【三菱リコール隠し裁判傍聴記】まさかの否認にホントの理由

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【三菱リコール隠し裁判傍聴記】まさかの否認にホントの理由
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■選択肢がない三菱

メーカーとしての三菱自動車としては、「リコール隠し」を認めて、1日もはやく裁判を切り上げて(そして「リコール隠し」を国民から忘れてもらって)再建を図っていきたい。

何度となく記者会見で頭を下げて謝罪する三菱経営陣を見てきた私としては、裁判の展開をこう想像した。「初公判で起訴事実を全面的に認めて、シャンシャン裁判になるだろうな」と。

だが実際の罪状認否は全くの正反対の主張だった。

しかしながら、この時期に『リコール隠しはありませんでした』などと言いだしては、メーカーとしてのイメージダウンだって避けられない。なにしろ法人被告である「三菱自動車」も無罪を主張しているのだから、法廷で展開される法律論はともかくとして、まるで「リコール隠し」を反省していないかのように映るからだ。社会に与えるイメージとしては最悪だろう。

それでは何故、あえてそんなリスクの高い戦略をとってきたのだろうのか。

「責任の全てを三菱に押し付けた国交省に対する反乱」など諸説ささやかれているが、今後の民事訴訟対策という説がもっぱら有力である。

それでは、この“リコール隠し”刑事事件と民事事件がどのように関係してくるのだろう。弁護士の高山俊吉氏に訊いてみた。

「まず民事対策を第1に考えるのは、企業側の対応としては当然のことといえます。ここで“リコール隠し”を認めてしまうと、欠陥車が引き起こした事故の当事者からの損害賠償にはじまり、PL訴訟、株主代表訴訟などが次々と引き起されるといった、最悪の展開をむかえてしまうことになります」

つまり、それらの民事訴訟を想定するならば、あくまでも「リコール隠しはなかった。刑事裁判で有罪になったとしても、当方の主張が受け入れられなくて遺憾である」とするしかないのが反省云々とは別次元のいたしかたない企業防衛手段となるわけだ。 (実際に欠陥車の被害者との和解は、現在もまだ決裂したまま)

初公判の冒頭陳述で検察側が指摘していたことだが、三菱側がリコール隠しをした動機として、リコール費用の経済的ダメージが挙げられている。

今回もまた三菱は企業イメージと経済的ダメージのはざ間で厳しい選択をせざるを得なかった。最初の間違った選択からの抜けられない連鎖に閉じ込められているとも言える。

次回公判は9月22日13時15分から、同じく101号法廷にて。国交省担当者
(当時)の証人尋問を予定している。

■傍聴席はプラチナチケット
■「リコール隠しはしていません」
■“法解釈”をたしなめる
■選択肢がない三菱

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《小谷洋之》

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