1999年3月、奈良県新庄町内の県道で、かんがい用水路からあふれ出した水が凍結し、これによるスリップ事故で負傷した男性が、管理者である国と奈良県に総額約1億2500万円の窓外賠償を求めた民事訴訟について大阪高裁は7日、同日までに和解が成立したことを明らかにした。
一審の奈良地裁判決では約8400万円が容認されたが、和解ではこれが1億1000万円まで増額している。
問題の事故は1996年3月3日に発生している。奈良県新庄町内にある県道で、原告の男性が凍結路で事故を起こした知人のクルマの撤去を進めていたところ、このクルマに向かって同じ地点でスリップ事故を起したトラックが突っ込んできた。
男性は押し出されてきたクルマにはねられ、腰骨を折る重傷を負い、現在も四肢のまひが残るなどの後遺障害がある。
事故現場となった道路の真下には1965年に設置されたかんがい用水路があり、設置当時はクルマの通行がない里道だったこともあり、サイホン式の排水口を設置した。
これは用水路が増水した際、オーバーフローとなった水を路面まで押し上げて排水するというもので、1981年に県道が敷設された際にも撤去されず、そのまま残されていた。
原告の男性は「クルマが通行する道路に設置してよいものではなく、あふれ出した水が冬季に凍結する可能性は十分に予見できた」として道路設置者の県や、かんがい事業を行っていた国などを相手に総額1億2500万円の損害賠償を求める民事訴訟を奈良地裁に提訴していた。
一審の奈良地裁では、水があふれ出した要因を「ゴミ詰まり」と認定。その上で「水が路上にあふれ出した場合には、これを積極的に排水するための対策を講じる必要があった」として、国と奈良県に対して約8400万円を支払うように命じていた。
国と県はこれを不服として控訴。舞台は大阪高裁に移っていたが、国と奈良県は「原告側の重い後遺症などを総合的に勘案した結果、和解に応じる」として、約1億1000万円を支払うことになった。