故人の名誉回復…交通事故被害者の救助中に死亡

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事故を起こしたクルマを目撃し、その救助に向かおうとした際、別のクルマにはねられて死亡した男性の両親が、警察を管理する山梨県を相手に1000万円の慰謝料を求める国家賠償請求訴訟で、長野地裁は9日、同日の協議で和解が成立したことを明らかにした。

問題の事故は1995年4月29日夜、山梨県昭和町紙漉阿原付近の中央自動車道下り線で発生している。当時26歳の男性が自分のクルマを運転中、自損事故を起こした直後のクルマを発見した。

クルマは道路上で白煙を上げている状態で、男性は道路脇の非常電話を使って日本道路公団に連絡するとともに、自らも運転者を救助するためにこのクルマに歩み寄ろうとした。しかし、路上に止まっているクルマに気づくことが遅れた大型トラックが追突。男性はクルマごと路上に押し出され、全身を強く打って死亡している。

男性の友人で、当時男性のクルマに乗っていた同乗者は警察の調べに対して「彼は事故車両のドライバーの救護に向かうために歩いていた」と証言。日本道路公団側も「通報したのは死亡した男性と推測される」とした。

しかし警察の担当者は「死亡した男性が事故車に向かっていた理由がわからない」として、男性が死亡した原因は男性側の過失だったとする報告書を作成。「警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律」による遺族給付の申請を行わなかった。

男性の遺族は「警察の不手際で、息子の取った行動が正当に評価されず、過失死扱いになっているのは納得できない」として、2002年3月に山梨県を相手に提訴していた。

9日に行われた和解協議では、山梨県警側が死亡した男性の行為を「人命救助を目的としたものだった」と認め、これを条件に遺族は賠償請求を取り下げるということで最終的に決着。和解が成立した。

山梨県警は災害給付申請を行っておらず、訴訟の取り下げによって金銭賠償は伴わないということになったが、遺族側は「故人の名誉を最優先した」とコメントしている。

《石田真一》

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