島県いわき市で灯油と間違えて販売されたガソリンを入れたストーブから出火し、3人が死傷した事故で、誤販売を行ったことが火災発生につながったとして業務上失火などの罪に問われたガソリンスタンド店員の男に対する判決公判が17日、福島地裁いわき支部で開かれた。裁判所は男に対し、執行猶予付きの禁固刑を命じている。
問題の事故は2001年3月30日に発生した。いわき市内にある塗装店から出火し、2階のバレエ教室にいた親子3人が一酸化炭素中毒が原因で死亡した。
警察と消防では塗装店(1階)にあったストーブが異常燃焼したことが火元になった可能性が高いとして調査したが、その結果このストーブの燃料タンクからはガソリンの成分を検出。ガソリンが誤って注入されていたことがわかった。
ストーブの燃料は火災の2日前、塗装店の従業員がいわき市内のガソリンスタンドで購入したが、この際にスタンド店員が灯油とガソリンを誤って販売していた。ストーブのタンクに燃料を補充した塗装店の従業員も「普段とは匂いが違うと思った」と薄々気がついていたが、そのまま給油していたという。
警察では塗装店の従業員とガソリンスタンド店員の双方から事情を聞いていたが、購入者から油種をしっかりと聞き取ることなく販売したスタンド側の責任がより重いとして、販売した店員の男を業務上失火と業務上過失致死で送検。検察は同罪で起訴していた。
17日に行われた判決公判で福島地裁いわき支部の村山浩昭裁判官は「塗装店の従業員が持参したタンクにガソリンを誤って入れたこと自体は過失にならない」としたが、「ストーブを使う時期にタンク持参で買いにくるのは灯油であることが一般的であるにも関わらず、ガソリンを販売したことについては過失が認められる」と指摘した。
弁護側はこれまでの公判で「店員は購入者に対してガソリンですかと尋ねたところ、購入者がうなずく動作をしたのでガソリンを販売した」と主張してきたが、これについては「ガソリンですかと尋ねるだけでは確認作業が十分だったとはいえない」と、この部分にも店員側の過失があると認定した。
その上で「総合的に考えれば、ガソリンを販売した側の過失責任が重く、悲惨な結果を招いた根本原因の責任を免れない」として、店員の男に対し、禁固1年(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡した。
弁護側は「店員として通常行うべき確認作業はすべて行ったと考えられる。納得できない」として控訴の意思を示している。