心神耗弱を認めず…レンタカー延滞殺人

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無断で延滞していたレンタカーを回収されたことに腹を立て、クルマを取り返そうとして訪れたレンタカー店で58歳の男性従業員を刺殺したとして、殺人罪に問われていた41歳の男に対する判決公判が6日、甲府地裁で開かれた。

弁護側は心神耗弱状態による無罪を主張していたが、裁判所はこれを認定せず、被告に懲役6年の実刑を言い渡している。

この事件は昨年5月24日に起きている。同日の午後7時45分ごろ、山梨県甲府市内にあるレンタカー店から「クルマの貸し出しを巡って、客の男が店内で暴れている」との通報が寄せられた。

警察が現場に急行すると、店内では58歳の男性従業員が背中などを刃物で刺され、血まみれで倒れていた。男性はすぐに病院へ搬送されたが、出血多量が原因で間もなく死亡している。

警察ではこの店で3月中旬からクルマを借り、無断で延滞していた40歳(当時)の男が犯行に関与したと判断。男を殺人容疑で逮捕した。

調べに対して男は「店が勝手にクルマを持っていった」と激怒。これが犯行の動機となったことを認めた。男が使っていたクルマは事件前日に同店が強制回収に踏み切っており、男は「自分のクルマが盗まれた」と判断し、これの返却を求めて同店を訪れ、殺害された従業員とトラブルになったらしい。

男は精神科への通院歴もあり、事件当日は「クルマを盗んだ連中は武装している」と思い込み、刃物を持参したという。

こうした経緯もあり、公判で弁護側は「心神耗弱による無罪」を主張。刑事責任の有無そのものを争うという状態になり、精神鑑定も行われていた。

6日の判決公判で甲府地裁の川島利夫裁判長は、精神鑑定の結果から「被告は犯行当時、統合失調症だったと考えられる」ということは認定した。

しかし、事件直後に現場から逃走したことについては「事件の重大性を認知しており、逮捕後の供述でも殺害を認めている」とし、事件直前まで被告が自立した社会生活を行っていたことからも「善悪の判断能力が多少残されていた」と指摘した。

その上で、犯行の動機については「延滞していたレンタカーが強制回収されたことを憤って及んだ犯行」と最終的に認定。「短絡的かつ身勝手な動機に酌量の余地はないが、統合失調症による妄想の影響から犯行に及んだとも推察される」として、この部分に多少の酌量が生じることを認め、懲役12年の求刑に対し、懲役6年の実刑を命じる判決を言い渡した。

《石田真一》

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