愛媛県警は1日、実証データを取る目的で松山市中心部に導入した歩車分離式の信号機について、市民からクレームが集中していることから、信号時間を調整する作業を3月31日までに実施した。
これまでも交通量の多い場所だったが、歩車分離式信号機の導入以後は渋滞による車列がさらに伸びたため、と説明している。
これは愛媛県警の交通規制課が明らかにしたもの。歩車分離式の信号機は3月23日から松山市中心部に近い勝山交差点に導入された。これまでクルマと歩行者が同時に通行できたが、23日以降は歩車分離、つまり「クルマの通行を完全にストップさせ、歩行者のみが安全に道路横断できるタイミング」を新たに設けた。
歩車分離式信号の導入により、右左折するクルマと歩行者が関係する交通事故を完全に無くすことが可能となる。歩行者とクルマが関係する事故は右左折時が最も多く、「歩車を分離することは安全に寄与する」とされ、全国で導入が始まっている。
勝山交差点では34秒間、歩行者のみが横断できる青信号表示が追加されたが、これがドライバーから予想以上の反発を呼んだ。
歩行者が安全に通行できる34秒間は、クルマ側にとっては「完全停止を強いられる34秒間」となる。後方の信号機はこれまでと同じパターンで動作しているため、渋滞の車列はこれまで以上に伸び、実質的な交差点通過時間はさらに長くなった。
このため、県警には導入直後からドライバーによる苦情が集中。「渋滞がこれまでよりも悪化した」、「待ち時間が長くてイライラする」、「クルマのことは何も考えていないのか」など17件あった。
県警では「わざわざ電話を掛けてくるということは、その怒りが大きいことだ」と判断。渋滞がどこまで伸びているのかを調べた。
結果として、これまでは朝夕のラッシュ時でも最長1.3kmだった勝山交差点の渋滞は、歩車分離式信号機の導入以後は1.7kmまで拡大。後方の交差点でもクルマの通行が滞るため、実質的な渋滞の影響は勝山交差点を中心に半径2.5km圏内まで達していた。
県警ではクルマのみの青信号表示時間をこれまでよりも延長。クルマの流れをスムーズにすることで渋滞の列を短くする対策を実施したが、これが効果を発揮するかどうかについては未知数だ。